甲状腺の病気が疑われるときはどんな検査を受けるべき?主な検査方法や特徴について解説

「甲状腺の病気はどんな検査をすれば分かるのか」
「甲状腺の病気によって受けるべき検査の方法は違うの?」
「どんな症状がある場合に甲状腺の病気を疑えばよいのか分からない」

甲状腺は、喉仏の下あたりにある小さな器官で、私たちの体の中の細胞の活動やはたらきを助ける作用を担います。

具体的には、甲状腺で作られる甲状腺ホルモンという物質が体の中のさまざまな細胞にはたらきかけ、体の成長や基礎代謝の活性化を促進します。

そのため、甲状腺に異常が生じ、甲状腺ホルモンの量が多くなったり少なくなったりすることで、これらの活動が正常に行われず、さまざまな不調が現れます。

ご自身の体の不調が甲状腺の病気によるものと疑われている方の中には、上記のような疑問や不安をお持ちの方もいるかと思います。

甲状腺ホルモンは血液の中に放出されるため、甲状腺ホルモンの量が多いか少ないかは血液検査を行うことで把握することが可能です。

また、甲状腺の細胞を直接観察することで、甲状腺の状態や病気の原因を探る方法など、さまざまな検査方法が同時に実施されることもあります。

もっとも、これらの検査を行い、どのような結果が出た場合に甲状腺の病気であると判明するかについて疑問をお持ちの方もいるでしょう。

本記事では、甲状腺の病気が疑われる場合に実施される検査方法やその内容について解説します。

また、甲状腺の病気の種類とそれに対応する検査方法についても合わせて解説します。

甲状腺の病気には、特有の症状があまり多くなく、ほかの病気と間違われるケースも少なくありません。

よく間違われる病気についてもいくつかご紹介しますので、甲状腺の病気について詳しく知りたいという方の参考になれば幸いです。

1.甲状腺の病気が疑われる場合の検査方法

甲状腺は喉仏の下あたりにある蝶が羽を広げたような形の器官です。

ここの部分では、体の中のさまざまな細胞の活動を活発にする甲状腺ホルモンという物質が作られ、蓄えられています。

また、血液中のカルシウム濃度の調整に関わるカルシトニンというホルモンも放出しています。

そのため、甲状腺に異常が生じると、甲状腺ホルモンが作られる量や血液中に放出される量が多くなったり少なくなったりして、体のさまざまな場所で不調が現れます。

具体的には、以下のような症状がある場合には、甲状腺の病気である可能性があります。

甲状腺の病気が疑われる症状

  • 首や喉の腫れ、痛み
  • 疲れやすい
  • 脈拍が早い
  • 動悸や息切れ
  • 体重の増加または減少
  • 記憶力の低下や抑うつ状態
  • イライラや不眠 など

もっとも、甲状腺の病気であるかどうかは、まずは問診や喉の腫れなどを触って確かめる触診をすることによって判断されます。

これらを踏まえて、甲状腺の病気が疑われる場合には、以下の検査が行われます。

甲状腺の病気が疑われる際に行われる検査

  1. 血液検査
  2. 超音波検査
  3. 穿刺吸引細胞診
  4. CT検査

それぞれの内容について、具体的にご説明します。

(1)血液検査

血液中の甲状腺ホルモンなどの濃度を測定することによって、甲状腺の病気であるかどうかを判定する検査方法です。

この際に測定の対象となるものは、主に以下のような数値です。

血液検査において測定される主な数値

  1. 甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(主にFT₄とFT₃)
  2. サイログロブリン(Tg)
  3. 抗甲状腺自己抗体
  4. 抗TSH受容体抗体(TRAb)と甲状腺刺激抗体(TSAb)

それぞれについて解説します。

#1:甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(主にFT₄とFT₃)

甲状腺の機能が正常にはたらいているかどうかを調べる際には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とセットで甲状腺ホルモン(主にFT₄とFT₃)の濃度が測定されます。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳にある下垂体前葉から甲状腺に対して放出される物質です。

