
糖尿病に遺伝は関係する?ほかに関連する因子や生活習慣の改善ポイント
「糖尿病は遺伝する病気なのか」
「遺伝以外にどのような点に注意すべきか知りたい」
健康診断などで血糖値が高いことを指摘された方の中には、糖尿病に関してこのような疑問をお持ちの方もいると思います。
糖尿病は、インスリンの分泌不足や作用不足によって、慢性的に血糖値が高くなる病気です。
血液中に吸収されたブドウ糖は、膵臓のβ細胞から放出されるインスリンというホルモンのはたらきによって細胞に吸収され、エネルギー源として消費されます。
しかし、インスリンが放出されなくなったり、細胞へのはたらきが弱められたりすることで、糖尿病を発症してしまうリスクが高いです。
なお、病気の中には発症に遺伝的要因が関わるものもあり、糖尿病の発症に遺伝が関連するかどうかについて不安や疑問をお持ちの方もいると思います。
本記事では、糖尿病と遺伝の関係や糖尿病の発症に関わるほかの因子などについて解説します。
糖尿病を疑うサインや診断の際に実施・参照される主な検査の内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
1.糖尿病と遺伝の関係

糖尿病は遺伝だけで発症する病気ではありません。
しかし、遺伝がどの程度発症に関わるかについては、糖尿病のタイプによって違いが見られます。
- 遺伝と1型糖尿病
- 遺伝と2型糖尿病
それぞれの詳細や遺伝との関連についてご説明します。
なお、1型糖尿病と2型糖尿病の違いについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
(1)遺伝と1型糖尿病
1型糖尿病は、膵臓からインスリンが放出されなくなることで発症するタイプの糖尿病です。
インスリンが放出されなくなる理由として、免疫に異常が生じ、膵臓のβ細胞を異物と判断して攻撃・破壊することが挙げられます。

1型糖尿病は遺伝だけで決まる病気ではありませんが、HLA(ヒト白血球抗原)などの遺伝的な体質(人種などによる差)が発症しやすさに関係しています。
両親がともに1型糖尿病の場合、子が1型糖尿病を発症する率は3~5%、両親のどちらか一方が1型糖尿病の場合には子の発症率は1~2%という研究もあります。
免疫の異常が生じるメカニズムについては解明されていない部分が多く、完全に予防することは困難であるとされています。
(2)遺伝と2型糖尿病
2型糖尿病は、インスリンのはたらきが弱められることによって発症するタイプです。
1型糖尿病とは異なり、インスリンの放出量には問題がないものの、2型糖尿病はインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」と必要な量のインスリンを分泌できなくなる「インスリン分泌不全」が組み合わさって発症します。

そして、2型糖尿病では、主に生活習慣の乱れによってインスリンのはたらきが弱められますが、遺伝的な体質も発症に関わることが知られています。
具体的には、両親がともに2型糖尿病の場合には、子が2型糖尿病を発症する率は40~50%ほどであるという報告があります。
また、両親や兄弟姉妹に2型糖尿病の方がいる場合、発症リスクが高くなりますが、家族歴があっても必ず発症するわけではありません。
なお、日本人は欧米人と比較すると、インスリンの放出量が遺伝的に少ない傾向にあるという研究もあり、軽度の体重増加によってもインスリンの作用と放出量に影響を与える可能性が指摘されています。
このように、2型糖尿病は1型糖尿病と比較すると遺伝による影響が一定の範囲で見られるといえるでしょう。
もっとも、1型糖尿病と同様に、遺伝的要因だけで2型糖尿病が引き起こされるわけではありません。
特にインスリンのはたらきが弱められてしまう最大の要因は肥満にあるともいわれており、ほかにも慢性的な運動不足など、複数の要因が加わることで発症リスクが高まります。
家族歴がある場合でも、食事や運動などの生活習慣に留意することで2型糖尿病の予防につながるといえるでしょう。
2.遺伝以外に糖尿病の発症に関わる因子

