
糖尿病とめまいの関係は?ほかの症状やめまいを予防するポイント
「糖尿病ではめまいの症状が現れることがあるのか」
「めまい以外に見られる症状にはどのようなものがある?」
めまいや立ちくらみなどの症状が気になる方の中には、糖尿病との関連についてこのような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
糖尿病のある方にめまいや立ちくらみが起こる場合、治療に伴う低血糖、高血糖による脱水、自律神経障害による血圧低下が関わっていることがあります。
ただし、めまいだけで糖尿病と判断することはできず、耳の病気や不整脈、脳卒中などが原因の場合もあります。
本記事では、糖尿病とめまいの関係、症状が出たときの対処法、受診の目安を解説します。
また、糖尿病によるめまいを予防するためのポイントについても解説しますので、血糖値が気になる方の生活改善の参考となれば幸いです。
なお、突然のめまいに加えて、支えなしでは立てない・歩けない、ろれつが回らない、ものが二重に見える、片側の手足に力が入らない、突然の激しい頭痛などがある場合は、脳卒中の可能性があります。
また、手足の麻痺がなくても脳卒中の可能性は否定できないため、自分で運転せず、119番通報してください。
糖尿病の初期症状や発症リスクが潜むセルフチェック項目については、以下の記事も参考になります。
1.糖尿病がめまいを引き起こす理由

めまいは、耳の奥にある三半規管や脳、血圧に異常が見られる場合に生じやすいです。
具体的には、メニエール病や脳梗塞、貧血などによってめまいが引き起こされる場合があります。
しかし、内耳性の病気や脳血管系の病気だけでなく、糖尿病が原因となってめまいが生じることもあります。
糖尿病によるめまいは、以下のような要因が関わることで生じやすいです。
- 高血糖による脱水
- 自律神経障害による起立性低血圧
- 低血糖による脳のエネルギー不足
メカニズムとあわせてご説明します。
(1)高血糖による脱水
糖尿病は、血糖値が高い状態が慢性的になることで発症する病気です。
血糖値が著しく高くなると、尿に排出されるブドウ糖とともに水分も失われ、尿量が増えることがあります。
水分の補給が追いつかないと脱水になり、血圧の低下によって立ちくらみやふらつきが生じることがあります。
強い喉の渇きや尿量の増加を伴う場合は、血糖値や脱水の状態を医療機関で確認することが大切です。
なお、高血糖の状態を放置すると、次第に血管内部が傷つき、そこにコレステロールなどの物質が沈着することで動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。
特に動脈硬化が脳の血管で生じると、脳梗塞や脳出血などの脳血管系の病気を引き起こし、めまいや麻痺などの症状が現れる可能性がある点にも注意しましょう。
(2)自律神経障害による起立性低血圧
糖尿病の合併症として、血圧や消化管の動きなどを調節する自律神経が障害されることがあります。
血圧の調節がうまくはたらかなくなると、立ちあがった際に血圧が下がる「起立性低血圧」が起こり、立ちくらみやふらつき、ときには失神が生じます。
ただし、起立性低血圧には脱水や薬の影響なども関わります。
糖尿病性自律神経障害と決めつけず、原因を確認することが必要です。
糖尿病の合併症や糖尿病性神経障害については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(3)低血糖による脳のエネルギー不足
血糖値が高い状態が続くと、血流障害や自律神経の異常などによってめまいが起こりやすいです。
しかし、正常な範囲を超えて血糖値が下がった場合にもめまいが生じる可能性があることに注意しましょう。
血液中のブドウ糖は、細胞が活動する際のエネルギー源となります。
正常な範囲を超えて血糖値が下がる「低血糖」の状態に陥ると、脳の活動に必要なブドウ糖を確保することができず、脳のはたらきが低下してめまいが生じる場合があります。
低血糖は、特にインスリン、SU薬、グリニド薬などを使用している方で注意が必要です。
食事量の減少や欠食、運動量の増加、飲酒などがきっかけになることがあります。
すべての糖尿病薬で同じように起こるわけではありません。
低血糖を繰り返す場合は、主治医と治療内容を見直しましょう。
低血糖の状態では、めまいのほかにも動悸や頻脈(脈が早くなる)、手指の震えなどの症状が見られることがあります。
症状を放置すると、眠気や集中力の低下、頭痛などを引き起こし、重症化すると意識障害やけいれんを引き起こし、生命に関わることがあります。
低血糖になりやすい要因や対処法、低血糖を予防するためのポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2.糖尿病性神経障害で見られることがある症状

