
糖尿病になると目がかすむ?合併しやすい目の病気や予防のポイントも解説
「糖尿病になると目がかすむのは本当?」
「目のかすみはいつの段階から現れるのか知りたい」
「目がかすむ以外に糖尿病になると現れやすい目の症状にはどんなものがある?」
糖尿病による症状について、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が正常な範囲を超えて上がり続けることで発症します。
しかし、発症した初期には目立った症状が現れることはなく、本人も気づかないうちに進行してしまうことが多いです。
血糖値が高い状態が長く続くことで、血管が徐々に傷つき、体の不調や違和感が現れることがあり、目のかすみや視力の低下などもそのうちの1つです。
糖尿病の中でも、生活習慣の乱れなどによって引き起こされる2型糖尿病では、血糖値の上昇が緩やかに進行するため、中年以降で発症することが多く、目のかすみなどが年齢によって引き起こされていると間違われるケースもあります。
しかし、糖尿病による目のかすみや視力の低下を放置することで、失明のリスクも高まるため、注意が必要です。
本記事では、糖尿病によって目のかすみが引き起こされるメカニズムや糖尿病に合併しやすい目の病気などについて解説します。
糖尿病の症状それ自体には重大なものは少ないものの、発見が遅れて症状が進行・悪化することで、失明や生命の危険などのリスクも高まります。
そのため、普段から健康診断を受けるなどして血糖値の把握に努めることで、糖尿病の早期発見につながり、症状が悪化することを防ぐことが可能です。
糖尿病と血糖値の関係や基準値については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
1.目のかすみと糖尿病の関係
糖尿病の症状が進行し、悪化することで、目のかすみが生じることがあります。
これは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態が続くことで、目の血管が傷つくことに原因があります。
糖尿病は、インスリンというホルモンのバランスが崩れてしまうことによって発症する病気です。
インスリンは、体の細胞にはたらきかけて、血液中のブドウ糖を吸収させる役割を担っています。
そのため、インスリンの量が不足したり細胞へのはたらきが弱められたりすると、血液の中にブドウ糖が残されたままとなり、血糖値が上昇してしまいます。
血糖値が高い状態になると、血液がドロドロになり、血管が傷ついたり詰まりやすくなったりします。
これによって、目の網膜に張り巡らされた血管が傷つくと、目のかすみや視力の低下などの症状が現れることがあるのです。
糖尿病によって目のかすみなどの症状が見られるものを「糖尿病性網膜症」といい、三大合併症の1つとして知られています。
なお、糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、糖尿病の進行・悪化によって徐々に合併症を引き起こすことが多いです。
そのため、目のかすみなどの症状が現れた時点で糖尿病が進行・悪化している可能性があることに注意が必要です。
血糖値が高い状態が続き、血管がもろくなると、目の組織に出血などが生じて失明するリスクも高まります。
そのような事態を回避するためには、定期的に血糖値を把握するとともに眼科を受診して必要な検査を受けることも欠かせません。
そのため、血糖値が高いことを指摘された場合には、内分泌科などで精密検査を受けるとともに、眼科を受診することがおすすめです。
なお、糖尿病が進行することで現れやすい症状については、以下の記事で解説しています。
2.糖尿病性網膜症以外の三大合併症
糖尿病には、上記の糖尿病性網膜症のほかにも合併しやすい病気があります。
特に以下の2つと合わせて、糖尿病性網膜症は糖尿病三大合併症として知られています。
- 糖尿病性神経症
- 糖尿病性腎症
これらは、血糖値が高い状態が続き、毛細血管が傷ついたり詰まったりすることで発症します。
なお、症状の進行の程度によっても違いが見られますが、糖尿病性神経症と糖尿病性網膜症は比較的初期段階から進行するといわれています。
そのため、血糖値が高い状態が続くリスクを的確に押さえ、適切な医療機関を受診して治療を行うようにしましょう。
(1)糖尿病性神経症
糖尿病性神経症は、三大合併症の中でも比較的初期段階で症状が現れやすいことが知られており、糖尿病を発症してから5年以内に合併することが多いという報告もあります。
すでに述べているように、正常な範囲を超えて血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つけられたり詰まりやすくなったりして、細胞に酸素や栄養素を運ぶことが難しくなります。
