
糖尿病の食事で気をつけるべきことは?食べてもいいものの一覧もご紹介
「糖尿病になった場合には食事はどうすればよいのか」
「最近、血糖値が気になり、糖尿病ではないかと疑っている」
「血糖値が高い場合にも食べていいもの、食べるのを避けた方がよいものについて知りたい」
すでに糖尿病と診断された方や血糖値の上昇が気になる方の中には、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
血糖値は血液中のブドウ糖の濃度のことをいい、食事の後に最も上昇しやすいです。
そのため、糖尿病の治療や血糖値が高い場合には、食習慣を改善することによって、血糖値の急激な上昇を抑えることが重要です。
本記事では、糖尿病の治療における食事の重要性や血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できる食材などについて解説します。
また、糖尿病の治療中に食べるのを避けた方がよいものについても合わせて解説しています。
なお、本記事で紹介する食材は、すでに糖尿病の治療を開始されている方はもちろん、血糖値が気になる方が食習慣を改善し、糖尿病を予防する効果も期待できます。
血糖値の上昇が気になる方にとっても、本記事の内容が食習慣や生活習慣を改善するための参考となれば幸いです。
1.糖尿病と食事の関係
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇し続けることによって発症する病気です。
通常であれば、血糖値が上昇すると、膵臓にあるβ細胞からインスリンというホルモンが血液中に放出されます。
インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に吸収させ、細胞や組織のエネルギー源として消費されることを促すはたらきを持っています。
また、エネルギーとして消費されずに余ったブドウ糖をグルコースという物質に変えて筋肉や脂肪に蓄えるはたらきもあるのです。
そのため、インスリンが正常にはたらいている場合には、血糖値は一定の水準に保たれます。
しかし、何らかの原因でインスリンが作られなくなったり、インスリンがはたらかなくなったりすると、血液中のブドウ糖は細胞に吸収されず、血液中にあふれることになってしまいます。
これによって、血糖値が高い状態が続くと、糖尿病になってしまうのです。
血糖値が高い状態が長い間続くと、細い血管である毛細血管が傷つき、詰まりやすくなることで、さまざまな症状や合併症を引き起こす可能性が高まります。
中には生命に関わる病気もあるため、糖尿病と診断された場合や血糖値が高い状態が続いている場合には、体の中に取り入れられる糖質(ブドウ糖)をコントロールすることで血糖値の上昇を抑える必要があります。
血糖値を正常な範囲に保つことができれば、糖尿病の症状が進行することを防止し、合併症のリスクを抑えることにもつながります。
そのためには、1日の摂取カロリーと栄養素のコントロールを行うことが重要です。
なお、血糖値の上がりやすさについては、GI値と呼ばれる指標が影響を与えることが知られています。
GI値は、「グリセミック・インデックス値」の略で、食後に血糖値が上がるスピードを示す指標です。
さまざまな食材や食品は、GI値によって以下のように分類されます。
分類 | GI値の基準 |
低GI値食品 | 55以下 |
中GI値食品 | 56~69以下 |
高GI値食品 | 70以上 |
この中でも、低GI値食品は食後の血糖値の上昇を緩やかにするはたらきがあるため、糖尿病の場合や血糖値が高い場合にも、食事に取り入れることで血糖値の改善を期待できる場合があります。
もっとも、糖尿病や糖尿病が疑われる場合には、摂取する栄養素のバランスも重要です。
具体的には、主食・主菜・副菜のバランスが大切であり、それぞれに低GI値食品を取り入れることで血糖値の急激な上昇を抑えることにつながります。
どのような食材や食品が低GI値食品にあたるかは、以下で詳しく解説します。
2.主食編|血糖値の上昇を緩やかにするもの一覧
米やパンなどの主食には、炭水化物(糖質)が多く含まれています。