糖尿病患者全体の中で、2型糖尿病が占める割合は95%以上といわれています。
また、2型糖尿病は遺伝的要因のほかにも、以下のような要因が複合的に関わることで発症のリスクが高まります。
- 肥満
- 運動不足
- 加齢
- ストレス
逆にいえば、糖尿病の家族歴がある人でも、以下のようなリスク因子を適切に把握することで、発症を抑えることができる可能性があります。
(1)肥満
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、2型糖尿病の重要な危険要因です。
これは、肥満による脂肪の蓄積がインスリンのはたらきを妨げてしまうからです。
細胞に対するインスリンのはたらきが弱められると、細胞はブドウ糖をエネルギー源として吸収・消費することができなくなります。

そうすると、血液中にブドウ糖があふれた状態となり、それが長く続くと糖尿病の発症リスクが高まってしまいます。
ただし、日本人では肥満が目立たなくても発症することがある点には注意が必要です。
肥満が糖尿病の発症リスクを高めるメカニズムやほかの病気との関連性などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)運動不足
運動不足も2型糖尿病の発症リスクを高める因子です。
ブドウ糖は、適度な運動習慣によってエネルギー源として消費されやすくなります。
しかし、運動不足の状態が続くと、血液中のブドウ糖がうまく消費されず、血糖値が上昇する要因にもなります。
また、筋肉は余分なブドウ糖を蓄えるはたらきがありますが、運動不足によって筋肉量が低下がすると、余分なブドウ糖が筋肉に蓄えられずに血液中に残されてしまいます。
これによって、血糖値が上がりやすくなると、2型糖尿病の発症リスクも高まることに注意が必要です。
なお、運動不足が慢性的になることで肥満を引き起こし、インスリンのはたらきも低下してしまうリスクが高まるため、運動不足と肥満は影響を及ぼし合うといえるでしょう。
(3)加齢
加齢による膵臓のはたらきの低下がインスリンの放出量の低下を招くため、2型糖尿病の発症リスクが高いです。
特に40代以降の中年期で発症する傾向が高まることが知られています。
これは、加齢によって筋肉量が低下することで、血糖値が上昇しやすくなることも発症リスクを高める要因の1つとされています。
さらに、動脈硬化や心疾患などの基礎疾患がある場合には、血糖値のコントロールに悪影響を与えることも2型糖尿病の発症リスクとも関連します。
そのため、年齢を重ねるとともに2型糖尿病の発症リスクも高くなり、2型糖尿病を発症した場合には基礎疾患などの影響によって血糖値のコントロールが難しくなる傾向にあります。
高齢者と糖尿病のリスクの関係性や高齢者に見られる症状の特徴などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(4)ストレス
持続的なストレスを受けることによって、2型糖尿病の発症リスクが高まることも知られています。
これは、コルチゾールなどのストレスホルモンと呼ばれる物質が血糖値のコントロールに影響を及ぼし、血糖値が高い状態を引き起こすことに理由があります。

また、ストレスを原因として寝不足などの生活サイクルが崩れ、運動不足や肥満を引き起こすことがあり、複数の原因によって血糖値が上昇しやすくなることにも注意しましょう。
ストレスと糖尿病の関連性については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3.糖尿病を予防するために心がけたい生活習慣

