
喉の違和感は甲状腺に原因がある?主な甲状腺の病気についても解説
「喉に腫れや圧迫感がある場合には甲状腺の病気を疑うべき?」
「甲状腺の病気で喉に違和感が現れるものにはどんな病気があるのか知りたい」
「喉の違和感がある場合に受診すべき診療科はどこ?」
喉の腫れやしこりなどの違和感がある方の中には、甲状腺の病気について、このような疑問や悩みをお持ちの方もいると思います。
甲状腺は、喉仏の下あたりに位置する器官です。
甲状腺では甲状腺ホルモンという物質が作られています。
具体的には、体の代謝(エネルギー消費・熱を作るはたらき)や心臓・血管・腸のはたらきなどを調整し、全身の機能を維持することに関わる重要なホルモンです。
これによって、体の中の細胞の活動や成長、基礎代謝の維持・調整などのはたらきを助けているのです。
甲状腺は、首の深い部分にあるため、通常であればあまり触れることはできません。
しかし、甲状腺に何らかの異常が生じた場合には、甲状腺自体が腫れたり膨らんだりすることがあります。
これによって、喉や首に違和感が生じることがあるため、注意が必要です。
本記事では、甲状腺の病気で見られる喉の違和感の特徴や具体的な甲状腺の病気について解説します。
なお、甲状腺ホルモンの役割や放出のメカニズムなどについては、以下の記事も参考になります。
1.甲状腺の病気で見られる主な喉の違和感

甲状腺は首の前側の深い部分にあり、気管に近いところに位置しています。
そのため、甲状腺に異常が生じると、喉や首に違和感が見られることがあります。
具体的には、以下のようなものです。
- 首の前側の腫れや結節(しこり)
- 飲み込みにくさや喉の圧迫感
- 声のかすれや出にくさ
順に見ていきましょう。
(1)首の前側の腫れや結節(しこり)
甲状腺に異常が生じることで、甲状腺の一部に結節(しこり)ができたり、甲状腺全体が腫れたりすることがあります。
これによって、首の前側に腫れやしこりが見られることがあります。
腫れやしこりができる原因にはさまざまなものがあり、甲状腺全体が腫れる場合には炎症が生じている可能性があります。
また、甲状腺の一部にしこりができている場合には、腫瘍である可能性もあり、その原因が甲状腺がんであるケースもあるため、注意が必要です。
なお、炎症が軽度である場合や腫瘍が小さい場合には、本人も気づかないことが多いといえます。
しかし、放置することで、次第に腫れやしこりが大きくなり、次に述べるような症状が現れることがある点にも注意しましょう。
(2)飲み込みにくさや喉の圧迫感
甲状腺の腫れやしこりが大きくなると、次第に周りの組織を圧迫することになります。
特に甲状腺は首の深い部分にあり、近くには気管や食道などがあります。
そのため、喉の圧迫感やものを飲み込みにくくなるなどの症状が現れるケースもあるため、注意が必要です。
なお、甲状腺に炎症が発生することで腫れやしこりが見られる場合には、喉に痛みを伴うこともあります。
これによって、風邪などの症状と間違われてしまい、発見が遅れるケースもあることにも注意が必要です。
(3)声のかすれや出にくさ
甲状腺の腫れやしこりが大きくなると、喉を通っている反回神経という神経が圧迫されることがあります。
反回神経とは、声を出すときやものを飲み込むときに声帯に対して指令を出す神経です。
そのため、反回神経が圧迫されることによって声がかすれたり出にくくなったりすることがあります。
声のかすれが長引く場合は、甲状腺のしこりによる神経への影響が原因のこともありますが、喉頭炎など別の原因もあります。
2週間以上続く場合や首のしこりを伴う場合には、耳鼻咽喉科や甲状腺専門医がいる医療機関で評価を受けましょう。
2.喉の違和感がある場合に考えられる甲状腺の病気