そのため、過度に摂取することで急激な血糖値の上昇につながるため、注意が必要です。
うどんや白米、パンなどはGI値が高いことが知られており、これらの食品をとるときは1食あたり40gまでに抑えることが望ましいとされています。
具体的には、白米であれば軽く茶碗に半膳、パンであれば薄切り1枚程度が基準となります。
また、上記のようなものに代えて、GI値が低い以下のような食品をとることがおすすめです。
- 玄米・雑穀米
- 全粒粉パン
- 十割そば
順にご説明します。
(1)玄米・雑穀米
玄米や雑穀米は、白米と比較するとGI値が低いことが知られています。
具体的には、白米のGI値は88であるのに対して、玄米や雑穀米は55です。
玄米や雑穀米は、糠や胚芽が残った状態のものであり、この糠や胚芽には食物繊維やミネラルが多く含まれています。
食物繊維やミネラルは、糖質の吸収を抑えるはたらきがあることが知られています。
そのため、食後の血糖値が急激に上がってしまうのを抑えられる効果が期待できるのです。
(2)全粒粉パン
全粒粉は小麦の皮や胚芽を取り除かずに丸ごと粉末にしたものです。
通常のパンのGI値が約90であるのに対して、全粒粉パンのGI値は55であり、低GI食品であるといえます。
また、小麦の皮や胚芽にも食物繊維やミネラル、ビタミンが含まれており、糖質やコレステロールの吸収を抑えるはたらきがあります。
パンの代わりに全粒粉パンなどをとることで、食後の血糖値が急激に上がることを防ぐことができるほか、食物繊維やミネラルなどの栄養素もとることができるのです。
(3)十割そば
そばはGI値が55と低く、一般的に糖尿病の人の主食にも適しているといわれています。
また、糖質の吸収スピードを緩やかにする水溶性食物繊維が多く含まれているため、食後の血糖値が急激に上がることを抑える効果が期待できます。
このほか、血糖値の上昇を抑えてインスリンを放出させる作用や抗酸化作用があるルチンというポリフェノールを含んでいます。
そのため、すでに血糖値が高い場合に糖尿病を予防するためにも効果的といえるでしょう。
なお、インスリンの放出を促す効果や抗酸化作用を十分に発揮させるためにも、そばの種類の選び方にも工夫が必要です。
例えば、つなぎに小麦粉が使われていない十割そばの方がほかの種類のそばよりも糖尿病の人の食事には適しているといえるでしょう。
もっとも、そば粉はアレルギー物質としても知られているため、食事の際には注意が必要です。
3.主菜編|血糖値の上昇を緩やかにするもの一覧
主菜には、脂質を避けてタンパク質を多くとるのがおすすめです。
タンパク質は吸収に時間がかかるため、糖質と一緒にとることで、糖質の吸収も緩やかとなり、血糖値の急激な上昇を抑えるはたらきがあります。
また、タンパク質は筋肉を作り出す材料となるため、吸収されずに残ったブドウ糖が蓄えられ、血糖値を下げる効果が期待できるのです。
一般的に、肉や魚などの動物性タンパク質はもちろん、大豆などの植物性タンパク質も低GI値食品であることが知られています。
具体的には、以下のような食材・食品が挙げられます。
- 大豆
- 豚肉
- サバ・アジなどの青魚
- 納豆
順に見ていきましょう。
(1)大豆
大豆はほかの豆類と比較してもタンパク質が含まれる割合が高く、またアミノ酸の配列が肉や魚などの動物性タンパク質と似ていることが知られています。
そのため、肉や魚などと合わせてとることで、理想的なアミノ酸の摂取をすることが可能です。
また、大豆胚芽に含まれるイソフラボンは血中のコレステロール値を下げて、インスリンのはたらきを改善するのに有益であることが指摘されています。
インスリンのはたらきが改善することで、血中のブドウ糖をエネルギーとして吸収・分解させることができ、血糖値を下げることにつながるのです。
なお、イソフラボンには血糖値を下げる効果のほかにも、骨粗しょう症や更年期障害の予防にもつながるほか、心臓病や糖尿病のリスクを抑える効果も期待できることが報告されています。
そのため、糖尿病の予防に効果的な食材の1つということができるでしょう。
(2)豚肉
豚肉には、糖質の分解・吸収に関わるビタミンB1が多く含まれていることが知られています。
