
食べたら眠くなるのは糖尿病のサイン?食後の眠気や糖尿病を予防するポイント
「食後に眠くなるのは糖尿病と関係がある?」
「食後の眠気や糖尿病を予防するための注意点について知りたい」
食事の後に眠気が現れる方の中には、糖尿病との関連について不安や疑問をお持ちの方もいると思います。
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が長く続くことで発症する病気です。
これは、血糖値を下げるはたらきがあるインスリンというホルモンの分泌量が低下したり作用が弱められたりすることで発症のリスクが高まります。
すると、体の中のエネルギー代謝に異常が生じ、さまざまな不調や症状が見られることがあり、そのうちの1つが食後に現れる強い眠気です。
健康な人の場合でも食後に眠気を感じることはあり、食事量や睡眠不足、食事の時間帯など、さまざまな要因が関係します。
一方で、糖尿病や糖尿病予備群では食後血糖値が高くなりやすいため、強い眠気に加えて口渇、多尿、体重減少、疲れやすさなどがある場合には、血糖値を確認しておくことが大切です。
本記事では、食事の後に現れる眠気と糖尿病の関係性や糖尿病が疑われるほかの症状、食後の眠気を予防するためのポイントなどについて解説します。
1.食後に現れる眠気と糖尿病の関係

食後に眠気が生じる場合には、血糖値の急激な上昇とインスリンの乱れが関わっている可能性があります。
食事を通じて炭水化物が体内に取り込まれると、小腸からブドウ糖(グルコース)として血液中に吸収され、血糖値が一時的に上昇します。
血糖値が上昇すると、膵臓のβ細胞からインスリンというホルモンが分泌され、細胞にはたらきかけて血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませます。

すると、上昇していた血糖値が緩やかに低下し、おおむね食後2時間程度で正常な範囲に戻ります。
しかし、糖尿病では食後の血糖値が上昇してから遅れてインスリンが過剰に分泌され、血糖値が正常な範囲を超えて下がってしまう「低血糖」に陥りやすいです。
血糖値が急激に下がってしまうと、脳はエネルギー不足であると判断し、神経細胞の活動や脳の覚醒作用が低下することで、強い眠気が現れることがあります。
もっとも、糖尿病を発症していなくても、炭水化物(糖質)の摂取量が多い食事や欠食が常態化している場合には、食後の血糖値が急激に上昇しやすいです。
食後の高血糖が続くと、体は血糖値を下げるために過剰なインスリンを分泌し、糖尿病を発症していなくても低血糖による眠気や集中力の低下などが見られることがあります。
食後すぐに強い眠気が現れる状態が長く続いている場合には、血糖値の乱高下(血糖値スパイク)が常態化している可能性もある点に注意しましょう。
食習慣などの乱れにより、血糖値が高い状態が続くことで、2型糖尿病の発症リスクが高まることが知られています。
そのため、食後に強い眠気や倦怠感が現れる状態が数か月続いている場合には、糖尿病内科などの専門の医療機関で精密検査を受けることがおすすめです。
なお、糖尿病では食後の眠気に加えて、空腹感を引き起こす場合もあります。
糖尿病と食後すぐに現れる空腹感の関係性やメカニズムについては、以下の記事が参考になります。
2.食後の眠気以外に糖尿病の可能性を疑うサイン

食後の眠気は、健康な人でも起こります。
これは、健康な人でも食後は一時的に血糖値が上昇し、脳の覚醒を促すオレキシンというホルモンの放出が抑えられるからです。
健康な人の場合には、食後2時間程度で血糖値も正常な範囲に戻り、オレキシンの分泌量も正常になり、眠気がなくなることがほとんどです。
しかし、食事から時間が経過しても強い眠気が持続している場合には、インスリンの分泌量や作用に異常が生じている可能性があります。
また、以下のような症状もあわせて見られる場合には、糖尿病を発症している可能性も考えられます。
- 異常な喉の渇きによる水分摂取量の増加
- 頻尿・多尿
- 日中のだるさ・疲れやすさ
- 怪我や傷が治りにくい
なお、これらの症状が見られない場合でも、食事や運動などの生活習慣に乱れがある場合には、2型糖尿病の発症リスクが高まります。
2型糖尿病の発症リスクを高める因子や生活上の注意点については、以下の記事もご覧ください。
(1)異常な喉の渇きによる水分摂取量の増加
糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで、脱水状態に陥りやすいです。
血糖値が非常に高くなると、腎臓でブドウ糖を十分に再吸収できなくなり、尿中にブドウ糖が排泄されます。
