
甲状腺機能とめまいの関係は?めまいが見られる可能性がある甲状腺の病気も解説
「甲状腺のはたらきに異常を来すと、めまいが生じるのか」
「めまいが生じる可能性がある甲状腺の病気や対処法は?」
甲状腺は、エネルギー代謝(熱を作り出すことや栄養素の分解・吸収)や心臓・血管のはたらきを維持・調整する役割を持つ甲状腺ホルモンを産生・分泌する器官です。
そして、甲状腺のはたらきに異常が生じると、甲状腺ホルモンの分泌量も変化し、体の中ではさまざまな不調が生じます。
めまいは甲状腺機能に直接関わる症状ではありませんが、甲状腺の病気の中には、めまいやふらつきなどの症状が見られるものもあります。
本記事では、めまいと甲状腺機能の関係やめまいの症状が見られる場合がある甲状腺の病気について解説します。
甲状腺のはたらきと甲状腺ホルモンの産生・分泌に関するメカニズムについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
1.甲状腺の病気がある方にめまいが起こる主な理由

めまいやふらつきなどの症状は、脳や耳の異常に原因がある場合が多いです。
もっとも、神経や血管のはたらきに異常が生じることで、めまいが現れることもあります。
そして、めまいやふらつきなどが生じる場合には、甲状腺のはたらきが関わっている可能性も考えられます。
甲状腺がめまいに関連する理由として、以下のものが挙げられます。
- 心拍数の変動による血流の変化
- 自律神経の異常による血圧の変動
- 合併症による影響
なお、甲状腺機能の異常によって生じる可能性があるほかの症状については、以下の記事が参考になります。
(1)心拍数の変動による血流の変化
甲状腺ホルモンは、心拍数の維持・調整に関わります。
甲状腺のはたらきに異常が生じると、甲状腺ホルモンの分泌量にも変化が生じます。
これによって、心拍数が増加または低下することがあります。
例えば、心拍数の増加に伴って脳への血流が変動することで、ふらつきや立ちくらみなどの症状が現れる場合があります。
また、これとは逆に心拍数が低下することで脳への血流も低下し、めまいなどの症状が現れることがある点にも注意しましょう。
(2)自律神経の異常による血圧の変動
甲状腺ホルモンは、自律神経のはたらきにも関わるホルモンです。
自律神経は、呼吸や心拍数、血圧、体温などを維持・調整するはたらきを担っています。
しかし、甲状腺ホルモンの分泌量が変動すると、自律神経のはたらきにも異常を来してしまいます。
甲状腺ホルモンの量が過剰となってしまうと、自律神経のはたらきが通常よりも高められてしまうのです。
そして、これによって血圧が急激に変動すると、めまいやふらつきの原因となります。
特に甲状腺ホルモンの分泌量が低下している場合には、起き上がったときや立ちあがったときにめまいやふらつきを引き起こす「起立性低血圧」に陥ることが多いです。
また、自律神経の乱れによって迷走神経のはたらきにも異常が生じ、迷走神経反射によるふらつきや立ちくらみ、めまいが生じることもあります。
(3)合併症による影響
甲状腺の機能が低下すると、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
例えば、甲状腺のはたらきが高められる病態では、甲状腺ホルモンの分泌量も過剰になり、心肺機能が高められることで不整脈や心房細動などを合併する場合があります。
これらの合併症の影響で血圧が急激に変動すると、めまいやふらつきなどを引き起こすことがある点に注意しましょう。
また、甲状腺機能に異常が生じると、ビタミンや鉄分などの吸収・分解にも異常が生じ、貧血を引き起こすケースがあります。
これにより、めまいや倦怠感などが見られることもあり、特に甲状腺機能の低下による甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまう場合に起こりやすいです。
このように、甲状腺ホルモンのバランスが崩れて引き起こされた合併症が直接の原因でめまいなどの症状が見られる場合もあるといえます。
2.めまいを引き起こすことがある甲状腺の病気

甲状腺ホルモンは、心肺機能や自律神経のはたらきなどに関わるため、甲状腺ホルモンのバランスが乱れることで、めまいやふらつきなどを引き起こす場合があります。