血液中の甲状腺ホルモンの量が少ないと、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出されて甲状腺に対して甲状腺ホルモンをさらに作り出すようにはたらきかけます。

一方、血液中の甲状腺ホルモンの量が多い場合には甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出が抑えられ、これによって甲状腺ホルモンが作られる量が減少します。

このように、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺で作られる甲状腺ホルモンの量や血液中に放出される量を一定に保つためのはたらきを担っているのです。

また、甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T₄)とトリヨードサイロニン(T₃)の2種類があり、それぞれの特徴は以下の通りです。

甲状腺ホルモンの種類 主な特徴
サイロキシン(T₄)
  • ヨウ素分子が4つ結合してできている
  • 100%が甲状腺で作られる
  • 一部は体の中の細胞でT₃を作り出すための材料となる
トリヨードサイロニン(T₃)
  • ヨウ素分子が3つ結合してできている
  • 血液中に存在しているもののうち、20%が甲状腺で作られ、80%がT₄を材料として体の細胞で作られる

 

また、血液中に放出された甲状腺ホルモン(T₄とT₃)は、甲状腺ホルモン結合蛋白(TBP)と結合するもの(結合型)と結合しないもの(遊離型)に分かれます。

結合型の甲状腺ホルモンのうち、サイロキシン結合グロブリン(TBG)は血液中のサイロキシン(T₄)およびトリヨードサイロニン(T₃)の75%ほどと結合しています。

そのため、サイロキシン結合グロブリン(TBG)の変動が血液中の甲状腺ホルモン(T₄とT₃)の濃度を左右するのです。

一方、遊離型の甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)は、通常であればサイロキシン結合グロブリン(TBG)の濃度に関係なく一定の濃度を保ちます。

そのため、遊離型の甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)の濃度が通常よりも高い場合や低い場合には、甲状腺に何らかの異常が生じていることになるのです。

このように、甲状腺のはたらきが正常であるかどうかを判断するためには、サイロキシン結合グロブリン(TBG)の影響を受けない遊離型の甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)の濃度を調べることが適しています。

#2:サイログロブリン(Tg)

サイログロブリン(Tg)は、甲状腺ホルモン(T₄とT₃)を作り出す材料となる物質です。

また、甲状腺ホルモン(T₄とT₃)を甲状腺の中にストックし、血液の中に放出する役割も担っています。

甲状腺を形作っている濾胞という小さな袋状の組織の中に蓄えられており、サイログロブリン(Tg)は甲状腺以外で作られることはなく、通常は血液中に放出されることもほとんどありません。

もっとも、濾胞が何らかの原因で破壊された場合には血液中にサイログロブリン(Tg)が放出されることがあるため、甲状腺の状態を知るために測定されることがあります。

しかし、サイログロブリン(Tg)の値が測定されることで、濾胞や甲状腺に何らかの異常が起こっていることを把握することは可能ですが、その原因を特定するまでには至らない場合がほとんどです。

そのため、甲状腺にできたがんの経過観察や甲状腺がんが再発しているかどうかの判断をする際に参考とされるにとどまります。

#3:抗甲状腺自己抗体

甲状腺に対する自己抗体の濃度を測定することで、甲状腺の病気を特定することに至る場合があり、甲状腺ホルモンの濃度に異常がある場合には必ず測定が行われます。

自己抗体とは、自分の細胞や組織に対して作られる抗体のことで、抗体は通常であれば体の中に侵入したウイルスなどの異物に対して作られるものです。

しかし、自己免疫疾患と呼ばれる病気になると、自分の体の中にもともとある細胞や組織を異物とみなしてしまい、これに対する抗体が作られ、攻撃してしまうことでさまざまな症状が現れます。

甲状腺の病気の中でも、後述する橋本病などの甲状腺機能低下症の場合には、甲状腺に対する自己抗体が作られることで自分の体の細胞などを傷つけてしまうため、これらの病気であるかどうかを判断するときに効果的です。

