糖尿病の予防と食事の関係は?予防効果を高めるための食事面のポイント

「食事を工夫すると糖尿病は予防できる?」
「予防効果を高めるためのポイントについて知りたい」

体重の増加や血糖値が高いことを指摘された方の中には、糖尿病と食事の関係について、このような疑問をお持ちの方もいると思います。

糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続くことで発症する病気です。

これは、ブドウ糖をエネルギー源として細胞に吸収・消費させる役割を担うインスリンというホルモンの分泌量や作用が低下してしまうことに理由があります。

そして、インスリンの分泌量や作用が低下するのは、食事をはじめとする生活習慣の乱れが関わっている場合があります。

本記事では、食事が糖尿病の予防に重要な理由や予防効果を高めるために意識したい食習慣の改善ポイントなどについて解説します。

1.糖尿病の予防で食事が重要な理由

2型糖尿病は、インスリンが十分に分泌されないことやインスリンが効きにくくなることによって発症します。

遺伝的な体質や加齢に、食事や身体活動、体重の変化などが関わるため、生活習慣だけが原因ではありません。

食事や運動の改善は、2型糖尿病の発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりすることに役立ちます。

食習慣の改善が2型糖尿病の発症を予防するのに効果的な理由としては、以下のものが挙げられます。

糖尿病の予防で食事が重要な理由

  1. 食後血糖値の変動に関わる
  2. 体重増加や肥満に関わる

順に見ていきましょう。

(1)食後血糖値の変動に関わる

食事によって体内に取り込まれた栄養素の中には、食後の血糖値の変動に関わるものもあります。

特に炭水化物は糖質を含み、食事によって大量に摂取すると、小腸から吸収されて血液の中に入ります。

そうすると、血糖値が急激に上昇しやすいです。

血糖値が上昇すると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌され、細胞にはたらきかけることで血液中のブドウ糖を吸収・消費させます。

これによって血糖値は緩やかに下がりますが、糖質の摂取量が多い食事をとっていると、血糖値が急激に上がることに伴い、インスリンも過剰に分泌されます。

食事に含まれる糖質は、消化・吸収されて食後の血糖値に影響します。

その上昇の程度は、糖質の量だけでなく、食品の種類や組み合わせ、インスリンの分泌や効き方によって異なります。

2型糖尿病の予防では、食後の血糖値だけに注目するのではなく、食事全体の量と質を見直し、適切な体重を保つことが大切です。

なお、食後血糖値の急激な上昇とインスリンの過剰分泌が起こる現象を「血糖値スパイク」と呼び、さまざまな症状や不調が見られることがあります。

具体的な症状やメカニズム、放置するリスクについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

(2)体重増加や肥満に関わる

食事によるカロリー摂取量は、体重の増加や肥満にも関わります。

肥満は、摂取するカロリー量に対して、消費するカロリー量が下回る状態が続くことで起こりやすいです。

そして、肥満の状態では脂肪の蓄積が見られることから、血糖値のコントロールにも悪影響を及ぼします。

特に内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から分泌される物質の変化などを通じて、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」が生じやすくなります。

インスリンの分泌が体に必要な量に追いつかなくなると、血糖値が上昇します。

なお、肥満がなくても2型糖尿病を発症することはあります。

減量の必要性や目標は、現在の体格や年齢、健康状態に応じて考えることが大切です。

糖尿病の予防という観点では、摂取カロリーの把握に努め、肥満を予防することが効果的といえるでしょう。

肥満と糖尿病の関係や発症リスクが高まるほかの病気については、以下の記事で詳しく解説しています。

2.糖尿病を予防するための食事のポイント

2型糖尿病の予防では、自分に合った食事量を保ち、食品の選び方や食べ方を見直すことが大切です。

無理なく続けられる改善から取り組みましょう。

具体的には、以下の点を意識しましょう。

糖尿病を予防するための食事のポイント

  1. 1日3食とることを心がける
  2. 炭水化物(糖質)の摂取量を一定に保つ
  3. タンパク質を不足なくとり、食物繊維の多い食品を取り入れる
  4. 時間をかけてよく噛んで食べる
  5. 節酒に努める