上記のような喉の違和感が見られる場合には、甲状腺の病気の可能性があります。
特に喉の腫れやしこり、圧迫感などが数か月にわたって続いている場合には、注意が必要です。
具体的には、以下のような病気の可能性があるといえます。
- バセドウ病
- 慢性甲状腺炎(橋本病)
- 亜急性甲状腺炎
- 甲状腺腫瘍
なお、甲状腺では甲状腺ホルモンが作られているため、甲状腺の病気になるとホルモンバランスが崩れることも多いです。
そのため、これらの病気の場合には、喉の違和感以外にも症状が現れることもあります。
それぞれの病気で見られる症状についても合わせてご説明します。
(1)バセドウ病
バセドウ病は、自己免疫によって甲状腺ホルモンが通常よりも過剰に作られることによって引き起こされる病気です。
免疫機能は、通常であればウイルスや細菌などの外から侵入してきた異物に対してはたらき、異物に対する抗体を作り出すことで攻撃・排除します。
しかし、バセドウ病では甲状腺の細胞にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体という器官を異物と認識してしまい、この受容体に対する抗体が作られてしまいます。
そして、この抗体が甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を刺激し続けることにより、血液中に甲状腺ホルモンが大量に放出されてしまうのです。
これによって、体の機能が通常よりも高められてしまい、以下のような症状が現れることが多いです。

バセドウ病の場合には、「びまん性甲状腺腫」と呼ばれる甲状腺全体の腫れが見られる点に特徴があります。
また、甲状腺の腫れに触れると弾力がある腫れ方をしていることも特徴といえるでしょう。
バセドウ病は特に女性に発症しやすいことが知られており、20~30代に多いです。
高齢者にも発症することがありますが、その場合には甲状腺の腫れが目立たないことも多く、動悸や息切れなどの症状から心血管系の病気を疑って検査を受けた際に判明するケースもあります。
なお、バセドウ病をはじめ、甲状腺機能の異常によって甲状腺ホルモンの量が過剰になる病気を甲状腺機能亢進症といいます。
甲状腺機能亢進症の治療法や治療の際の注意点などについては、以下の記事も合わせてご覧ください。
(2)慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性甲状腺炎は、橋本病とも呼ばれる病気です。
橋本病もバセドウ病と同じく自己免疫が関わる病気ですが、バセドウ病とは異なり、甲状腺ホルモン自体に対して自己抗体が作られてしまい、甲状腺の細胞を破壊してしまいます。
これによって、甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの量が減少し、体の機能が停滞することで以下のような症状が見られます。

橋本病でも、甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」が見られることが多いです。
もっとも、バセドウ病とは異なり、腫れを触るとゴツゴツとした硬い腫れ方をしていることが特徴といえます。
また、気管などが圧迫されることによる喉の違和感などが生じるケースもあります。
バセドウ病と同様に女性に発症しやすいことが知られていますが、橋本病の症状は緩やかに進行することが一般的であり、途中で症状が見られなくなるなど、変動が生じることもあります。
なお、橋本病の症例の中には甲状腺の機能低下を伴わないものもあり、そのような場合には上記のような症状が現れないことも多いです。
このように、橋本病と診断された症例のすべてに治療が必要とは言い切れないこともあり、定期的な通院による経過観察などが必要となります。
甲状腺の機能が低下してしまう要因や治療法、予防のためのポイントについては、以下の記事もご参照ください。
(3)亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は、ウイルスなどの感染によって甲状腺の細胞が破壊されることによって引き起こされます。
亜急性甲状腺炎は、鼻から喉までの空気の通り道である上気道の感染(いわゆる風邪)の後に発症することが多いです。
主に甲状腺ホルモンが蓄えられている濾胞という細胞が傷つけられることで、甲状腺ホルモンが過剰に血液中に放出されてしまいます。