尿中のブドウ糖とともに水分も多く排泄される「浸透圧利尿」が起こるため、尿量が増えて脱水傾向となり、強い喉の渇きを感じることがあります。
特に夏場や激しい運動の後などに関わらず、常に喉の渇きを感じて水分補給をしている場合には、血糖値が高い状態が慢性化している可能性もあります。
糖尿病による喉の渇きへの対処法や予防のためのポイントについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
(2)頻尿・多尿
すでに述べたように、高血糖の状態が続くと、血管の内部に水分が取り入れられるようになります。
そうすると、体は血管内部の余分な水分を排出しようとするため、尿の量や回数が増えてしまい、頻尿や多尿になりやすいです。
また、糖尿病を発症すると、高血糖によって腎臓を通る細い血管(毛細血管)が傷つきやすくなり、ブドウ糖やタンパク質などの物質が体に再吸収されずに尿の中に排出されることがあります。
これによって、尿糖や蛋白尿などが見られることもあり、体に必要なエネルギーが再吸収されずに慢性的なエネルギー不足に陥ってしまう場合があることにも注意しましょう。
糖尿病で見られる尿の特徴や腎臓のはたらきとの関係については、以下の記事も参考になります。
(3)日中のだるさ・疲れやすさ
糖尿病で血糖値が著しく高くなると、ブドウ糖を十分に利用できないことや浸透圧利尿による脱水などによって、疲労感やだるさを感じることがあります。
ただし、疲労感は糖尿病以外でも非常によく見られる症状であり、眠気やだるさだけで糖尿病を判断することはできません。
なお、糖尿病を発症していなくても、普段から炭水化物の摂取量が多い食事をしている場合には、食後の急激な血糖値の上昇を招く可能性があります。
食後に血糖値が急激に上昇すると、インスリンが過剰に分泌され、今度は血糖値が急激に低下することで、脳がエネルギー不足に陥り、眠気や疲れやすさが見られる場合もあります。

このような血糖値の急激な上昇と低下が見られる現象を「血糖値スパイク」といい、2型糖尿病を引き起こす要因の1つであるという指摘があります。
血糖値スパイクが生じている場合でも、空腹時血糖値は正常範囲にあるケースも少なくないため、通常の健康診断では見逃されてしまうことも多いです。
健康診断で血糖値の異常を指摘されたことがない場合でも、食後や日中に強い眠気や倦怠感が持続して見られるときには糖尿病内科などを受診して精密検査を受けましょう。
糖尿病が疑われる場合に実施される血液検査の項目や糖尿病と関連する検査項目については、以下の記事で詳しく解説しています。
(4)怪我や傷が治りにくい
高血糖の状態が続くと、血液の流れが悪くなり、白血球などの免疫細胞の活動が低下します。
怪我などによって傷口から細菌が侵入しても、白血球が対応できずに傷が治りにくくなってしまうこともあります。
また、免疫の低下によって抵抗力が弱まり、感染症などにかかりやすくなることにも注意しましょう。
特に糖尿病の患者は、尿路感染症や歯周病などの感染症のリスクが高いことが知られています。
感染症によって炎症が生じると、インスリンのはたらきを妨げるサイトカインなどの物質が放出され、血糖値のコントロールがさらに悪くなってしまいます。
そうすると、細菌などの異物に対する抵抗力がさらに悪化してしまい、悪循環に陥るリスクがあることにも注意しましょう。
血糖値のコントロールが悪い状態を放置すると、傷口からの感染によって細胞が壊死し、壊疽や切断などの重大な影響が生じる可能性が高いです。
糖尿病で壊疽が生じる要因や予防のためのポイントなどについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3.食後の眠気と糖尿病を予防するための食事の注意点

食後に生じる眠気は、血糖値の急激な上昇が関わっている可能性があります。
また、すでに食後の眠気が長期間にわたって生じている場合には、インスリンの分泌量や作用に異常が生じていることも考えられるでしょう。
しかし、食後の高血糖を防ぐことで、食後の眠気や糖尿病を予防できる可能性があります。
具体的には、以下の点を意識することが大切です。
- 炭水化物の摂取量に注意を払う
- タンパク質や食物繊維を多く摂取する
- よく噛んで食事をとる
- 食事のタイミングや食べる順番を意識する
順に見ていきましょう。
(1)炭水化物の摂取量に注意を払う
白米やパンなどの炭水化物に偏った食事が習慣化している場合には、食後高血糖を引き起こしやすく、食後に強い眠気や集中力の低下などが生じやすくなります。
食後に現れる眠気を防ぐためには、普段の食習慣を見直し、炭水化物の摂取量に注意を払うことが大切です。
