睡眠時無呼吸症候群の治療法は?治療効果を高めるポイントも解説

「睡眠時無呼吸症候群の治療法にはどんなものがある?」
「治療を行うメリットは?」

睡眠中のいびきや息苦しさなどが気になる方の中には、睡眠時無呼吸症候群の治療についてこのような疑問をお持ちの方もいると思います。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が浅くなったり止まったりする病気です。

これによって、睡眠中のいびきや酸欠状態による中途覚醒などが起こり、睡眠の質が低下してしまいます。

また、高血圧や心筋梗塞などの合併症を引き起こすリスクも高まるため、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、なるべく早期に医療機関を受診して治療を開始することが大切です。

もっとも、現れている症状や重症度によって、適切な治療法は異なります。

本記事では、睡眠時無呼吸症候群の治療法の種類や特徴、治療効果を高めるためのポイントなどについて解説します。

睡眠時無呼吸症候群の可能性が疑われる症状のセルフチェック項目や検査内容については、以下の記事もご覧ください。

1.睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠検査で1時間あたりの無呼吸回数(AHI)が5以上あり、日中の眠気・いびき・睡眠中の呼吸の停止などの症状や関連する合併症がある場合、またはAHIが15以上の場合に診断・治療を検討します。

無呼吸は、呼吸が10秒以上にわたって止まることを指します。

睡眠時無呼吸症候群は、AHIによって、以下のような基準で重症度が評価されます。

AHIの数値 重症度の判定
5~15未満 軽症
15~30未満 中等症
30以上 重症

そして、重症度に応じて、以下のような治療法が単独または組み合わせて行われます。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

  1. 食事・運動療法
  2. 口腔内装置(マウスピース)療法
  3. CPAP療法
  4. 舌下神経電気刺激療法
  5. 外科的療法

なお、睡眠時無呼吸症候群は、発症メカニズムの違いによって、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)に分類することができます。

このうち、CSASは脳にある呼吸中枢のはたらきに異常が生じることで引き起こされ、脳卒中や心不全などに合併することが多いです。

そのため、CSASでは原因となる脳卒中などの治療によって症状の改善を目指すことが一般的であり、以下のような治療は主にOSASで行われることに注意しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の分類については、以下の記事もあわせてご覧ください。

(1)食事・運動療法

睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスク因子として、食習慣などの乱れによる肥満が挙げられます。

これは、肥満によって首周りや舌に脂肪が蓄積し、上気道が狭くなってしまうことが原因です。

そのため、肥満の傾向がある場合には、まずは食事と運動の習慣を改善させることが重要です。

特に症状が比較的軽度の場合には、食事と運動などの生活習慣を改善することで、いびきなどの症状を大幅に緩和できる可能性があります。

もっとも、一時的に減量などができたとしても、それを継続できなければ体重の増加による脂肪の蓄積などで症状が再び生じることもあります。

また、上気道などの圧迫の程度が大きい場合や症状が中等以上の場合には、生活習慣の改善だけでは十分な治療効果が得られないケースも少なくありません。

食事や運動などの生活習慣の改善だけでは十分ではない場合には、食事と運動の改善と並行して、次に述べるような治療法が組み合わされます。

(2)口腔内装置(マウスピース)療法

口腔内装置(マウスピース)を用いて、下あごを前に出した状態で固定する治療法です。

これによって、上気道を広げることができ、睡眠時のいびきや呼吸が止まってしまうことを防ぐ効果が期待できます。

特に肥満を伴わない軽症から中等症の場合やいびきが主な症状である場合には、マウスピースを用いた治療で効果を期待しやすいとされています。

また、いびきなどが現れている場合には、鼻から空気を取り込むことができず、口呼吸が中心となっていることが多いです。

そうすると、起床した際に口や喉の渇きを感じる場合もあります。

マウスピースを用いた治療を行うと口呼吸がしにくくなり、上気道の広がりによって鼻呼吸の習慣が身につき、口の渇きなどの症状を改善する効果も期待できるでしょう。

もっとも、虫歯があるなどの口腔内の状態によってはマウスピースによる治療を行うことができないケースもあります。

また、重症度が高い場合には十分な効果が期待できないことも多く、そのような場合には次に解説するCPAP療法が行われることが一般的です。

(3)CPAP療法

CPAP療法は、鼻に装着したマスクに機械で空気を送り込むことで上気道を広げて呼吸を促す治療法です。

CPAPは、「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、「持続陽圧呼吸療法」とも呼ばれています。