そのため、豚肉をとることで、スムーズな糖質の分解と吸収を促すことができ、血糖値の上昇を緩やかにすることが期待できます。
もっとも、豚肉をとるときには部位に注意する必要があります。
一般的にビタミンB1が含まれているのは、ヒレ肉やモモ肉などの赤身が多い部位であるため、脂身の多い部位は避けるようにしましょう。
なお、赤身の過剰な摂取は却って糖尿病を悪化させたり糖尿病の発症リスクを増大させる可能性があることにも注意が必要です。
これは、赤身に含まれるヘム鉄や飽和脂肪酸が膵臓のβ細胞にダメージを与え、インスリンのはたらきを低下させることに理由があると考えられています。
そのため、大豆製品や次項で述べる魚などからタンパク質を摂取する方が望ましい場合もあることを押さえておきましょう。
(3)サバ・アジなどの青魚
魚のタンパク質には、血糖値の上昇を抑えるGLP-1というホルモンが放出されるのを促すはたらきがあります。
また、インスリンの放出量も促進するはたらきがあるため、血糖値の上昇を抑える効果が期待できるのです。
特にサバやアジ、サンマなどの青魚には、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られています。
DHAやEPAには、動脈硬化を防ぐ効果があるといわれています。
糖尿病では血糖値が高い状態が続くことで、血管が傷つき、詰まりやすくなることで動脈硬化のリスクを高めることが指摘されています。
そのため、青魚などを積極的に摂取することで、血糖値の上昇を抑えることができるほか、動脈硬化のリスクを下げることも期待できるのです。
(4)納豆
納豆にも大豆と同じく植物性タンパク質のほか、イソフラボンが多く含まれていることが知られています。
そのため、インスリンの放出量やはたらきを改善させて、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
また、納豆に含まれるナットウキナーゼには、血管が詰まる原因となる血栓の成分を分解するはたらきがあるため、血流を改善することにもつながるのです。
血流がよくなると、血圧も下がるため、高血圧が原因となって発症する動脈硬化を予防する効果も期待できます。
また、動脈硬化自体が糖尿病のリスクを高めることにもつながるため、高血圧を防ぐことは動脈硬化と糖尿病のどちらも予防することにつながります。
4.副菜編|血糖値の上昇を緩やかにするもの一覧
副菜では、食物繊維やミネラルを多く含む食品をとるのが血糖値の上昇を抑える上でも効果的といえます。
先ほども述べたように、食物繊維やミネラルには糖質の吸収を抑えるはたらきがあります。
食物繊維やミネラルを多く含む食品は特に野菜に多く、ほとんどが低GI値食品でもあるため、糖尿病の場合や血糖値が高い場合にも摂取したい食品の1つといえるでしょう。
具体的には、以下のような食品をとることが望ましいといえます。
- ブロッコリー
- グリーンアスパラ
- キャベツ
- 舞茸
- わかめ・昆布などの海藻類
これらの食品をとることは、血糖値の急激な上昇を抑えるだけでなく、栄養素のバランスを改善することにもつながります。
(1)ブロッコリー
ブロッコリーには食物繊維が豊富に含まれているほか、余分な塩分を排出するはたらきがあるカリウムも含まれているため、血圧が高い場合にもとることがおすすめです。
また、糖質の分解・吸収を促す葉酸も含んでいるため、血糖値を下げる効果も期待できます。
ブロッコリーをはじめとする緑黄色野菜には、スルフォラファンという物質が含まれており、糖尿病を悪化させるタンパク質を減らすはたらきがあることが報告されています。
スルフォラファンには脂肪細胞のエネルギー消費を促して肥満を改善するはたらきがあり、このことがインスリンのはたらきをよくするという研究もあります。
そのため、糖尿病のほかにも動脈硬化や脳卒中などを予防する効果が期待できるとされています。
(2)グリーンアスパラ
グリーンアスパラも緑黄色野菜の1つであり、食物繊維のほかβカロテンやビタミンCなどのミネラルが豊富に含まれており、抗酸化作用や血流改善の効果などがあります。
また、穂先にはルチンというポリフェノールを含み、ビタミンCとの相乗効果によって、毛細血管を修復・強化するはたらきがあることが知られています。