具体的には、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)などの濃度を測定することで、橋本病あるいはバセドウ病なのか、ほかの甲状腺の病気なのかを見分ける際の基準とすることができます。

#4:抗TSH受容体抗体(TRAb)と甲状腺刺激抗体(TSAb)

抗TSH受容体抗体(TRAb)とは、甲状腺の中にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体に対する抗体のことです。

これが体の中で作られると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に代わって受容体を刺激し続け、甲状腺ホルモンが過剰に作り出されて血液中に放出されます。

これによって、体の中の細胞や組織の活動が過剰に促進されてしまい、脈拍が早くなること(頻脈)によって動悸や息切れ、高血圧などの甲状腺機能亢進症の症状が現れます。

抗TSH受容体抗体の濃度は、主に甲状腺亢進症の代表的な病気であるバセドウ病が疑われる際に測定されます。

なお、これに対して甲状腺刺激抗体(TSAb)は、甲状腺への刺激の程度を直接測定する方法であり、バセドウ病の症状の中でも眼球が突出する症状が現れているケースで高い値が出る傾向があります。

(2)超音波検査

甲状腺に腫れやしこりがある場合に行われる検査方法です。

レントゲン検査などとは異なり、X線を使用しないため放射線の影響を心配する必要がなく、痛みなどを感じることもないため安全な検査方法であるといえます。

また、触診によって甲状腺の腫れやしこりが見つからなかった場合であっても、超音波検査を行うことで発見されることがあるため、甲状腺の病気の疑いがある場合には実施されることが多いです。

甲状腺に超音波をあてることで、腫れやしこりの大きさや形について把握できるほか、炎症があるかどうかを調べることもできます。

超音波検査を行うことで、腫れやしこりが炎症によるものなのか、腫瘍によるものなのかの判断ができるほか、腫瘍が良性か悪性かの区別をする際にも参考になります。

また、炎症によって腫れたリンパ節の状態を調べることができ、腫瘍である場合にはリンパ節への転移があるかどうかを判断することも可能です。

(3)穿刺吸引細胞診

細い注射針を用いて、甲状腺の細胞を直接採取する検査方法です。

通常、超音波検査によって炎症性疾患や甲状腺がんが疑われる場合に患部の細胞の様子を観察するために合わせて行われることが多いです。

短時間で検査を終えることができ、直接細胞を観察することができるため、良性か悪性かの判断をほぼ正確に行うことができます。

採血の際に用いる針よりも細い針を用いるため、体への負担も少ないですが、検査後は内出血を起こす場合もあるため、検査後は安静にすることが大切です。

(4)CT検査

甲状腺にしこりが見られる場合には、CT検査が行われる場合があります。

CT検査とは、レントゲン検査と同じくX線を用いた検査方法ですが、X線をさまざまな方向からあてることによって体の断面を画像にすることができる点に違いがあります。

甲状腺のしこりが気管や食道を圧迫しているかどうかなどを観察する際にはCT検査が行われることが多いです。

もっとも、CT検査では5~10mmの間隔で体を輪切り状にした画像撮影を行うため、これよりも小さなしこりや腫瘍を検出することができないというデメリットもあります。

そのため、小さな病変を検出するためにはさらに細かい間隔でスライス状に検査できるCTが必要となる場合があります。

超音波検査では検出できない場所や広範囲に広がる甲状腺の石灰化、がんの状態をCT検査で検出することはできますが、あくまで補充的な検査方法にとどまります。

また、CT検査の設備を備えているのは比較的規模の大きな医療機関となるため、CT検査を受けることができる医療機関には限りがあることにも注意が必要です。

2.主な甲状腺の病気と検査方法

甲状腺の病気には、主に以下のようなものがあります。

主な甲状腺の病気

  1. 甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)
  2. 甲状腺機能低下症(主に橋本病)
  3. 亜急性甲状腺炎
  4. 甲状腺がん