主に中等症や重症の症例で行われる治療法であり、直接空気を送り込んで上気道を広げることから、治療効果も高いとされています。

もっとも、睡眠の際に毎回マスクを装着する必要があり、慣れないうちはマスクによるかゆみや喉の乾燥などを感じやすいです。

また、CPAP治療はあくまで空気を送り込むことで上気道を広げているのであって、根本的な治療を行っているわけではありません。

そのため、上気道が狭くなっている原因が肥満による脂肪の蓄積にある場合には、生活習慣を改善しなければ十分な効果を期待できない点にも注意しましょう。

しかし、肥満が原因に関わっている場合でも、CPAPを適切に使用すれば睡眠中の無呼吸を抑える効果が期待できるため、まずは医師に相談することが大切です。

肥満がある場合は、減量や生活習慣の改善を併用することで、より根本的な改善や治療効果の維持につながります。

(4)舌下神経電気刺激療法

舌下神経電気刺激療法は、外科手術によって鎖骨下にパルスジェネレータを埋め込み、微弱な電気を舌下神経に送る治療法です。

舌下神経への電気刺激は、睡眠中の呼吸に同期して行われ、舌の筋肉を収縮させて喉に落ち込むことを防ぐため、空気の通り道が確保されて呼吸がしやすくなります。

主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療で実施され、2021年6月より保険適用が認められています。

具体的には、以下のすべての条件を満たす場合が手術適応です。

舌下神経電気刺激療法の手術適応の条件

  • AHIが20以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
  • CPAP療法で十分な治療効果が得られない
  • 18歳以上
  • BMI指数が30未満
  • 扁桃腺肥大などの重大な解剖学的異常がない
  • 薬物睡眠下の内視鏡検査で軟口蓋に同心性虚脱が見られない
  • 中枢性無呼吸の割合が25%以下

CPAP療法が適さない、または継続が困難である場合に検討される治療法といえます。

CPAP療法と同様に、睡眠中のいびきや無呼吸を緩和させる効果が認められており、また主観的な眠気の改善については、CPAP療法よりも効果的であるという報告もあります。