さらに、悪玉(LDL)コレステロールを低下させる効果や血糖値を下げる効果などもあり、免疫力を高めるはたらきもあることが報告されています。
(3)キャベツ
食物繊維を多く含むため、糖質の吸収を抑えるはたらきが期待できます。
糖質の吸収を抑えることによって、食後の血糖値が急激に上昇するのを抑えて、インスリンの放出量を抑えることにもつながるのです。
これによって、膵臓への負担を減らすことができ、インスリンの放出を安定させる効果が期待できます。
特にインスリンのはたらきが弱められてしまうことで発症する2型糖尿病では、血糖値の上昇を抑えようと過剰なインスリン放出が起こることが多いです。
これによってβ細胞のはたらきが弱まってしまい、インスリンがうまく作り出されなくなってしまう事態にもなりかねません。
そのような場合には、膵臓への負担を減らしてβ細胞を休ませることが重要となります。
さらに、キャベツは繊維質であるため、よく噛んで食べることで満腹感を得られやすくなり、食べすぎによる肥満を改善させることも可能です。
(4)舞茸
きのこ類も食物繊維が豊富に含まれており、糖尿病の場合や血糖値が高い場合に積極的にとりたい食品の1つといえます。
その中でも舞茸は亜鉛を含み、血糖値を下げる効果が期待できます。
亜鉛はインスリンを作り出す材料となるため、亜鉛を多く含む食品をとることで、インスリン量を増やすことにもつながるのです。
また、血糖値の上昇を抑えるはたらきがあるマグネシウムも含んでいるため、血糖値を改善させる効果が期待できます。
(5)わかめ・昆布などの海藻類
わかめや昆布などの海藻類にも食物繊維やミネラルが多く含まれているため、上記のような緑黄色野菜などと合わせてとるのがおすすめといえます。
海藻類に含まれる水溶性食物繊維は腸の中でゲル状になって糖質の吸収を抑えるため、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できるのです。
また、海藻類に含まれる水溶性食物繊維は、腸内で分解されると、短鎖脂肪酸という物質が作り出されます。
短鎖脂肪酸は、腸の中の善玉菌の活動を助け、腸内環境を整えるほか、コレステロールが作られるのを抑えて肥満の予防につながることも報告されています。
なお、海藻類に含まれるヨウ素は甲状腺ホルモンを作り出すための材料となり、脂質やタンパク質の吸収・分解、基礎代謝の活性化を助けるはたらきがあります。
もっとも、過剰に摂取することで甲状腺ホルモンを作り出すはたらきが阻害されてしまい、橋本病などの甲状腺の病気を引き起こす可能性があるため、適切な量をとることを心がけましょう。
5.食べるのを避けた方がよいもの
すでに述べたように、糖尿病の治療では、食事の習慣を改善させることが重要です。
摂取カロリーと栄養素のバランスを意識し、血糖値が急激に上がることを抑えることができれば、食べることが禁止される食材や食品は基本的にはありません。
もっとも、上記で述べたように、糖尿病の場合や血糖値が高い場合には、それ以上血糖値を上げないような食品や栄養素をとるように心がけるのが大切です。
そのため、以下のような食品は避けることが望ましいといえるでしょう。
- 菓子パン
- ファーストフード
- 加工食品
- 甘い菓子・スナック菓子
- 清涼飲料水
特にインスリンのはたらきが弱められることによって発症する2型糖尿病は、肥満などの生活習慣によって引き起こされることが多いです。
これらのような食品は血糖値の上昇だけでなく、肥満の原因にもなる可能性があるため、血糖値が気になる方も食習慣を見直すことを検討しましょう。
(1)菓子パン
菓子パンには糖質が多く含まれているだけでなく、カロリーが高いものが多いです。
小麦粉を使って作られているパンはGI値が高く、砂糖やクリームなども使われている菓子パン類は、食後血糖値を急激に上昇させる原因にもなります。
また、ドーナツなどは油で揚げているため、脂肪分が多くなる傾向にあります。
そのため、糖尿病の治療中や血糖値が気になる場合には、菓子パンをとることは避けた方がよいでしょう。
(2)ファーストフード
ファーストフードは手軽に食べることができるため、時間がない場合などに利用されることが多いです。