炭水化物などの糖質の摂取量を一定に保つことで、血糖値の急激な上昇を防ぎ、血糖値を安定させることにつながります。
これによって、インスリンの過剰な分泌も抑え、膵臓に負担がかかることを防ぎ、糖尿病の発症リスクを低減する効果も期待できるでしょう。
なお、食後血糖値が急激に上昇するのを防ぐためには、「GI値」と呼ばれる指標に注目することも有益です。
GI(グリセミック・インデックス)値は、食後血糖値の上昇スピードを数値化したもので、数値が高いほど食後血糖値が上昇しやすくなります。
そのため、GI値が低い食品・食材をとることで、食後血糖値の上昇を緩やかにできる可能性があります。
例えば、低GI値の食品・食材には、以下のものが挙げられます。
- 玄米
- 五穀米
- 雑穀米
- ライ麦パン
- 十割そば
- オートミール など
主食をとる際には、白米やパンに代えて、低GI値のものを選ぶなどの工夫もおすすめです。
(2)タンパク質や食物繊維を多く摂取する
炭水化物の摂取量を一定に保つとともに、タンパク質や食物繊維などの栄養素は意識的にとることを心がけましょう。
タンパク質は吸収に時間がかかり、炭水化物などの糖質と一緒にとることで、食後血糖値が急激に上がるのを防ぐ効果が期待できます。
また、食物繊維にはブドウ糖の吸収を緩やかにするはたらきがあり、血糖値を安定させることにもつながります。
特にサバやアジなどの青魚、大豆や納豆などの植物性タンパク質などを意識的に摂取しましょう。
これらの食品・食材は、タンパク質を多く含み、吸収に時間がかかるほか、満腹感を得やすいです。
そのため、食べすぎや肥満を予防し、糖尿病の発症リスクを抑えることにもつながるでしょう。
食物繊維を含む食品・食材は野菜に多く、以下のようなものがあります。
- 大根
- ごぼう
- にんじん
- ほうれんそう
- キャベツ
- わかめ
- いんげん豆
- アボカド など
良質なタンパク質や食物繊維を意識的に食事にとりいれることで、全体的な栄養素バランスを整え、血糖値を安定させて食後の高血糖や眠気を予防することができるでしょう。
(3)よく噛んで食事をとる
食後血糖値が急激に上昇してしまう原因には、早食いなどの食事のスピードも関係している場合があります。
あまり噛まずに食事をとると、消化・吸収のスピードも早くなり、その結果として血糖値が急激に上がってしまいます。
よく噛んで食事をとることで、消化・吸収のスピードを緩やかにし、食後血糖値の急激な上昇を抑えることができるでしょう。
また、よく噛んで食べると脳の満腹中枢が刺激され、満腹感を得やすくなり、食べすぎを防ぐことができます。
食べすぎによる肥満は2型糖尿病の発症リスクを高める因子としても知られています。
しっかりと噛んで食事をとることは、食後血糖値の上昇を抑えて眠気が生じるのを防ぐだけでなく、肥満による2型糖尿病の発症リスクを抑える効果も期待できるでしょう。
(4)食事のタイミングや食べる順番を意識する
1日の中で欠食をする習慣がある場合には、血糖値が上昇しやすくなります。
これは、欠食した次の食事の際に食べすぎてしまうことに理由があるとされています。
また、空腹の時間が長いと、体は血糖値が下がりすぎるのを防ぐために、インスリンのはたらきを妨げるインスリン拮抗ホルモンと呼ばれる物質を分泌します。
これによって、次の食事の際に血糖値が上昇してもインスリンのはたらきが妨げられ、食後高血糖の状態に陥ってしまうのです。
欠食や空腹時間が長くなることによる血糖値の上昇を防ぐためには、1日に規則正しく3食とることが重要です。
毎日なるべく決まった時間に食事をとることで、血糖値の上昇とインスリン分泌のタイミングを整え、血糖値を安定させる効果が期待できます。
さらに、毎回の食事では、食べる順番も意識しましょう。
具体的には、食物繊維やミネラルを含む食品・食材をとり、次にタンパク質をとり、最後に炭水化物をとることで血糖値の急激な上昇を防ぐことにつながります。
食事をとるタイミングを整え、食べる順番を意識することで、食後高血糖を防ぎ、眠気が生じることや糖尿病の発症を予防できる可能性を高めることができるでしょう。
4.食後の眠気についてよくある質問

糖尿病は、初期段階では目立った症状が現れないこともあり、見逃されてしまうことも多いです。
しかし、食後に眠気や集中力の低下などが頻繁に起こると、仕事や家事にも支障を来してしまい、そこから受診につながるケースも見られます。
食後に現れる眠気について、当院では以下のような質問がよく寄せられます。
- 食後に眠くなる場合にはすでに糖尿病を発症していますか?
- 食事のとり方に注意すれば食後の眠気や糖尿病を予防できますか?