糖尿病性神経障害では、以下のような症状が見られることがあります。
- 手足の痛みや痺れ
- 足の裏の熱感や冷え性
- 吐き気
- 便秘・下痢
また、自律神経が障害されると、立ちくらみのほかに胃腸の不調が現れる場合もあります。
ただし、これらの症状にはほかの原因もあるため、症状だけで糖尿病性神経障害とは判断できません。
(1)手足の痛みや痺れ
高血糖の状態が続くと、次第に手足の末端にある神経細胞が傷つけられてしまいます。
これにより、神経伝達が正常にされなくなり、痛みや痺れなどの感覚異常が現れることもあります。
特に足の指先から症状が現れはじめることが多く、高血糖の状態が是正されずに放置されると、次第に手の指先にも症状が広がる点にも注意しましょう。
痛みや痺れの感じ方は人によって異なりますが、針で刺すような痛みやビリビリとした痺れが生じるケースがあります。
糖尿病性多発神経障害では、両足の先から左右対称に症状が現れることが多いですが、痺れにはほかの原因もあります。
症状だけで、高血糖が続いていた期間や程度を判断することはできません。
症状が続く場合は医療機関に相談しましょう。
(2)足の裏の熱感や冷え性
糖尿病性神経障害では、足が焼けるように熱く感じたり、冷たく感じたりすることがあります。
一方、実際に足の血流が低下して冷たくなる場合もあり、両者は区別して評価する必要があります。
季節に関係なく症状があることだけで、糖尿病や血糖コントロールの良否は判断できません。
症状が続く場合は、神経や血流の状態を確認するためにも医療機関を受診しましょう。
糖尿病による足の裏の熱感やそのほかの症状については、以下の記事もご参照ください。
(3)吐き気
自律神経障害によって胃のはたらきが低下すると、食後の胃もたれ、少量で満腹になる感じ、吐き気や嘔吐などが生じることがあります。
ただし、糖尿病薬の影響やほかの胃腸の病気でも同様の症状が現れます。
症状が続く場合は、原因を確認することが大切です。
(4)便秘・下痢
自律神経障害によって腸のはたらきや排便機能が乱れると、便秘や下痢が生じることがあります。
ただし、食事内容、薬の副作用、ほかの消化器疾患なども原因になります。
血糖値の管理に加え、原因に応じた治療が必要です。
薬が関係している可能性があっても、自己判断で中止・減量せず、主治医に相談してください。
糖尿病の治療薬の種類や副作用、服用の際の注意点などについては、以下の記事が参考になります。
3.めまいが起きたときの対処

めまいが起きたら、転倒を防ぐために安全な場所で座るか横になり、運転や運動を中止することが重要です。
インスリンなどを使用している方は、測定できる場合には血糖値を確認します。
低血糖が疑われる場合は、主治医から指示された方法でブドウ糖を摂取してください。
意識がはっきりしない場合や飲み込めない場合は、口から飲食物をとらず、119番通報することが重要です。
また、嘔吐が続いて水分がとれない、深く速い呼吸をしている、意識がぼんやりしている場合も、救急受診が必要です。
糖尿病性ケトアシドーシスなどの急性合併症が隠れている場合があります。
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン不足によって脂肪の分解が進み、肝臓でケトン体が過剰に作られることで起こります。
なお、糖尿病薬の中でもSGLT2阻害薬を使用している場合などでは、血糖値が著しく高くないケースでも起こることがあります。
4.糖尿病によるめまいを予防するためのポイント