体重の増加やBMIの数値が気になる方、健康診断で血糖値が高いことを指摘された方にとっても、食習慣の改善で減量や血糖値の安定につながる効果が期待できます。

そのため、これらを意識しながら食習慣の改善に取り組みましょう。

(1)1日3食とることを心がける

1日3食を目安に、自分の生活に合った規則的な食事のリズムを整えましょう。

食事を抜いた反動で一度に食べすぎたり、夜遅くに食事量が集中したりしないようにすることが大切です。

ただし、食事の回数だけで糖尿病の予防効果が決まるわけではありません。

1日全体の食事量や栄養バランスにも目を向けましょう。

(2)炭水化物(糖質)の摂取量を一定に保つ

ご飯やパン、麺類などの主食は、活動量や体格に合った量に調整しましょう。

必要な量には個人差があるため、「ご飯は必ず1膳」、「パンは必ず1枚」と一律に決めることはできません。

主食の一部を玄米、麦飯、全粒粉パンなどに替えると、食物繊維をとりやすくなります。

ただし、雑穀やライ麦が入っている食品でも、原材料や配合によって食物繊維の量は変わります。

これらの食品も食べすぎには注意が必要です。

また、砂糖入りの清涼飲料水や加糖コーヒーなどを日常的に飲んでいる方は、水や無糖のお茶に替えることから始めましょう。

なお、糖質の摂取量を制限することで血糖値の上昇を抑えられる可能性はありますが、過度な糖質制限にはリスクもあります。

糖尿病の予防や治療で糖質制限を実施する際の注意点については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

(3)タンパク質を不足なくとり、食物繊維の多い食品を取り入れる

糖質の摂取量を一定に保つとともに、タンパク質や食物繊維は積極的に食事に取り入れるのがおすすめです。

タンパク質は筋肉を作るために不可欠な栄養素であり、肉や魚、大豆などに多く含まれています。

インスリンは余分なブドウ糖をグリコーゲンという物質に変えて筋肉などに蓄えるはたらきも持ち、タンパク質を摂取して筋肉量を増やすと血糖値の安定につながります。

また、タンパク質は消化までに時間がかかるため、満腹感が持続しやすく、食べすぎによる肥満を予防することにもつながるでしょう。

なお、筋肉を維持するためには、魚、肉、卵、大豆製品などからタンパク質を不足なくとり、運動を組み合わせることが大切です。

タンパク質を多くとるだけで筋肉が増えるわけではなく、主食に偏らず主菜と副菜をそろえることを意識しましょう。

腎臓病などがある方は、適切な摂取量について医師や管理栄養士に相談してください。

これに対して、食物繊維は野菜に多く含まれ、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。

ほかにも、豆類や全粒穀物、きのこ類にも食物繊維は多く含まれます。

食物繊維を含む食品・食材は繊維質なものが多く、よく咀嚼することで満腹中枢が刺激され、肥満を予防するためにも効果的です。

なお、血糖値の安定に効果が期待できる食品や食材、摂取を控えるべきものについては、以下の記事も参考になります。

(4)時間をかけてよく噛んで食べる

食事の際には時間をかけて、よく噛みながら食べることも重要です。

早食いの習慣がある場合には、食べすぎや肥満を引き起こす可能性があります。

また、早食いによって食べ物が大量に胃や腸に到達すると、食後血糖値の急激な上昇につながりやすいです。

時間をかけて食事をとることで、消化や吸収のスピードを抑え、食後血糖値の上昇が緩やかになる効果が期待できるでしょう。

さらに、よく噛むと満腹中枢が刺激され、少ない食事量で満腹感や満足感を得やすくなります。

(5)節酒に努める

夕食にお酒を飲む頻度が高い場合には、飲酒量や頻度を減らすことも大切です。

お酒に含まれるアルコールには糖質も含まれているため、飲みすぎると食後血糖値を上昇させる原因にもなります。

また、アルコールには食欲を増進させるはたらきがあり、過度な飲酒は食べすぎや肥満を引き起こすリスクがあることにも注意しましょう。

お酒を飲む場合には、1日の摂取量を以下のように定めることが大切です。

お酒の種類 1日の摂取量の上限
ビール 中瓶1本(500㎖)
日本酒 1合(180㎖)
チューハイ 缶1本(350㎖)
ワイン グラス2杯(200㎖)
ウイスキー ダブル1杯(60㎖)