特に以下のような甲状腺の病気では、めまいなどの症状が現れるケースもあります。
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
それぞれのメカニズムやほかに見られる症状についても解説します。
(1)甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺のはたらきが通常よりも高められることで発症する病気です。
甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで、全身の活動が高められ、以下のような症状が見られることがあります。
- 動悸や息切れ
- 頻脈(脈が早くなる)
- 発汗量の増加
- 手指の震え
- 食欲の増進
- 体重の減少
- 不安感やイライラ
- 下痢や排便回数の増加 など
なお、甲状腺機能亢進症を引き起こす主な原因として、バセドウ病が挙げられます。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンの産生・調節に関わる甲状腺刺激ホルモン(TSH)が結合する受容体に対して抗体(抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体)が作られることで発症します。
作り出された抗体が甲状腺刺激ホルモン受容体を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、上記のような症状が見られます。
めまいはバセドウ病に典型的に見られる症状ではありませんが、心肺機能や自律神経のはたらきの亢進によって血圧の急激な変動などが生じると、めまいなどが現れることがあります。
甲状腺機能亢進症やバセドウ病の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(2)甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺のはたらきが低下することで発症します。
甲状腺機能亢進症とは逆に甲状腺ホルモンの量が低下することで、全身の活動が停滞し、以下のような症状が見られることが多いです。
- 動悸や息切れ
- 徐脈(脈が遅くなる)
- 肌の乾燥・抜け毛
- 食欲の減退
- 体重の増加
- むくみ
- 意欲や記憶力の低下
- 便秘 など
慢性甲状腺炎(橋本病)は、甲状腺機能低下症を引き起こす代表的な病気です。
橋本病は、甲状腺ホルモンを合成する甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)という酵素と甲状腺にあるサイログロブリンという物質に対する抗体が作られ、これらの抗体が甲状腺の組織を攻撃・破壊することで発症します。
甲状腺ホルモンの量が低下することで、上記のような症状のほか、低血圧を原因とするめまいやふらつきなどが見られることもあります。
また、鉄分の不足は甲状腺機能とも関わることが知られており、鉄欠乏性貧血と甲状腺機能低下症は合併しやすいという研究もあります。
そのため、貧血によるめまいや立ちくらみが見られる場合があることにも注意しましょう。
甲状腺機能低下症の詳細や橋本病の症状、治療のポイントなどについては以下の記事も参考になります。
3.甲状腺の病気がある方のめまいへの対処法

上記のような甲状腺の病気に関連してめまいの症状が見られる場合には、以下のような対処で症状が緩和する可能性があります。
- 急な動作や段差に注意する
- 服薬の量やタイミングを守る
- 食事の栄養素のバランスを意識する
- 適度な運動を心がける
すでに甲状腺の病気の診断を受け、治療を行っている場合には、甲状腺ホルモンの数値を安定させることが大切です。
(1)急な動作や段差に注意する
めまいが起こる場合には、普段から急な動作などに注意しましょう。
特に起立性低血圧によってめまいやふらつきが見られると、転倒などのリスクもあります。
また、めまいによって段差を踏み外すこともあるため、めまいや立ちくらみが現れた場合には、直ちに安静の状態を保つなどの対応が必要です。
めまいは脱水によって電解質バランスが崩れることでも生じるケースがあります。
長時間の運動などの後にめまいが生じた場合には、脱水も引き起こしている可能性があるため、水分やミネラルを補給することで緩和されることもあります。