これによって、一時的に以下のような症状が見られることが一般的です。
- 動悸や息切れ
- 手指の震え
- 体重の減少
- 倦怠感 など
また、ウイルス感染に原因があることから、発熱や喉の痛みなどを伴うことも多いです。
亜急性甲状腺炎では、甲状腺全体が腫れることもあれば、左右のどちらかのみが腫れることもあります。
甲状腺にできた腫れを押すと硬く、痛み(圧痛)を伴うことが多いです。
そのため、しばしば風邪の症状と間違われてしまうこともあります。
なお、亜急性甲状腺炎は、時間の経過とともに甲状腺の濾胞も修復されるため、次第に動悸や手指の震えなどの症状が改善していくことが一般的です。
亜急性甲状腺炎の症状の特徴や医療機関を受診する際の注意点などについては、以下の記事も参考になります。
(4)甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍は、甲状腺の細胞の一部が過剰に成長・増殖することで生じます。
甲状腺の結節(しこり)の多くは良性ですが、一定割合で悪性(がん)が含まれるため、超音波検査や必要に応じて細胞診で評価します。
なお、触った硬さだけで良性・悪性を判断することはできません。
バセドウ病や橋本病の場合とは異なり、甲状腺の一部に結節(しこり)ができることが多いですが、初期の段階では目立った症状もほとんど現れません。
また、甲状腺ホルモンのバランスが崩れることはあまりなく、バセドウ病や橋本病のような自覚症状が現れにくい点にも特徴があります。
しかし、結節(しこり)が大きくなるにつれて喉の圧迫感やものを飲み込みにくくなるなどの症状が見られることもあります。
また、甲状腺がんの場合には、がん細胞の成長に伴って気管などが圧迫され、声の出しにくさや呼吸困難などが見られることもあります。
一般的に甲状腺がんは進行が緩やかであり、生命に関わるものは稀であるといわれています。
もっとも、中には進行が早く、悪性度が高いもの(未分化がん)もあるため、数か月の間で喉や首のしこりが大きくなった場合には、甲状腺外科などの専門の医療機関を受診することをおすすめします。
3.喉の違和感が見られるほかの病気

喉の違和感のほかにも、動悸や息切れ、急激な体重の増加や減少、イライラや不安感などが強く現れている場合には、甲状腺の病気の可能性があります。
もっとも、喉に違和感が生じる原因には、甲状腺以外の病気が関わっているケースもあることに注意しましょう。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 咽頭炎
- 喉頭炎
- 扁桃炎
それぞれについて、喉の違和感以外に見られる症状も合わせて解説します。
(1)咽頭炎
咽頭炎は、鼻の奥から喉の奥にかけての部分(咽頭)に炎症が生じる病気です。

主にウイルスや細菌などが咽頭に侵入することで炎症が生じます。
これによって、喉の腫れや痛み、発熱、咳などの症状が見られることが多いです。
特にウイルス感染による咽頭炎の場合には、喉以外にも鼻水や咳などのほかの臓器に関連する症状が現れることがあります。
これに対して、細菌感染による咽頭炎では、細菌は喉にとどまって増殖することが一般的であり、喉の腫れや痛みが強く現れる傾向にあります。
ウイルス感染か細菌感染かを問わず、咽頭炎は現れている症状に合わせた対処療法によって治癒することも多いですが、放置することで炎症が広がり、悪化するケースもあります。
そのため、喉の痛みや発熱などが見られる場合には、直ちに耳鼻咽喉科などを受診し、必要な治療を行うことが重要です。
(2)喉頭炎
喉頭炎は、喉仏のあたりの空気の通り道(喉頭)に炎症が生じることで引き起こされる病気です。

喉頭は気管につながっているため、この部分に炎症が生じると、声のかすれや喉の痛み、咳などの症状が現れます。
喉頭炎は、ウイルスや細菌の感染のほかにも、喫煙や過度な飲酒などによる刺激が原因となって引き起こされるケースがあります。
特にウイルスなどの感染によって喉頭炎が引き起こされた場合には、発熱や呼吸がしにくいなどの症状が見られることが多いです。
喉頭炎の原因がウイルスなどの感染にある場合には、現れている症状に応じて対処療法を行うことが一般的です。
例えば、喉の痛みが強く出ている場合には鎮痛剤を用いて痛みを和らげたり、発熱が見られる場合には解熱剤などを用いたりすることで、症状を緩和します。
また、細菌感染によって引き起こされている場合には、医師の判断で抗菌薬が処方されることがあります。
なお、飲酒や喫煙、声帯に対する長期的な刺激などによって引き起こされている場合には、その原因となった生活習慣を改めることも治療を進める上では大切です。
(3)扁桃炎
扁桃炎は、喉の両脇にある口蓋扁桃と呼ばれる部分に炎症が生じる病気です。