体調や体質によっても適切な飲酒量は異なるため、上記はあくまで目安です。

また、飲酒の習慣は肝臓に負担をかけ、中長期的には肥満や血糖値の乱れによって糖尿病やほかの病気を引き起こすリスクが高まるため、週に2~3日は休肝日を設けるようにしましょう。

3.食事以外で糖尿病の予防効果を高めるためのポイント

食習慣を改善することで、食後血糖値の急激な上昇を防ぐことにつながります。

しかし、糖尿病は食事の内容を改善するだけで予防できるわけではありません。

特に2型糖尿病は、食習慣の乱れ以外にもさまざまな要因が複雑に影響することで発症リスクが高まります。

そのため、2型糖尿病を予防するためには、上記のような食習慣の改善に加えて、以下のようなポイントを押さえておくことが大切です。

食事以外で糖尿病の予防効果を高めるためのポイント

  1. 定期的な有酸素運動で基礎代謝を高める
  2. レジスタンス運動で筋肉量の増加を促す
  3. 十分な睡眠を確保してホルモンバランスを整える

それぞれについてご説明します。

(1)定期的な有酸素運動で基礎代謝を高める

食習慣を見直すことで、体の中に取り込まれるブドウ糖の量を調整し、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できますが、ブドウ糖を適切に消費するためには日々の運動習慣が欠かせません。

特にジョギングやウォーキング、水泳などの有酸素運動に取り組むことがおすすめです。

有酸素運動は、酸素を取り入れて筋肉を動かす運動を指し、筋肉を動かす際にはブドウ糖がエネルギー源として消費されます。

そのため、食習慣の改善とあわせて取り組むことで、さらに血糖値を安定させる効果が期待できます。

運動は、筋肉でのブドウ糖の利用を促すとともに、インスリンの効きを改善します。

運動習慣がない方は、歩く時間を増やすなど、体力に合った方法から始めましょう。

糖尿病の予防効果を高めるための運動の取り組み方については、以下の記事も参考になります。

(2)レジスタンス運動で筋肉量の増加を促す

有酸素運動のほか、レジスタンス運動に取り組むことも糖尿病の予防のためには効果的です。

レジスタンス運動は、筋肉に負荷をかけることで行う運動であり、腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングを指します。

レジスタンス運動は、筋力や筋肉量の維持・増加に役立つほか、インスリンの効きや血糖管理の改善にもつながります。

有酸素運動と組み合わせ、体力や関節の状態に合った負荷で続けましょう。

(3)十分な睡眠を確保してホルモンバランスを整える

2型糖尿病は、食事や運動に関する習慣だけでなく、睡眠不足によっても引き起こされるリスクが高まります。

睡眠不足の状態が続くと、体の中のホルモンバランスが崩れてしまいます。

特にストレスを感じたときに分泌されるストレスホルモンの中には、血糖値を上昇させるはたらきを持つものもあります。

そのため、持続的な睡眠不足やストレスは、血糖値のコントロールを乱して2型糖尿病の発症リスクを高めることに注意が必要です。

また、慢性的なストレスを原因として睡眠不足に陥ることもあり、睡眠不足の状態が続くと食欲が増進して肥満を引き起こすケースもあります。

そうすると、ホルモンバランスの乱れと肥満が関わることで、さらに血糖値のコントロールが悪くなるリスクがあります。

食習慣と運動習慣を見直すとともに、十分な睡眠を確保することも意識しましょう。

具体的には、1日に6~7時間程度の睡眠時間を確保することが2型糖尿病の予防のために効果的です。

さらに、ストレスを感じている場合には、休日に趣味の時間を作るなど、リフレッシュのための工夫を心がけましょう。

ストレスと糖尿病の関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。

4.糖尿病の予防と食事の関係についてよくある質問

糖尿病は、日々の生活習慣の乱れなどが積み重なることで発症リスクが高まります。

そのため、普段から生活習慣に気をつけることで、糖尿病の予防につながります。

当院では、糖尿病の治療だけでなく、血糖値が高いことなどを指摘された方に向けて、生活習慣の改善についてのアドバイスやサポートも実施しています。

特に糖尿病の予防と食事の関係について、以下のような質問を受けることが多いです。

糖尿病の予防と食事の関係についてよくある質問

  1. 食習慣が乱れている場合に見られる糖尿病のサインは何ですか?
  2. 糖尿病を予防するためにはカロリー制限も必要ですか?
  3. 糖尿病の予防に効果的な食品や食材はありますか?