それぞれの病気の主な症状のほか、どのような検査によって検出されるのかについて解説します。

(1)甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に作り出され、体の中の細胞や組織の活動が通常よりも過剰に高められている状態のことをいいます。

この代表的な病気がバセドウ病であり、甲状腺の中にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する自己抗体が作り出されて受容体を刺激し続けることによって生じます。

これによって、甲状腺刺激ホルモン(TSH)からの指令であると受け取った甲状腺が過剰に甲状腺ホルモンを作り出し、血液中に放出することで、さまざまな症状や不調が現れるのです。

#1:主な症状

バセドウ病になると、通常よりも甲状腺ホルモンが多く作られてしまうため、これが体の中の細胞や組織の活動を過剰に促進することになります。

具体的には、心臓の筋肉の収縮力が高められ、心拍数が増加することによって動悸や息切れ、高血圧などの症状が現れます。

また、タンパク質や脂質などの物質の吸収や分解が促進されることで、体の中のエネルギー代謝が過剰に高められた結果、意図しない体重の減少なども起こります。

甲状腺の病気は女性に多いですが、バセドウ病も女性に多く発症し、無月経や不妊などの症状を引き起こすこともあります。

バセドウ病特有の症状として、眼球が飛び出たような状態になることも挙げられます。

これは、甲状腺ホルモンが過剰に作り出されることによって甲状腺が広がるように腫れ、細胞の増加が促進されることが理由です。

#2:検査方法

バセドウ病が疑われる場合には、血液検査と超音波検査の両方が行われます。

血液検査では、以下の項目をすべて満たすと、バセドウ病と診断される可能性が高いです。

バセドウ病の主な診断項目

  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度が低い
  • 遊離型甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)の濃度の両方あるいは一方が高い
  • 抗TSH受容体抗体(TRAb)あるいは甲状腺刺激抗体(TSAb)が陽性

また、喉や甲状腺の腫れが見られる場合には超音波検査でその状態を観察する場合もあります。

(2)甲状腺機能低下症(主に橋本病)

甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの量が不足し、細胞や組織の活動が通常よりも低下した状態のことをいいます。

代表的なものとして橋本病があり、バセドウ病と同じく自己免疫に関する病気です。

橋本病は、甲状腺ホルモンに対する自己抗体が作られ、これを異物とみなして甲状腺を破壊することで甲状腺ホルモンの量が不足してしまいます。

つまり、甲状腺機能亢進症とは逆の状態となることを意味します。

#1:主な症状

体の中での甲状腺ホルモンのはたらきが低下するため、細胞や組織の活動が停滞してしまうことで、さまざまな不調が生じます。

具体的には、脱力感や寒さに敏感になってしまうことのほか、抑うつ状態や記憶力の低下などの精神状態への影響も現れます。

また、エネルギー代謝が停滞することにより、吸収した栄養素をエネルギーに変換できず、体重の増加や血中コレステロール値の上昇などの症状も見られます。

バセドウ病と同じく女性に多い病気であり、特に中年の女性に発症するケースが多いです。

体の中に消費されないエネルギーなどが蓄積されることで、むくみの症状が現れるほか、無月経や腸の活動が停滞することで便秘などの症状に悩まされることもあります。

なお、高齢者の場合には、記憶力の低下などの症状から認知症と疑われ、精密検査を受ける過程で甲状腺機能低下症が見つかるケースもあります。

#2:検査方法

血液検査と超音波検査が行われ、補充的に穿刺吸引細胞診が実施されることもあります。

橋本病では甲状腺ホルモン自体に対する自己抗体が作られるため、血液検査ではこの有無を調べるために抗甲状腺自己抗体の測定が行われるのが一般的です。

そのため、抗甲状腺自己抗体のうち、抗サイログロブリン抗体(TgAb)と抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の両方あるいは一方が陽性となると橋本病が疑われます。