口蓋扁桃は、細菌やウイルスなどの異物が侵入することを防ぐはたらきを持っています。
しかし、この部分の粘膜にウイルスなどが付着することで炎症が起こり、喉の痛みや飲み込みにくさ、発熱、全身の倦怠感などの症状が見られます。
また、口蓋扁桃の片側のみに炎症が起こる場合もあれば、両側に炎症が生じるケースもあり、粘膜に白い膿が見られることも扁桃炎の特徴です。
放置することで次第に炎症が広がり、水などを飲み込む際に激しい痛みを生じるほか、首の腫れが引き起こされることもあるため、注意が必要となります。
扁桃炎の場合にも、現れている症状に応じた対処療法がとられることが一般的です。
しかし、膿が溜まっている場合や扁桃炎を短期間で何度も繰り返す場合には、外科的処置によって排膿や扁桃の摘出手術などがとられることもあります。
4.喉の違和感がある場合に受診すべき診療科

甲状腺以外にも、さまざまな原因で喉の腫れや痛みなどの違和感が見られることがあります。
そのため、喉の違和感の原因の判断がつかない場合には、以下のような診療科を受診し、検査を受けることがおすすめです。
- 一般内科
- 耳鼻咽喉科
- 内分泌科
順にご説明します。
(1)一般内科
喉の違和感のほかにも、動悸や息切れ、脈拍の変動などが見られる場合には、まずは一般内科を受診することがおすすめです。
内科は大きく分けると、循環器や呼吸器、腎臓などさまざまな分野に分かれていますが、一般内科ではこれらの分野の違いにとらわれずに病気の診断や治療を行うことができます。
現れている症状がどの臓器の異常に原因があるのか判断がつかない場合には、一般内科を受診して検査を受けることで、原因が判明する可能性が高まります。
また、一般内科は治療を行うために適切な診療科を案内するという役割もあります。
そのため、受診すべき診療科が分からない症状や不調がある場合にも、まずは一般内科を受診することを検討してみましょう。
(2)耳鼻咽喉科
喉の違和感と合わせて発熱や倦怠感などの症状が見られる場合には、耳鼻咽喉科を受診することも検討しましょう。
先ほども述べたように、喉の痛みや発熱はウイルス感染によって引き起こされることもあります。
また、甲状腺の病気のうち、亜急性甲状腺炎でも喉の痛みなどを伴うことがありますが、通常は発熱や動悸などの症状が先に現れることが一般的です。
そのため、まずは風邪などの感染症の可能性を視野に入れ、耳鼻咽喉科で検査を受けることもおすすめです。
特に喉の違和感の原因が咽頭炎などの感染症にある場合には、耳鼻咽喉科を速やかに受診することで、適切な治療を開始することができます。
もっとも、喉の痛みや圧迫感などのほかにも、喉や甲状腺の腫れ、体重の急激な変動などが見られる場合には、甲状腺ホルモンのバランスが崩れている可能性が考えられます。
そのような場合には、次に述べる内分泌科を受診することがおすすめです。
(3)内分泌科
喉の違和感のほかにも体重の変動や意欲の低下などの症状が見られる場合には、内分泌科を受診して精密検査を受けることがおすすめです。
内分泌科は、ホルモンのバランスに関連する病気の診断と治療を専門とする診療科です。
そのため、甲状腺機能の異常による病気について、適切な検査と治療を受けることができます。
すでに述べたように、甲状腺ホルモンは体のさまざまな器官のはたらきに関わります。
その中でも、イライラや不安感、記憶力や集中力の低下などは自律神経のはたらきに関わるものであり、感染症などの場合には見られないことが一般的です。
このように、喉の腫れや痛みなどの違和感のほかにも精神的な症状が現れている場合には、甲状腺の病気が潜んでいる可能性もあります。
特に喉の違和感や精神的な症状が数か月にわたって続いている場合には、甲状腺の病気である可能性も視野に入れて、内分泌科を受診することを検討しましょう。
まとめ
本記事では、甲状腺の病気で見られる喉の違和感の特徴や甲状腺の病気の分類などについて解説しました。
甲状腺は喉仏の下あたりに位置するため、喉仏の下や首回りに腫れやしこりが見られる場合には、甲状腺に異常が生じている可能性があります。
また、腫れなどが大きくなるにつれて、気管や食道が圧迫されることもあり、声の出しにくさやものの飲み込みにくさなどが現れるケースもあるため、注意が必要です。
特に数か月の間に体重の変化やイライラ・不安感などの精神的な症状が見られる場合には、甲状腺の病気の可能性もあるため、なるべく早期に内分泌科を受診することがおすすめです。