糖尿病の中でも2型糖尿病は、遺伝的要因に複数の生活習慣の乱れが加わることによって、発症リスクが高まってしまいます。
そのため、生活習慣に関するリスク因子を把握した上で、乱れた習慣を改善することが重要です。
具体的には、以下のようなポイントを押さえることで、2型糖尿病を予防する効果が期待できます。
- 食事の摂取カロリーと栄養素のバランスの管理
- 適度な有酸素運動とレジスタンス運動
- 喫煙・飲酒の習慣の見直し
- ストレスの適切な管理
順に見ていきましょう。
(1)食事の摂取カロリーと栄養素のバランスの管理
肥満の予防や解消のためには、食事の習慣を改善する必要があります。
具体的には、1日の摂取カロリーを管理するとともに、栄養素のバランスも整えることが大切です。
肥満は、摂取カロリーが消費カロリーを上回る状態が長く続くことで引き起こされます。
そのため、摂取カロリーの管理に努めることで適正体重を維持する効果も期待できます。
また、これと合わせて、栄養素のバランスを整えることも意識しましょう。
例えば、炭水化物は糖質(ブドウ糖)を多く含むため、過剰に摂取することで血糖値が上昇しやすくなります。
特に白米やパンなどの精製されたものは血糖値を上昇しやすくするため、これらの摂取量を一定に保つことが重要です。
さらに、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維やミネラルなども意識的に食事に取り入れることで、血糖値を安定させることにもつながります。
このような食習慣の改善は、糖尿病の予防はもちろん、糖尿病の治療においても効果的です。
糖尿病の治療と予防に効果的な食習慣の改善ポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)適度な有酸素運動とレジスタンス運動
食事の摂取カロリーと栄養素のバランスを見直すと同時に、運動不足の状態が続いている場合には、適度な運動習慣を身につけることも重要です。
摂取カロリーの管理をしても、適切に消費されなければ肥満を予防・改善する効果は限定的となってしまいます。
そのため、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動に取り組み、カロリー消費を促すようにしましょう。
特に有酸素運動では、ブドウ糖の消費が促され、血糖値を安定させる効果が期待できます。
また、血糖値を安定させるという観点では、腕立て伏せやスクワットなどのレジスタンス運動も組み合わせることが大切です。
これによって筋肉量を増やし、余分なブドウ糖が蓄えられることで、血糖値を安定させることにつながります。
糖尿病の予防と運動の関係や予防効果を高めるためのポイントについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
(3)喫煙・飲酒の習慣の見直し
食習慣と運動習慣のほかにも、喫煙や飲酒の習慣がある場合には、禁煙や節酒に取り組むことで血糖値を改善する効果が期待できます。
タバコに含まれるニコチンには交感神経を刺激し、血糖値を上昇させるはたらきがあるアドレナリンの放出を促します。
そのため、喫煙の習慣がある場合には、血糖値が上昇しやすくなり、2型糖尿病の発症リスクを高めることになります。
また、お酒に含まれるアルコールにも糖質(ブドウ糖)が多く含まれているため、過剰な飲酒によって血糖値が上昇しやすくなります。
さらに、アルコールの過剰摂取は膵臓にも負担をかけることになり、インスリンの放出にも悪影響を及ぼす可能性があります。
血糖値を安定させるためには、禁煙と節酒に取り組むことも意識しましょう。
喫煙によって血糖値が上がりやすくなるメカニズムや喫煙習慣が影響するそのほかの病気などについては、以下の記事もご覧ください。
(4)ストレスの適切な管理
持続的なストレスは血糖値の上昇を招き、2型糖尿病の発症リスクを高めます。
そのため、ストレス管理を意識した生活を送ることも欠かせません。
具体的には、十分な睡眠時間や趣味の時間を確保するなど、自分に合わせた方法でリラックスすることを意識しましょう。
特に日々の中では、入浴の時間を少し長めに確保したり、睡眠の2時間前までにスマホなどの使用を控えたり、少しの工夫で疲れをとることにつながります。
また、休日に体を動かすことでストレスを解消する効果も期待できます。
例えば、軽い散歩やウォーキングに取り組むことは、ストレスを軽減するとともに、運動不足を解消することにもつながります。
ストレスがかかる状況を完全になくすことができない場合でも、うまく軽減するための対処法を見つけることが大切といえるでしょう。
4.糖尿病に関してよくある質問