具体的には、ハンバーガーやフライドチキンなどが代表的といえます。
これらは油を使って調理するため、脂肪分が多く、カロリーも高くなってしまうため、血糖値に悪い影響を与えます。
また、塩分が多く含まれているため、過剰に摂取することで高血圧や動脈硬化を引き起こす可能性が高まってしまいます。
すでに糖尿病を患っている場合には、血糖値のコントロールを悪化させ、心疾患を引き起こすトリガーとなってしまうため、注意が必要です。
また、同様の理由から揚げ物などのとりすぎにも注意を払いましょう。
(3)加工食品
ハムやソーセージ、インスタント食品などの加工食品のとりすぎにも注意が必要です。
加工食品は、ファーストフードと同じく脂肪分が多く、高カロリーなものが多い傾向にあります。
また、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が含まれていることも多く、これらの物質はコレステロールを増加させて動脈硬化や心疾患のリスクを高めることが知られています。
さらに、加工食品には保存料や着色料などの添加物が含まれており、このような化学物質が体に与える影響なども指摘されています。
糖尿病だけでなく、ほかの病気を引き起こすリスクもあるため、血糖値の上昇が気になる場合にも控えておくことが大切でしょう。
(4)甘い菓子・スナック菓子
甘い菓子やスナック菓子には糖質や脂質が多く含まれているため、過剰に食べることで血糖値の急激な上昇につながります。
特に空腹時に甘い菓子やスナック菓子を過剰に摂取してしまうと、血糖値が急激に上昇した後に急降下する「血糖値スパイク」を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
健康診断では空腹時の血糖値を測定するため、血糖値スパイクが起こっていても見逃されてしまうことが多く、放置することで徐々に血管が傷ついてしまいます。
血管が傷つくことで、血管内部に脂質などが沈着すると、動脈硬化や血栓を引き起こすリスクが高まってしまうのです。
また、スナック菓子には塩分や油が多く含まれているため、高血圧の原因となり、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。
そのため、糖尿病の治療中に過剰に摂取してしまうと、動脈硬化や心疾患などの合併症を引き起こすリスクを高めてしまう可能性があります。
また、血糖値が気になる方も、これ以上血糖値を上げないためにも、控えた方がよいでしょう。
(5)清涼飲料水
清涼飲料水には大量の砂糖が使われているため、血糖値に悪影響を与えます。
具体的には、炭酸飲料やスポーツドリンクなどがこれにあたります。
特に飲み物は食べ物と比較すると消化・吸収のスピードが早く、血糖値の急激な上昇を引き起こしやすいことに注意が必要です。
また、糖尿病の人がスポーツドリンクなどを大量に飲むと、急激にインスリンが必要となり、糖尿病性ケトアシドーシスという重篤な合併症を引き起こすことがあります。
これはケトン体という物質が過剰に作り出されて血液の中にあふれ、血液が酸性に傾いてしまい、激しい脱水症状とのどの渇き、強い倦怠感などが現れる病気です。
症状が急激に進行する点に特徴があり、昏睡や意識障害などを引き起こし、生命に関わる重篤なものであるため、注意が必要となります。
なお、果物や野菜を原料とするフルーツジュースや野菜ジュースも飲みすぎは控える方がよいといえます。
果物や野菜には食物繊維などが含まれ、血糖値の上昇を抑える効果が期待できるものの、ジュースの状態になると食物繊維が減り、血糖値の上昇を抑えるはたらきが弱められてしまいます。
また、砂糖や塩分が添加されているものもあるため、血糖値や血圧の上昇を引き起こす可能性があることにも注意が必要です。
6.摂取カロリーと栄養素のバランス以外に注意すべきポイント
糖尿病の場合や血糖値が高い場合の食事は、上記で述べたような点に注意することが大切です。
もっとも、カロリー量と栄養素のバランス以外にも、血糖値の上昇を抑えるためには以下のことも意識しましょう。
- よく噛んで食べる
- 食べる順番を意識する
- 欠食をしない
- 間食をするときは工夫する