糖尿病を発症すると、高血糖や自律神経の異常などにより、めまいや立ちくらみなどの症状が現れることがあります。
糖尿病によって生じるめまいは、血糖値のコントロールが悪いことに理由があります。
そのため、以下のポイントを意識することで、めまいが生じることを予防できる可能性があります。
- 規則正しい食習慣を意識する
- 定期的な運動量を確保する
- こまめな水分補給を心がける
- 血糖値の変化を把握する
血糖値を安定させることは、糖尿病によるめまいだけでなく、糖尿病の発症自体を予防する効果が期待できる。
健康診断で血糖値が高いことを指摘された方や体重の増加、肥満体型などが気になる方も、これらを意識しながら生活習慣を整えていきましょう。
(1)規則正しい食習慣を意識する
低血糖を起こしやすい薬を使用している方は、欠食や急な食事量の減少に注意が必要です。
食事をとれないときや食事の時間が大きく変わるときの対応をあらかじめ主治医に確認しておきましょう。
食事量や薬の量を自己判断で大きく変更しないことが大切です。
(2)定期的な運動量を確保する
食習慣とあわせて、運動習慣を見直すことも大切です。
定期的に運動に取り組むことで、ブドウ糖の消費を促し、血糖値の安定につながりやすいです。
日頃の運動は血糖管理に役立ちますが、めまいがあるときには無理に行わないことが重要です。
インスリンなどを使用している方では、運動中だけでなく運動後にも低血糖が起こる場合があります。
運動の種類や量、血糖測定や補食の必要性について、主治医と相談しましょう。
糖尿病の予防に運動が効果的な理由や予防のために運動に取り組む際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)こまめな水分補給を心がける
脱水を防ぐため、日常の水分補給には水や無糖のお茶を選びましょう。
糖分の多い飲料の大量摂取は、高血糖を悪化させる場合があります。
ただし、低血糖が起きたときは糖の補給が必要であり、通常の水分補給とは対応が異なります。
心不全や腎不全などで水分制限を指示されている方は、その指示に従ってください。
強い喉の渇きや多尿が続く場合は、水分補給だけで様子を見ず、医療機関に相談しましょう。
(4)血糖値の変化を把握する
普段から血糖値の変化に注意することも大切です。
血糖値が上昇しても目立った自覚症状がすぐに現れるわけではありません。
そのため、生活習慣の乱れなどによって血糖値が上昇していても、本人も気づきにくいケースが多いです。
しかし、血糖値が高い状態を放置することで糖尿病の発症リスクが高まり、めまいをはじめとするさまざまな症状を引き起こす可能性も高まります。
普段から健康診断などを定期的に受け、血糖値の変化を把握することが糖尿病の早期発見にもつながります。
なお、糖尿病は複数の血液検査の項目や自覚症状の内容などを総合的に評価した上で診断が下されます。
糖尿病の可能性を疑うきっかけとなる主な血液検査の項目や基準については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
5.糖尿病とめまいについてよくある質問

めまいは一般的に知られている糖尿病の代表的な症状ではないため、本人も見過ごしてしまう場合があります。
また、めまいは糖尿病以外の病気や原因によっても引き起こされることが多く、当院には糖尿病とめまいの関係について、以下のような質問が寄せられます。
- 糖尿病によるめまいの特徴は何ですか?
- 糖尿病以外でめまいの原因になる病気はありますか?
ご自身に現れている不調や症状に不安がある場合には、当院をはじめとする糖尿病内科などを受診して精密検査を受けることをおすすめします。
(1)糖尿病によるめまいの特徴は何ですか?
ふわふわと体が浮くような「浮動性めまい」や立ちくらみが現れることがあります。
糖尿病によって引き起こされるめまいは、血糖値のコントロールが悪いときに起こりやすいです。
また、めまいだけでなく、発汗量の異常や便秘、吐き気などが見られる場合には、糖尿病の合併症である糖尿病性神経障害が進行している可能性も考えられます。
特に異常な喉の渇きや多尿、日中の強い疲労感などの症状が数か月にわたって現れている場合には、血糖値のコントロールが悪くなっている可能性が高いです。
原因の分からないめまいなどの症状に悩まされている場合には、なるべく早期に糖尿病内科などを受診して精密検査を受けましょう。
(2)糖尿病以外でめまいの原因になる病気はありますか?
めまいは、脳や耳の器官の異常によっても引き起こされるため、以下のような病気が関わっている可能性もあります。
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
- 前庭神経炎
- メニエール病
- 突発性難聴
- 不整脈 など
内耳の器官である三半規管や前庭神経に異常がある場合には、視界がぐるぐると回るような「回転性めまい」が生じることが多いです。
また、脳卒中では脳の血管にダメージが生じることで中枢神経のはたらきに異常を来たし、めまいのほかに頭痛や吐き気、ものが二重に見えるなどの症状を伴うこともあります。
特に突然の歩行困難、ろれつの回りにくさ、片側の麻痺などを伴う場合は、119番通報してください。
突然の難聴を伴う場合は、早急に耳鼻咽喉科を受診しましょう。
原因が分からないめまいが続く場合には、かかりつけ医や内科で相談し、必要に応じて専門の診療科で検査を受けてください。
まとめ
糖尿病のある方のめまいには、低血糖、高血糖に伴う脱水、自律神経障害による起立性低血圧などが関わる場合があります。
一方、耳の病気や脳卒中など、糖尿病とは別の原因も考える必要があります。
血糖値を下げればすべてのめまいが改善するわけではありません。
症状が起きた状況を確認し、原因に応じた対処を行うことが大切です。
突然の歩行困難や麻痺、意識障害などがある場合には、救急対応を優先するようにしましょう。