糖尿病は「国民病」とも呼ばれるようになってきています。
そのため、一般的な関心も高まってきており、当院にも以下のような質問が寄せられることが多いです。
- 糖尿病は必ず遺伝しますか?
- 血糖値がどのくらいになると糖尿病が疑われますか?
- 糖尿病の家族歴がある場合に食事で気をつけるべき点は?
- 糖尿病の家族歴がある場合は運動量を増やす方がいいですか?
それぞれについてご説明します。
(1)糖尿病は必ず遺伝しますか?
2型糖尿病は1型糖尿病と比較すると遺伝の影響が見られるといわれていますが、必ず遺伝するものではありません。
そのため、家族や親族に糖尿病の病歴がある人がいても、過度に心配する必要はないといえます。
しかし、糖尿病そのものは遺伝しないものの、「糖尿病になりやすい体質」は遺伝による影響を受ける可能性があります。
特に2型糖尿病は、食習慣の乱れや運動不足などの生活習慣の積み重ねによって発症リスクが高まるため、不規則な生活習慣を改善することが予防の第一歩です。
(2)血糖値がどのくらいになると糖尿病が疑われますか?
糖尿病は、以下のような血糖値の項目を組み合わせて診断されます。
| 血糖値の項目 | 糖尿病の診断基準 |
| 空腹時血糖値 | 126㎎/dL以上 |
| 食後血糖値 | 200㎎/dL以上 |
| HbA1c(グリコヘモグロビン) | 6.5%以上 |
もっとも、これらの基準は「糖尿病型」と判断する基準であり、原則として別の日の再検査などを含めて総合的に診断されます。
このうち、空腹時血糖値は、通常の健康診断の項目にも含まれているため、健康診断の結果から糖尿病を疑うきっかけにもなるでしょう。
特に糖尿病の家族歴があり、ご自身の健康に心配があるという場合には、30代以降からは食後血糖値やHbA1cなどの項目についても年に1回程度の頻度で検査を受けることがおすすめです。
なお、空腹時血糖値が正常値(110㎎/dL未満)の場合であっても、食後血糖値が高い「血糖値スパイク」によって糖尿病の発症リスクが高まることが知られています。
特に食後に強い眠気や倦怠感などが現れ、それが長く続く場合には、血糖値スパイクの状態に陥っている可能性もあります。
そのため、健康診断の結果だけでなく、原因が分からない症状や気になる不調がある場合には、糖尿病内科などを受診することがおすすめです。
(3)糖尿病の家族歴がある場合に食事で特に気をつけるべき点は?
家族や親族に糖尿病の患者がいることによって、食事の面でさらに注意が必要なことはありません。
重要なことは、栄養素のバランスと摂取カロリーの調整を心がけることです。
特に食後血糖値の急激な上昇を招く炭水化物に偏った食習慣を見直し、食物繊維と良質なタンパク質を意識的にとることがおすすめです。
また、食事の際には、最初に食物繊維をとり、次にタンパク質、最後に炭水化物をとるように「食べ順」を工夫するだけでも食後血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。
遺伝的な因子の有無に関わらず、極端な糖質制限やカロリー制限を実施するよりも、無理のない範囲で少しずつ食習慣を見直し、それを継続していくことが重要です。
なお、糖尿病の予防のために糖質制限食を導入する際の注意点については、以下の記事も参考になります。
(4)糖尿病の家族歴がある場合は運動量を増やす方がいいですか?
家族歴があるからといって、運動量をさらに増やす必要があるわけではありません。
例えば、1週間に150分以上、週に3日以上でジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を行うことが望ましいとされています。
そのため、推奨されている運動量を確保することを目標とするだけでも、十分に予防効果を期待することができるでしょう。
しかし、まとまった運動時間を確保できない場合でも、普段の生活を少し工夫することで、糖尿病の予防につながる可能性もあります。
具体的には、通勤や退勤の際に1つ手前のバス停や駅で降りて自宅まで歩いたり、移動の際に階段を使ったりすることで、運動量を確保することが可能です。
また、有酸素運動に加えて、筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を週に2~3回程度行うことも意識しましょう。
運動習慣があまりない状態で激しい運動に取り組むと、怪我の原因にもなる可能性があり、まずは無理のない範囲で無理のない負荷の運動を始めることが大切です。
まとめ
本記事では、糖尿病と遺伝の関係について解説しました。
糖尿病の中でも、2型糖尿病は遺伝による影響があるとされていますが、肥満や運動不足、加齢などの複数の因子が関わることで発症リスクが高まります。
そのため、家族や親族に糖尿病の人がいても、必ずしも糖尿病を発症するわけではありません。
もっとも、食習慣や運動習慣の乱れによって血糖値の上昇を招くこともあるため、日頃の生活習慣に意識を向けることが糖尿病を予防する上でも大切です。
糖尿病は、血糖値のコントロールを行うことで、症状の悪化や合併症の発症を防ぎ、今までと同じ生活を送ることも可能です。
健康診断などで血糖値が高いことを指摘された場合や肥満などの生活習慣に不安がある場合には、当院の受診をおすすめします。