いずれもすぐに試すことができるものなので、ぜひ意識してみましょう。
(1)よく噛んで食べる
食事のときには、よく噛んで食べることが大切です。
よく噛まずに食事をとると、食後血糖値が急激に上がってしまう原因になってしまいます。
また、食事による満腹感を得るためには時間がかかるため、よく噛んで食事をとることで少量の食事で満腹感を得ることにつながります。
このことは、必要以上に食べてしまうのを防ぐためにも効果的といえます。
(2)食べる順番を意識する
摂取カロリーと栄養素のバランスのほかにも、食べる順番を意識することで、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。
具体的には、食物繊維やタンパク質を先にとり、最後に炭水化物をとることで、食後血糖値が急激に上がることを抑えることにつながります。
これは、食物繊維やタンパク質は消化・吸収されるまでに時間がかかるため、上記のような順番で食べることで炭水化物(糖質)の消化・吸収も緩やかになることが理由です。
このように、血糖値が上がりにくくなるような食べ方を意識することも大切といえます。
(3)欠食をしない
血糖値が急激に上がることを抑えるためには、食事の内容だけではなく、リズムも大切です。
具体的には、1日に3食しっかりとることを徹底しましょう。
特に朝食をとらない人は、朝食をしっかりとる人と比較しても、血糖値が上がりやすくなり、動脈硬化や脳卒中のリスクを高めることが報告されています。
これは、朝食をとらないことによって、次の食事の時間まで空腹の状態が続くと、体や脳がエネルギー不足に陥ってしまうことに理由があります。
エネルギー不足に陥ると、体や脳の活動が低下してしまうため、体はインスリン拮抗ホルモンと呼ばれる物質を放出して血糖値が下がりすぎないようにするのです。
この状態で昼食をとってしまうと、血糖値を下げるはたらきがあるインスリンに対して、インスリン拮抗ホルモンが作用してしまい、血糖値が下がりにくくなってしまいます。
これによって、朝食をとっている場合と比較して血糖値が上がりやすくなり、動脈硬化や脳卒中などの病気を引き起こすリスクが高まってしまうことに注意が必要です。
特に糖尿病の治療中の方にとっては、合併症を引き起こす危険因子にもなる可能性があるため、血糖値のコントロールという観点からも、欠食をしないことが重要といえるでしょう。
(4)間食をするときは工夫する
糖尿病の治療中や血糖値が高い状態では、間食をすることはなるべく控えることが望ましいです。
これは、間食をとることで食事のリズムや栄養素のバランスを崩すことにつながるためです。
もっとも、1日のカロリー摂取量や栄養素のバランスを管理することができれば、間食をとることもできます。
間食をする場合にも、血糖値を急激に上げないようなものをとるのがおすすめといえます。
具体的には、以下のようなものです。
- ヨーグルト
- チーズ
- アーモンドなどのナッツ類
- ブルーベリー
- キウイフルーツ
- 寒天ゼリー など
これらは一般的にGI値が低く、カロリーも高くない傾向にあるため、糖尿病の場合や血糖値が気になる場合の間食にも適しているといえます。
もっとも、食べすぎは摂取カロリー量や栄養素のバランスを崩すことにつながり、血糖値のコントロールに悪影響を及ぼすこともあるため、適正量を意識することが大切です。
例えば、果物類は1日80kcalまでに抑えることが望ましく、握りこぶし一個分に収まる程度の量にするなど、セルフコントロールを行うことが何よりも重要といえます。
まとめ
本記事では、血糖値の上昇を緩やかにする食材や食品などについて解説しました。
糖尿病の方や血糖値が気になる方は、血糖値を正常な範囲に保つことが重要であるため、食事の際には成分表示などを普段から意識することも大切です。
特にファーストフードなどの糖質や脂質が多い食事を普段からしていると、2型糖尿病の発症リスクを高めてしまうため、血糖値が気になる方は、まずは食習慣の改善を行うことが重要といえます。
また、血糖値を安定させるためには、食べ方やリズムなども合わせて意識することが大切です。
糖尿病の方や血糖値が気になる方は、本記事も参考にしながら普段の食習慣を見直すことも意識しましょう。