(2)服薬の量やタイミングを守る
甲状腺の病気の治療では、甲状腺ホルモンの数値を安定させるために抗甲状腺薬または甲状腺ホルモン薬が用いられることが多いです。
そして、処方されている薬の量と服用のタイミングをしっかりと守ることが重要です。
特に飲み忘れや自己判断での減量などによって甲状腺ホルモンの濃度が不安定になると、血圧の変動などが生じ、めまいやふらつきなどを誘発する可能性があります。
そのため、薬の用法用量を守って甲状腺ホルモンの数値を安定させることで、症状を改善させる効果が期待できます。
主治医の判断に基づかずに薬の量を自己判断で減らしたり中断したりすると、症状が悪化するだけでなく、重篤な病態に移行するリスクもあります。
甲状腺の病気の治療で用いられる薬の種類や服用の際の注意点などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)食事の栄養素のバランスを意識する
処方されている薬の用法用量を守るとともに、食事の栄養素のバランスを整えることも意識しましょう。
めまいの予防や改善に効果的な栄養素があるわけではないですが、甲状腺の病気に関連してめまいが生じている場合には、甲状腺ホルモンのバランスが不安定になっている可能性が考えられます。
甲状腺のはたらきは、食事の栄養素のバランスが崩れることで異常を来すこともあるため、まずは炭水化物や食物繊維、ミネラル、タンパク質などをバランスよく摂取することを心がけましょう。
また、ヨウ素(ヨード)や亜鉛、セレンなどの栄養素は、甲状腺ホルモンの合成や甲状腺機能の維持などをサポートするはたらきがあるため、適切な量を摂取することがおすすめです。
例えば、ヨウ素(ヨード)は昆布やわかめなどの海藻類に多く含まれており、亜鉛は肉類や魚介類、豆類にも豊富に含まれています。
セレンはナッツ類や全粒穀物(玄米や大麦、ライ麦など)に含まれており、甲状腺ホルモンの作用を助けるはたらきを持っています。
もっとも、どのような栄養素にもいえますが、過剰に摂取することで効果が増強するわけではなく、却って甲状腺機能に悪影響を及ぼす場合もあります。
そのため、適量の摂取にとどめ、食事全体のバランスを意識するようにしましょう。
(4)適度な運動を心がける
甲状腺ホルモンの数値を安定させるためには、適度な運動に取り組むことも大切です。
特に甲状腺機能低下症では全身の代謝活動が停滞している傾向にあるため、適度な運動によって代謝の向上・維持を図ることにもつながります。
特にウォーキングや散歩などの有酸素運動に取り組むことで、基礎代謝の維持・向上が期待でき、甲状腺機能をサポートすることにもつながるでしょう。
もっとも、めまいなどの症状が現れている場合には、無理に運動に取り組むと怪我や不調の原因にもなります。
そのため、体調を優先しながら無理のない範囲で取り組むことが大切です。
また、運動の習慣がない場合には、ストレッチやヨガなどの室内でできるものから始めるのもおすすめです。
なお、持続的なストレスや睡眠不足なども甲状腺のはたらきに悪影響を及ぼす可能性があります。
そのような場合でも、ヨガなどの室内で取り組めるエクササイズを実施することで、リラクゼーション効果が期待でき、ストレスを軽減することにつながるでしょう。
ストレスが甲状腺の機能に与える影響については、以下の記事も参考になります。
4.甲状腺の病気とめまいに関してよくある質問

甲状腺の機能に異常が見られると、体のさまざまなはたらきにも影響を及ぼし、めまいなどの症状が見られることもあります。
しかし、めまいは甲状腺のはたらきとは無関係に生じることもあり、原因を特定するのが難しいケースも少なくありません。
特に当院では甲状腺とめまいの関係について、以下のような質問や相談が寄せられます。
- めまいの症状がある場合には甲状腺の病気が疑われますか?
- 甲状腺の病気で見られるめまいの特徴はなんですか?
- めまいの症状が気になる場合には何科を受診すべきですか?
なお、血流障害や自律神経の異常によるめまいには、糖尿病が関係している可能性もあります。
糖尿病とめまいの関係やメカニズムなどについては、以下の記事も参考になります。
(1)めまいの症状がある場合には甲状腺の病気が疑われますか?