これによって、手足の先にある神経細胞が傷つくことで引き起こされるのが糖尿病性神経症です。
主に手足の痺れやビリビリしたような痛みなどが現れることが多いです。
血糖値は左右で変わらないため、両手あるいは両足に同時に症状が現れる点に特徴があります。
また、長い神経の方から影響が現れるため、先に足に神経異常が生じ、症状の進行に従って手にも痛みや痺れが現れるようになるのも特徴です。
神経細胞の破壊が進行すると、運動機能にも異常が生じ、足がつりやすくなったり立ちくらみが起こりやすくなったりすることもあります。
なお、症状を放置することで次第に痛みを感じにくくなることに注意が必要です。
痛みなどの感覚がなくなると、足などに怪我を負っても気づくことができず、傷口から細菌が感染して患部が壊疽してしまうことがあります。
これによって、手足を切断しなければならなくなるケースも珍しくありません。
糖尿病性神経症の代表的な症状や治療法、予防のためのポイントについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
(2)糖尿病性腎症
血糖値が高い状態が続くことで、腎臓のはたらきが低下してしまうのが糖尿病性腎症です。
特に毛細血管が傷ついたり詰まったりすることで、腎臓の中にある糸球体という組織が傷つき、腎臓のはたらきが悪くなってしまいます。
糸球体は、毛細血管が複雑に絡まったような作りになっており、血液をろ過して尿を作り出し、老廃物を体の外に排出する役割を担っています。
しかし、血糖値が高い状態が続くことで糸球体が傷ついて硬くなってしまい、うまく老廃物をろ過できなくなってしまうのです。
これによって、通常であれば再吸収されるはずのブドウ糖やタンパク質が尿に漏れ出す尿糖や蛋白尿といった症状が現れることがあります。
また、老廃物が体の中に溜まることで、むくみなどの症状が現れることもあり、さらに進行・悪化することで、動悸や息切れ、吐き気などの症状が見られることもあるのです。
症状を放置することで腎臓の機能が完全に停止し、人工透析や腎移植が必要となるケースもあるため、早期に適切な治療を行う必要があります。
糖尿病性腎症の概要や主な症状、治療と予防のポイントについては、以下の記事も参考になります。
3.糖尿病性網膜症の分類
糖尿病性網膜症は、症状の進行度合いによって分類がされています。
それぞれの進行度合いによって現れる症状には違いが見られる点に特徴があります。
具体的には、以下のような分類があります。
- 単純網膜症(初期)
- 増殖前網膜症(中期)
- 増殖網膜症(末期)
目のかすみのほかにも以下で解説するような症状が現れている場合には、糖尿病性網膜症が進行している可能性もあることに注意が必要です。
そのため、なるべく早期に内分泌科や糖尿病専門クリニックと合わせて眼科を受診するようにしましょう。
(1)単純網膜症(初期)
単純網膜症は、糖尿病性網膜症の初期段階です。
血糖値が高い状態によって血管が傷つきはじめている状態にあり、もろくなった血管から出血が生じているケースもあります。
もっとも、この段階では自覚症状はほとんどなく、本人も気づかないことが多いです。
なお、血液の流出に伴って血液中の脂質やタンパク質などが漏れ出ることがあり、これが網膜の中心部まで広がっている場合には、この段階で目のかすみや見えにくさなどの症状が現れるケースもあります。
網膜の状態を把握するためには、眼科で眼底検査を受ける必要があります。
この段階で網膜の異常を発見することができれば、糖尿病の治療を行うことで症状が改善することがほとんどです。
そのため、定期的な眼底検査を行うことで早期発見をすることができます。
(2)増殖前網膜症(中期)
血管が傷ついたり詰まったりすることで、目の細胞に酸素や栄養素が行き届かなくなってしまうと、新生血管というさらに細い血管が作られるようになります。
増殖前網膜症では、このような新生血管が眼球の奥にある網膜という組織で徐々に形作られているケースが多いです。
新生血管は、不足している酸素や栄養素を細胞に届けるために作られますが、新生血管はさらにもろく、破れたり出血が起こったりするリスクが高まります。
この段階になると、目のかすみが生じることもありますが、自覚症状がないケースもあるため、注意が必要です。
増えすぎた新生血管をレーザーによって固まらせることで症状の進行を抑えることはできるものの、血糖値のコントロールがうまくいかない場合には再発することも多いです。
そのため、血糖値のコントロールによって症状の悪化を防ぐ必要があるといえます。
(3)増殖網膜症(末期)
この段階では、新生血管が破れて出血を起こすことが多く、目のかすみのほかにも、視力の低下が引き起こされることがあります。
出血が眼球内部の硝子体という部分で生じると、視力が急激に低下することもあるのです。