もっとも、CPAP療法とは異なり、パルスジェネレータの埋め込みに手術が必要となるため、身体的な負担が生じる点がデメリットです。

また、舌下神経電気刺激療法はCPAP療法と比較すると保険適用の条件が厳しく、実施できる医療機関が限られていることにも注意しましょう。

(5)外科的療法

上気道などが狭くなる原因には、肥満による脂肪の蓄積以外にも、顎が小さいなどの解剖学的な要因も考えられます。

そのため、生活習慣の改善とCPAP療法の組み合わせによっても症状の改善が期待できない場合には、外科的手術を検討するケースもあります。

例えば、以下のような症例で外科的療法が検討されることが多いです。

外科的療法が検討される主なケース

  • 口蓋扁桃が大きい
  • 上咽頭のアデノイドが大きい
  • 鼻の中の骨が曲がっている
  • 顎の骨が小さい など

肥大した部分を切除すると、上気道などが狭くなっていることを解消でき、睡眠中のいびきや睡眠の質の低下による日中の眠気などの症状が改善する可能性があります。

その意味では、CPAP療法と比較して、原因となっている解剖学的な問題を改善できる場合には、症状の大きな改善が期待できることがあります。

もっとも、手術を行った後でも、生活習慣の乱れなどによって切除した部分が再び肥大することがあります。

これによって上気道などが再び狭くなってしまうと、症状が再発することもあるため、注意が必要です。

また、肥満などによって脂肪が蓄積して喉や上気道が狭くなってしまうこともあるため、外科的療法を行った場合でも、生活習慣の改善を続けることが最も重要といえます。

2.睡眠時無呼吸症候群を治療すべき理由

睡眠時無呼吸症候群は、現れている症状や症状の進行度合いに応じて適切な治療を行うことが重要です。

特に早期の段階で治療を開始することで、以下のようなメリットがあります。

睡眠時無呼吸症候群を治療すべき理由

  1. 睡眠時のいびきや息苦しさの改善につながる
  2. 睡眠の質が向上する
  3. 合併症のリスクを抑えることができる

順に見ていきましょう。

(1)睡眠時のいびきや息苦しさの改善につながる

睡眠時無呼吸症候群の治療に取り組むことで、いびきや息苦しさなどの症状を改善させることができます。

これらの症状は、本人だけでなく、周りの家族などにも影響を与えていることも多いです。

しかし、治療に取り組まなければいつまでも改善されず、睡眠中や起床時の不快感なども残ったままとなります。

症状の重症度に応じた適切な治療を受けることで、本人はもちろん、家族などの周りの人への影響も抑えることが可能です。

(2)睡眠の質が向上する

睡眠中のいびきや無呼吸などで酸素が体の中にうまく取り込まれなくなってしまいます。

すると、体は呼吸を再開させようとして自律神経のはたらきを高め、睡眠中の途中で何度も覚醒する原因になります。

これによって睡眠時間が分断されると、睡眠の質が低下してしまいます。

睡眠の質が低下すると、起床時に倦怠感があったり、日中に強い眠気や疲労感が現れたりすることも多いです。

しかし、睡眠時無呼吸症候群の治療に早期に取り組むことで、いびきや無呼吸などの症状を抑え、睡眠の質を向上させる効果も期待できます。

日中の強い眠気や慢性的な倦怠感は、日中の活動に大きな影響を与え、仕事や日常生活に支障を来すことも少なくありません。

早期に治療を開始することで、強い眠気や疲れやすさなどを改善することにもつながるでしょう。

(3)合併症のリスクを抑えることができる

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中のいびきや日中の強い眠気だけでなく、さまざまな不調を引き起こす原因にもなります。

これは、低酸素状態に陥ることで、自律神経のはたらきが活発になり、心拍数や血圧が上昇するからです。

そして、睡眠時無呼吸症候群は治療せずに放置することで、以下のような病気のリスクが高まることに注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群の主な合併症

  • 高血圧
  • 動脈硬化
  • 不整脈
  • 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  • 脳卒中(脳出血、脳梗塞など)
  • 糖尿病 など

これらの病気は、生命にも関わるリスクが高いです。

また、睡眠時無呼吸症候群の重症度が高いほど、これらの病気の発症リスクも高まることが報告されています。

早期に治療を開始することで、睡眠時無呼吸症候群が悪化することを防ぐとともに、これらの病気を合併するリスクも抑えることにつながります。

例えば、肥満体型の睡眠時無呼吸症候群の患者は、体重の5~10%程度の減量をすることで、いびきなどの症状が改善することが知られています。

CPAP療法は、日中の眠気や睡眠の質の改善、高血圧を合併する方の血圧改善に役立つことがあります。

一方で、心筋梗塞や脳卒中などの予防効果については研究によって差があり、「確実に予防できる」とまでは言い切れません。

ただ、中等症以上で未治療のまま放置された場合には、8年後に約40%が死亡に至ったという報告もあるため、早期に治療を行うことが望ましいでしょう。

3.治療効果を高めるためのポイント

症状の内容や重症度合いによって、上で述べたような治療法が行われます。

しかし、睡眠時無呼吸症候群の治療効果を高めるためには、普段の生活習慣を見直し、改善を続けることが重要です。

具体的には、以下のような点を意識するようにしましょう。

治療効果を高めるためのポイント

  1. 食事の栄養バランスやタイミングを整える
  2. 適度な運動を継続的に行う
  3. 睡眠時の姿勢に注意を払う
  4. 喫煙や飲酒の習慣を改める
  5. 定期的に通院する