めまいは甲状腺の病気に特有の症状ではありません。
そのため、めまいが見られることが直ちに甲状腺の病気であることに結びつくわけではありません。
めまいは、以下のような原因によっても生じることがあります。
| 主な原因 | メカニズム・詳細 |
| 貧血 | 血液中のヘモグロビンが不足して脳などへの酸素の供給ができなくなることで、めまいや立ちくらみなどが生じる |
| 更年期障害 | 女性ホルモンの減少などによるホルモンバランスの変動によって自律神経のはたらきが乱れ、動悸や息切れ、めまいなどの症状が見られる |
| 突発性難聴 | 片方の耳の聴力が突然低下し、耳が聴こえなくなるほか、めまいや吐き気などの症状が現れる |
| 不整脈 | 心機能の低下や高血圧などの複数の要因によって心臓の拍動リズムが不規則になり、動悸や息切れ、めまいなどが見られる |
| メニエール病 | 聴覚や平衡感覚を司る内耳がむくんでしまうことで、難聴やめまい、吐き気などを引き起こす病気 |
| 前庭神経炎 | 体のバランスに関する情報を脳に伝える前庭神経に炎症が生じることで、激しいめまいやふらつき、吐き気などが見られる |
| 脳梗塞 | 脳の血管が詰まることで脳への酸素供給が滞り、脳細胞が壊死することで激しい頭痛や吐き気、めまい、体の片側の麻痺などが生じる |
甲状腺の病気の場合には、動悸や息切れ、意図しない体重の増減、手指の震え、むくみなどの症状が見られることが多いです。
めまいの症状以外にもこれらの症状が現れている場合には、内分泌科などの受診も検討しましょう。
(2)甲状腺の病気で見られるめまいの特徴はなんですか?
甲状腺機能の異常によって自律神経のはたらきが乱れると、ふわふわと体が浮くような「浮動性めまい」が見られることがあります。
もっとも、自律神経は睡眠不足やストレスなどのほかの要因でも乱れることがあり、浮動性めまいが生じていることが直ちに甲状腺の病気につながるわけではありません。
また、めまいは症状の現れ方によって以下のような分類があります。
| めまいの種類 | 症状の現れ方 |
| 回転性めまい | 自分や周りのものがぐるぐると回るように感じる |
| 浮動性めまい | ふわふわと体が浮くように揺れを感じる |
| 眼前暗黒感 | 立ちあがったときに目の前が暗くなったり意識が遠のいたりする |
ただし、めまいの現れ方だけで原因となる病気や異常を特定することは難しい場合が多いです。
めまいのほかに現れている症状などとも照らし合わせながら適切な医療機関を受診し、検査や治療を受けるようにしましょう。
(3)めまいの症状が気になる場合には何科を受診すべきですか?
めまい以外に見られる症状の有無や内容によっても異なります。
特にめまいのほかに激しい頭痛や嘔吐、体の片側の麻痺、ろれつが回らないなどの症状が見られる場合には、直ちに救急対応が必要です。
めまいとともに耳鳴りが見られる場合には、まずは耳鼻咽喉科などを受診してみるのもよいでしょう。
判断がつかない場合には、一般内科などを受診の上で、現れている症状の内容や症状が続いている期間などを伝え、適切な診療科の紹介を受けるのもおすすめです。
まとめ
本記事では、甲状腺のはたらきとめまいの関係やめまいの症状が現れる場合がある甲状腺の病気などについて解説しました。
甲状腺で産生・分泌される甲状腺ホルモンは、心拍数や血圧などの維持・調整に関わるため、血流や血圧の変動に伴ってめまいやふらつきなどの症状が見られることもあります。
もっとも、めまいの症状だけで甲状腺の病気であるかどうかの判断は難しいです。
また、めまいを引き起こす原因にはさまざまなものがあり、ほかに見られる症状とあわせて判断することが大切です。
特に動悸や息切れ、頻脈または徐脈、手指の震えなどの症状が見られる場合には、甲状腺が関わっている可能性もあるため、当院をはじめとする内分泌科などを受診しましょう。