また、症状が進行・悪化することで、網膜の表面に増殖組織という膜ができてしまい、これが網膜を引っ張ることで網膜剥離が起こるケースがあります。
網膜剥離が起こってしまうと、その部分の視野が欠けるほか、失明してしまうリスクもあるため、注意が必要です。
なお、この段階では血糖値のコントロールを行っても症状が改善しないことが一般的です。
また、外科的処置を行っても、一度低下した視力は戻らないことも多く、この段階まで症状が悪化してしまう前に適切な治療を行うことが最も重要といえるでしょう。
4.糖尿病性網膜症に合併しやすい目の病気
糖尿病性網膜症では、目のかすみや視力の低下などを引き起こすことがあります。
もっとも、糖尿病性網膜症がほかの目の病気を引き起こし、それによって目のかすみなどが生じるケースもあります。
具体的には、以下のような病気を合併することが多いです。
- 飛蚊症
- 糖尿病黄斑症
- 白内障
- 緑内障
順にご説明します。
(1)飛蚊症
飛蚊症は、目の内部にある硝子体に濁りが生じることで引き起こされます。
特に増殖前網膜症(中期)以降に合併することが多いです。
硝子体の内部で出血などが生じて濁ってしまうことで、視界に糸くずや小さな影のようなものが浮いているように見えるのが特徴です。
加齢によって生じることがあるものの、網膜剥離や眼底出血の初期症状として現れることもあります。
また、糖尿病性網膜症の合併症として現れることもあり、放置することで視力の低下につながることもあるため、注意が必要となります。
(2)糖尿病黄斑症
糖尿病黄斑症は、ものを見るときに重要な役割を果たしている黄斑と呼ばれる部分が傷つけられることによって引き起こされる病気です。
糖尿病性網膜症では、血管がもろくなり、血液や水分が漏れ出ることで細胞に浮腫(むくみ)が生じてしまい、黄斑を傷つけることで視力の低下が起こってしまいます。
この症状は、糖尿病性網膜症の初期段階でも生じることがあり、どの段階でも生じる可能性があることが知られています。
なお、視力の低下は、硝子体の内部への出血や網膜剥離が生じることによって引き起こされることがほとんどです。
しかし、糖尿病黄斑症を引き起こすと、網膜剥離などが生じていない場合でも、視力が下がってしまうため、注意が必要です。
(3)白内障
白内障は、目の水晶体という器官が濁ってしまうことで生じる病気です。
水晶体は、目の中に入ってきた光を調整し、ピントを合わせるレンズのようなはたらきを持っています。
水晶体によって調整された光は目の奥にある網膜に届き、そこから神経を通って脳に情報が届けられます。
しかし、水晶体が濁ってしまうと網膜にうまく光が届かず、視界がかすんだりぼやけたりしてしまうのです。
白内障も加齢によって発症することがあるため、老眼などと間違われてしまうケースもあります。
早期発見することができれば、適切な外科的処置によって症状が改善することがほとんどです。
しかし、白内障を放置することで、後述する緑内障などを引き起こしたとしても気づきにくくなり、失明に至るリスクも高まってしまいます。
そのため、年齢によって目のかすみや視力の低下が起こっていると感じた場合にも、まずは眼科などを受診して検査を受けることが大切です。
(4)緑内障
緑内障は、眼圧の上昇によって視神経が圧迫されることで生じます。
眼球にかかる圧力は、通常であれば房水という液体によって一定に保たれています。
しかし、糖尿病性網膜症が進行・悪化することで新生血管が房水の流れを阻み、眼球の中に房水が溜まってしまうのです。
これによって眼圧が上昇しやすくなり、緑内障を発症してしまうリスクが高まってしまいます。
加齢のほか、高血圧によっても引き起こされやすいことが知られています。
特に40歳以上から発症のリスクが高まり、60歳以上の場合には発症のリスクが約6倍にまで増加するという報告もあります。
初期段階では目立った自覚症状はないものの、視神経の圧迫の程度が強くなると、視野が狭くなるなどの症状が現れることがあります。
また、眼圧が上昇することで、目の痛みや吐き気などの症状を引き起こすケースもあるのです。
早期に発見することができれば、薬物療法などによって眼圧を下げるとともに、外科的処置によって眼球に溜まっている房水を排出させることで症状の改善を図ることができます。
しかし、視神経は一度損傷を受けると再生するのは難しく、症状を放置することで失明してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
5.糖尿病性網膜症の治療法
糖尿病性網膜症の治療法は、症状の内容や程度によって違いが見られます。
比較的初期段階の場合には、薬物療法によって症状の改善を目指すことが多いです。
しかし、症状が進行・悪化すると治療の選択肢も限られてくるため、注意が必要です。