それぞれについて解説します。

(1)食事の栄養バランスやタイミングを整える

肥満による首周りや舌の付け根などへの脂肪の蓄積が原因となっている場合には、食習慣の改善による減量が必要不可欠です。

もっとも、体重を減らすために極端な食事制限を行うと、ストレスや栄養素の偏りによって体調を崩したり却って体重が増加したりする原因にもなります。

そのため、栄養素のバランスを整えた食事を規則正しくとることを意識しましょう。

具体的には、肥満の原因となる糖質や脂質の摂取量を抑え、食物繊維やミネラル、タンパク質などを意識的に取り入れることが大切です。

また、1日のうちに欠食や間食など、食事のサイクルに乱れが生じると肥満を引き起こす要因にもなるため、1日3食欠かさずにとるようにしましょう。

(2)適度な運動を継続的に行う

減量を目指す場合には、食事の栄養素のバランスやタイミングを整えるだけでなく、適度な運動習慣を組み合わせることも重要です。

特にジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼の効果が期待でき、食習慣の改善と組み合わせることで適正体重への減量・維持につながります。

また、有酸素運動と合わせて、筋力トレーニングなどのレジスタンス運動に取り組むこともおすすめです。

筋肉量を増やすことで、基礎代謝が向上し、脂肪の燃焼をさらに促す効果が期待できます。

もっとも、激しい運動を行うよりも、無理のない範囲で少しずつ取り組むことが大切です。

まずは1日に15分程度の散歩やウォーキングを週に2~3回程度行うことを目標にして、体が慣れてきたときに運動量や頻度を増やすなどの調整が欠かせません。

(3)睡眠時の姿勢に注意を払う

いびきや無呼吸は、睡眠時の姿勢によっても影響を受けます。

例えば、仰向けの姿勢で寝ている場合には、重力で舌の付け根が落ち込んでしまい、空気の通り道が狭くなることでいびきが生じる原因にもなります。

そのため、横向きの姿勢で就寝するなどの工夫も大切です。

睡眠時の姿勢を変えるだけでも、いびきなどの症状を緩和させることにつながる可能性があります。

また、必要に応じて横向きの姿勢を維持するために背中にクッションを置いたり、気道を確保するために枕の高さを調整したり、睡眠環境を整えることも意識してみましょう。

(4)喫煙や飲酒の習慣を改める

喫煙や飲酒の習慣がある場合には、治療中には禁煙と節酒を心がけることが重要です。

タバコにはさまざまな化学物質が含まれており、動脈硬化や脳卒中、がんの発症リスクを高めることが知られていますが、睡眠時無呼吸症候群にも影響を与えます。

これは、タバコの煙を吸い込むことによって、扁桃腺などに炎症が生じ、上気道などの空気の通り道を圧迫することに理由があります。

また、アルコールには筋肉を弛緩させるはたらきがあり、過度な飲酒によって喉の周りの筋肉が弛むと、舌根沈下によって上気道が狭くなってしまう原因にもなります。

そのため、治療の効果を高めるためには、喫煙や飲酒の習慣も改める必要があることに注意しましょう。

なお、無理なく禁煙を行うためには、禁煙外来を受診し、治療を受けることがおすすめです。

喫煙習慣によって発症・悪化リスクが高まる病気や禁煙外来を受診する流れについては、以下の記事が参考になります。

(5)定期的に通院する

睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の見直しや体重管理などによって症状を改善することはできますが、完治が難しい病気です。

また、CPAP療法などを行っていても、生活習慣が十分に改善されていない場合には、治療効果を高めることが難しくなります。

そのため、睡眠時無呼吸症候群の治療が始まった後も定期的に通院することが重要です。

特にCPAPによる治療が始まった直後は、1か月に1回の頻度で通院し、機器の使用状況や症状の変化などについて主治医に報告し、適宜アドバイスなどを受けるようにしましょう。

機器を適切に使用しているにも関わらず、睡眠中の覚醒や日中の眠気などの症状に改善が見られない場合には、別の原因が潜んでいる可能性もあります。

定期的に通院することで、症状が改善しない場合や別の症状が現れるようになった場合にも、適切な治療や対処ができるようになります。

まとめ

本記事では、睡眠時無呼吸症候群の治療法の種類や特徴、治療効果を高めるためのポイントなどについて解説しました。

現れている症状や原因、重症度などによって選択される治療法はさまざまですが、生活習慣の改善などと合わせて治療を進めることが大切です。

未治療のまま放置することで、合併症のリスクも高まり、生命に関わる可能性もあります。

そのため、いびきや呼吸が止まっていることを指摘された場合や肥満・血圧が高い場合には、まずは睡眠外来などを受診することがおすすめです。