健康診断の結果で少しでも気になる項目があった場合や異常を指摘された場合には、ぜひ当院にご相談ください。

(1)食習慣が乱れている場合に見られる糖尿病のサインは何ですか?

2型糖尿病は、初期には自覚症状がないことも少なくありません。

欠食の習慣や炭水化物に偏った食習慣がある場合、食後血糖値の急激な上昇を招きやすく、食後の強い眠気や疲労感が見られることがあります。

しかし、眠気や疲労感だけでは、糖尿病かどうかは判断できません。

高血糖が持続すると腎臓がブドウ糖を十分に再吸収できなくなり、尿の中にブドウ糖とともに水分も排泄される「浸透圧利尿」が生じて多尿や頻尿が見られることもあります。

これにより、体は脱水状態に陥り、異常な喉の渇きと水分摂取量の増加も見られるケースもあることに注意しましょう。

血糖値が高い状態が続くと、強い喉の渇き、尿量の増加、意図しない体重の減少などが現れることがあります。

これらの症状がある場合は早めに当院をはじめとする糖尿病内科を受診してください。

また、症状がなくても、健診で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合も、受診することが大切です。

(2)糖尿病を予防するためにはカロリー制限も必要ですか?

カロリー制限にも取り組むことで、肥満を予防し、糖尿病を予防する効果も期待できますが、すべての人に厳格なカロリー制限が必要となるわけではありません。

もっとも、すでに肥満の状態にある場合には、栄養素のバランスを整え、カロリー制限を実施することがおすすめです。

1日のカロリー摂取量の目安は、以下のように定めます。

1日のカロリー摂取量の算定式

  • 1日のカロリー摂取量=標準体重×エネルギー係数

エネルギー係数は、普段の仕事の内容や活動量によって、以下のように定めることができます。

身体活動レベル エネルギー係数
軽い労作(大部分が座った姿勢にある) 25~30kcal/kg
普通の労作(座った姿勢を中心として、通勤や家事などの軽い運動を含む) 30~35kcal/kg
重い労作(力仕事や活発な運動習慣がある) 35~kcal/kg

ただし、すべての人にカロリー制限や減量が必要なわけではありません。

肥満がある方では、食事量を調整して無理のない減量に取り組むことが2型糖尿病の予防に役立ちます。

一方、痩せている方や高齢者の方では、食事を減らしすぎると低栄養や筋肉量の減少につながることがあります。

適切な食事量や体重の目標は、年齢や体格、活動量、持病などによって異なります。

医師や管理栄養士と相談して決めましょう。

(3)糖尿病の予防に効果的な食品や食材はありますか?

糖尿病の予防に効果的な単一の食品・食材はありません。

食物繊維やタンパク質を含む食品は、食後血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できますが、過剰に摂取することで糖尿病の予防効果が高まるわけではありません。

また、炭水化物(糖質)も必要な栄養素であり、過度に控えると体はエネルギー不足に陥り、却って健康を損なうリスクがあります。

そのため、炭水化物(糖質)、食物繊維、タンパク質などの栄養素をバランスよく取り入れた食習慣を心がけることが大切です。

なお、食習慣の改善に取り組み、減量や血糖値の改善が見られた場合でも、食習慣をもとに戻すとリバウンドなどによって血糖値が上昇し、糖尿病の発症リスクも高まります。

一時的な改善ではなく、持続的に食習慣の改善に努めることが糖尿病の予防効果を高めることにつながるでしょう。

まとめ

本記事では、糖尿病の予防と食事の関係性や予防効果を高めるための食事の改善ポイントなどについて解説しました。

食事の栄養素のバランスや食事をとるタイミングが乱れると、食後血糖値の急激な上昇を招き、インスリンの分泌量や作用が低下する原因にもなります。

そのため、食習慣を改善することで、糖尿病の発症を予防する効果が期待できます。

もっとも、糖尿病はさまざまな要因から発症リスクが高まるため、食習慣の改善と並行して、運動量の確保や十分な睡眠をとるなどの生活習慣全体の質を向上させることが予防効果を高める上でも重要です。

体重の増加や運動不足が気になる方や健康診断で血糖値などの異常を指摘された方は、将来的に糖尿病を発症するリスクもあるため、まずは糖尿病内科を受診して精密検査を受けるようにしましょう。