具体的には、以下のような治療法がとられます。
- 薬物注射
- レーザー治療(網膜症光凝固)
- 硝子体手術
なお、これらの治療は眼科を受診しなければ受けることができないケースがほとんどであるため、注意が必要です。
(1)薬物注射
薬物注射では、ステロイド薬や抗血管内増殖因子薬を硝子体の内部に注入します。
主に糖尿病性網膜症の初期段階でとられることが多い治療法です。
これによって、新生血管が増えることを防ぐことができ、糖尿病黄斑症の進行・悪化を食い止めることもできます。
もっとも、注射薬の効果は一時的であり、繰り返し注入を行うことが必要となります。
そのため、定期的に通院する必要があることを押さえておきましょう。
なお、注射によって症状の改善を行うことができたとしても、血糖値のコントロールがうまくいかない場合には、血管の状態が悪化する可能性があります。
そのため、食事や運動を通じた血糖値のコントロールも怠らないようにすることで、治療の効果を高めることが可能です。
特に食事を通じた血糖値のコントロールには、意識すべきポイントがいくつかあります。
糖尿病における食事療法の意義や血糖値が上がりすぎないようにするポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)レーザー治療(網膜症光凝固)
レーザーを網膜にあてることによって、網膜を固まらせる治療法です。
これを行うことによって、新生血管が現れることや毛細血管が破れて出血することなどを防ぐことができます。
主に増殖前網膜症の時期や糖尿病黄斑症に対する治療として行われることが多いです。
また、痛みはほとんどなく、治療後は症状が沈静化し、進行が鈍くなることが多いのも特徴といえます。
もっとも、あくまで新生血管が増えないようにするための治療であり、網膜の状態を回復させることまではできません。
そのため、視野や視力を回復させる効果は期待できないことに注意が必要です。
もっとも、緑内障などの合併症を防ぎ、失明のリスクを低く抑えるためには重要な治療法といえます。
なお、レーザー治療を行っても、その後の血糖値のコントロールが悪い場合には再び症状が進行・悪化することがあります。
そのため、血糖値のコントロールを続けると同時に、定期的に網膜の状態を検査するなどの対応が必要となることを押さえておきましょう。
(3)硝子体手術
硝子体の中で出血が起こった場合や網膜剥離が起こった場合に行われます。
具体的には、器具を使って出血した硝子体を除去したり、はがれた網膜を元に戻したりする手術です。
増殖網膜症の段階で生じた網膜剥離や緑内障などの治療を行うために行われることがあります。
レーザー治療とは異なり、網膜の状態によっては、硝子体手術を行うことで、視力の回復も期待できる場合もあります。
もっとも、血管や組織の状態が悪い場合には、完全に修復することは難しく、硝子体手術を行っても視力がそれほど回復しないケースも少なくありません。
また、高度な手術であることから、入院が必要となることが一般的です。
6.糖尿病性網膜症を予防するためのポイント
糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症であるため、糖尿病自体を予防することが糖尿病性網膜症の発症リスクを抑えることにつながります。
糖尿病を予防するためには、血糖値を正常な範囲に保つことが大切です。
もっとも、血糖値が上昇していたとしても、自覚症状はほとんど現れません。
また、目や網膜の状態は専門の医療機関で検査を受けなければ把握できないことがほとんどです。
そのため、糖尿病とそれに伴う糖尿病性網膜症を予防するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 早期に専門の医療機関を受診する
- 血糖値のコントロールを行う
- 血圧が上がりすぎないように注意を払う
- 定期的に眼底検査を受ける
順にご説明します。
(1)早期に専門の医療機関を受診する
糖尿病の疑いがある場合には、内分泌科または糖尿病専門クリニックを受診するのがおすすめです。
内分泌科は、ホルモンバランスの乱れによる不調や病気について診断や治療を行う診療科であるため、インスリンの乱れによって引き起こされる糖尿病の診断・治療を専門としています。
また、糖尿病専門クリニックでも糖尿病の診断に必要な精密検査や専門的な治療を受けることが可能です。
そのため、健康診断などで血糖値が高いことを指摘されたり、生活習慣に気になる点があったりした場合には、なるべく早期にこれらの医療機関を受診して精密検査を受けるようにしましょう。
また、目のかすみや視野の違和感などがある場合には、眼科も合わせて受診することがおすすめです。
(2)血糖値のコントロールを行う