- 食後に眠気が見られる場合に考えられる糖尿病以外の原因はありますか?
体調面で少しでも気になる点があれば、当院にご相談ください。
(1)食後に眠くなる場合にはすでに糖尿病を発症していますか?
食後に眠気が見られるだけでは、糖尿病であるかどうかを正確に診断することは難しいです。
糖尿病は、自覚症状とあわせて、血液検査などの結果も踏まえて総合的に診断されます。
また、健康な人でも食後は血糖値が上昇するため、眠気や集中力の低下などが見られることがあり、食後の眠気が直ちに糖尿病の症状と結びつくわけではありません。
しかし、普段から炭水化物などの糖質の摂取量が多い食事をしていたり、早食いの癖があったりする場合には、食後の血糖値が上昇しやすくなります。
この状態を放置すると、血糖値の急激な上昇と低下による「血糖値スパイク」によって2型糖尿病の発症リスクが高まることに注意が必要です。
特に健康診断などで血糖値が正常値の範囲内であっても、食後の眠気やだるさが常態化している場合には、血糖値スパイクを引き起こしている可能性があります。
血糖値スパイクを放置すると、血管が傷つけられることによる動脈硬化や心筋梗塞などの発症リスクも高まります。
仕事などに集中できないほどの強い眠気や集中力の低下が見られる場合には、なるべく早期に糖尿病内科などを受診しましょう。
(2)食事のとり方に注意すれば食後の眠気や糖尿病を予防できますか?
食習慣を改善すると、食後の血糖値が急激に上昇することを防ぐ効果が期待できますが、糖尿病の予防のためには食事を含めた生活習慣全体を見直すことが大切です。
食習慣に注意しても、取り込まれたブドウ糖が適切に消費されなければ血糖値が高いままとなってしまいます。
そのため、食習慣を見直すとともに、定期的な運動習慣を身につけることも意識しましょう。
具体的には、ウォーキングや散歩などの有酸素運動と筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を組み合わせることが効果的です。
全身の筋肉を動かしながら行う有酸素運動では、ブドウ糖を効率的にエネルギーとして消費でき、血糖値を下げる効果が期待できます。
また、レジスタンス運動に取り組むことで、筋肉量を増やすことにつながります。
インスリンは、ブドウ糖をエネルギー源として細胞に吸収させるはたらきのほかにも、余分なブドウ糖を筋肉に蓄えさせる役割も担っています。
そのため、筋肉量を増やすことで余分なブドウ糖が蓄えられ、血糖値を安定させることにもつながるでしょう。
食習慣の改善による炭水化物(糖質)の摂取量の調整と運動習慣によるブドウ糖の適切な消費によって、持続的に血糖値を安定させることが糖尿病予防のために重要です。
糖尿病を予防するための運動の取り組み方については、以下の記事もあわせてご参照ください。
(3)食後に眠気が見られる場合に考えられる糖尿病以外の原因はありますか?
眠気が生じる原因は、血糖値の乱高下や糖尿病だけとは限りません。
以下のような原因や病気が関わっている可能性があります。
- 睡眠不足
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺機能低下症(橋本病など)
- 貧血
- 飲酒
- 睡眠を促す作用のある薬剤
- 昼食量が多すぎる など
なお、これらの中には糖尿病と関連が指摘されているものもあります。
例えば、睡眠時無呼吸症候群は、肥満によって脂肪が喉や首周りに蓄積すると気道が塞がってしまい、呼吸がしにくくなることで発症するリスクが高まります。
そして、脂肪が蓄積するとインスリンのはたらきを妨げる悪玉アディポサイトカインが放出され、インスリン抵抗性が高まることで2型糖尿病の発症リスクも増大するのです。
食後に見られる眠気や集中力の低下が糖尿病によって引き起こされていない場合であっても、症状を放置することで糖尿病を発症する可能性があることにも注意しましょう。
まとめ
本記事では、食後の眠気と糖尿病の関係性、ほかに糖尿病を疑うべきサイン、食後の眠気と糖尿病を予防するための食事のポイントについて解説しました。
食後の眠気は健康な方にも見られるため、眠気だけで糖尿病を判断することはできません。
一方、糖尿病は初期には自覚症状が乏しいことも多く、口渇、多尿、体重減少、強い疲労感がある場合や肥満・家族歴など糖尿病のリスク因子がある場合には、血糖値やHbA1cを確認することが大切です。
食後血糖値の上昇を抑えるためには、炭水化物に偏らない食事、食物繊維を十分に含む食品の摂取、適切な食事量、食後の軽い運動などを日常生活に取り入れましょう。
食後の強い眠気が続いている方や健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された方は、糖尿病内科などの医療機関にご相談ください。