糖尿病は、血糖値のコントロールを行うことで、症状を改善したり合併症の発症リスクを抑えたりします。
血糖値が一定に保たれなければ、糖尿病が進行・悪化してしまい、糖尿病性網膜症をはじめとする合併症を引き起こすリスクが高まってしまうのです。
そのため、血糖値のコントロールに努め、正常な範囲に収まるようにしましょう。
具体的には、以下のような範囲に抑えることが重要です。
血糖値に関する指標 | 目標範囲 |
空腹時血糖値 | 130㎎/dL未満 |
食後2時間血糖値 | 180㎎/dL未満 |
HbA1c | 7.0%未満 |
なお、HbA1cの値に限らず、糖尿病を発症してから概ね5~10年が経過すると、糖尿病性網膜症を合併しやすくなることが知られています。
また、HbA1cの値は1か月に0.5~1.0%を超えないように改善を行うことが推奨されています。
そのため、なるべく早期に専門の医療機関を受診し、医師の指示に従いながら血糖値のコントロールを行うことが必要不可欠といえるでしょう。
(3)血圧が上がりすぎないように注意を払う
血圧が上昇することで、血管にダメージが加わり、毛細血管が傷ついたり破れたりするリスクが高まってしまいます。
そのため、血糖値のコントロールだけでなく、血圧が上がりすぎないようにすることも糖尿病性網膜症を予防するためには重要です。
血圧が上昇してしまう要因には、以下のようなものがあります。
- 塩分のとりすぎ
- 喫煙
- 運動不足
- ストレス
- 過度な飲酒 など
これらは、血糖値を上昇させる要因とも重なるものがあり、高血圧は糖尿病を引き起こす原因になると同時に、糖尿病が高血圧を引き起こす要因にもなることが知られています。
そのため、食事や運動習慣の改善によって血糖値のコントロールを行うことは、糖尿病と高血圧の双方を予防する効果が期待できるのです。
なお、食事や運動については、どのような点に注意すべきかは症状の進行度合いや合併症の有無などによって異なります。
自己判断で食事や運動の見直しを行った場合、却って血糖値や血圧に悪影響を与え、症状が悪化してしまうリスクもあるのです。
また、食事や運動によっても血圧が改善しない場合には、血圧を下げる薬(降圧薬)の服用が必要となる場合もあります。
そのため、治療の効果を高めるためには、まずは医療機関を受診し、医師から専門的な指導を受けながら治療を行うことが最も重要といえるでしょう。
糖尿病と高血圧の関係や高血圧の治療法などについては以下の記事も合わせてご参照ください。
(4)定期的に眼底検査を受ける
血糖値と血圧の上昇は、どちらも目立った自覚症状が現れることはほとんどなく、本人も気づかないうちに症状が進行・悪化しているケースが多いです。
また、目のかすみや視力の低下など、本人が気づいた時点では症状が悪化していることも少なくありません。
網膜の状態を正確に把握するためには、定期的に眼科を受診し、眼底検査などを受けることが最も重要です。
眼底検査を受けることで、網膜の毛細血管の状態を正確に把握することができ、毛細血管の詰まりや新生血管がある場合には、糖尿病性網膜症による症状の可能性があります。
なお、糖尿病の症状が進行することで、毛細血管だけでなく、動脈などの太い血管もダメージを受けることがあり、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まることが知られています。
網膜の血管の状態は、脳の血管の状態とよく似た変化をすることも知られており、網膜の動脈がダメージを受けていることが判明すれば、脳の血管の状態を知ることにもつながるのです。
これによって、糖尿病性網膜症だけでなく、ほかの合併症の進行度合いを把握することにもつながり、早期発見と効果的な治療を行うことができるケースがあります。
まとめ
本記事では、目のかすみと糖尿病の関係や糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の症状などについて解説しました。
血糖値が高い状態を放置することで、目の奥の毛細血管が傷ついたり詰まったりしてしまい、目のかすみや視力の低下などの症状が現れることがあります。
また、初期段階ではほとんど自覚症状がないことが多く、何らかの異常を感じた時点では症状が進行・悪化している可能性があるのです。
目の不調や異変を放置することで、失明するリスクも高まるため、なるべく早期に専門の医療機関を受診することが重要といえます。
また、目の状態を普段から把握しておくことで、異常や異変に気づきやすくなり、早期発見と適切な治療によって、症状を改善させたり進行を食い止めたりすることにつながります。
健康診断などで血糖値や血圧が高いことを指摘された場合には、内分泌科などで血液検査などの精密検査を受けるとともに、眼科で必要な検査を受けることがおすすめです。