また、橋本病では甲状腺ホルモンに対する自己抗体が甲状腺を攻撃するため、炎症が生じる場合がほとんどです。

炎症が起こった場合には、体の反応として好中球やリンパ球といった細胞が体の細胞や組織を保護するために炎症が起こった部分に集中する「浸潤」という現象が見られます。

そのため、穿刺吸引細胞診によって甲状腺の細胞を採取し、リンパ球による浸潤が確認される場合にも、橋本病が疑われます。

(3)亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染などによって甲状腺に炎症が発生する病気です。

甲状腺にウイルスや細菌などが感染し、甲状腺を形作る濾胞が破壊されてしまうことで、濾胞の中で蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に大量に放出されることによって生じます。

その後、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量が抑制され、次第に血液中の甲状腺ホルモンの量も低下していきます。

破壊された濾胞が再生することで、甲状腺ホルモンが再び作り出されるようになるものの、濾胞の再生は不十分であり、甲状腺ホルモンがうまく作られないことによって今度は甲状腺ホルモン量が不足してしまうことになります。

#1:主な症状

甲状腺に炎症が起こるため、軽度の腫れや痛みがあるほか、喉の痛みが見られることが多いです。

また、初期には動悸や息切れ、全身のだるさ、手指の震えなどの甲状腺機能亢進症に見られる症状が現れ、次に甲状腺機能低下症のような症状が現れるのが特徴といえます。

もっとも、これらの症状は2~4か月程度でもとの状態に戻ることが多いです。

#2:検査方法

主に血液検査と超音波検査によって判断されます。

血液検査では、遊離型サイロキシン(FT₄)の濃度が高く、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度が低い場合には亜急性甲状腺炎が疑われます。

また、超音波検査の結果、甲状腺に低エコー領域が認められる箇所と痛みを訴えている場所が一致すれば、亜急性甲状腺炎と診断されるケースが多いです。

もっとも、亜急性甲状腺炎と甲状腺がん(特に乳頭がん)を合併している場合には、甲状腺がんを見落としてしまう可能性があります。

そのため、亜急性甲状腺炎が治癒したあとに再び超音波検査を行うケースもあります。

(4)甲状腺がん

甲状腺がんは甲状腺腫瘍の中でも悪性のものです。

甲状腺のがんには、主に以下のような分類があります。

甲状腺がんの主な分類

  • 乳頭がん
  • 濾胞がん
  • 髄様がん
  • 未分化がん

これらのうち、甲状腺がんで最も多いのは乳頭がんであり、甲状腺がんのおよそ90%を占めます。

乳頭がんは比較的進行が緩やかであり、早期発見ができれば予後も良好であるものが多いです。

もっとも、甲状腺がんの中でも未分化がんは成長のスピードがほかの甲状腺がんと比べても著しく、きわめて予後が悪いがんです。

また、リンパ節を通じたほかの臓器や組織へ転移する可能性があり、致死率も高いことから注意が必要となります。

そのため、甲状腺がんについては、基本的に摘出手術などの外科的処置を行うことがメインとなります。

#1:主な症状

甲状腺がんは、甲状腺のはたらきに直接影響を与えることは少なく、最初のうちはほとんど自覚症状がない場合が多いです。

もっとも、がんの進行に伴って喉や甲状腺の腫れが次第に大きくなることで、初めて気づくこともあります。

特に未分化がんの場合には成長が早く、ほかの臓器や組織への転移の可能性もあるため、少しでも喉に違和感がある場合には放置せず、専門の甲状腺外科などの医療機関を直ちに受診することが重要です。

#2:検査方法

甲状腺がんが疑われる場合には、超音波検査が行われることが一般的です。

また、リンパ節への転移の有無や細胞の様子を観察するために、これと合わせて穿刺吸引細胞診やCT検査が補充的に行われることもあります。

特に乳頭がんは、穿刺吸引細胞診を行うことで、高い精度で診断を行うことができるところに特徴があります。

3.甲状腺の病気と間違われやすい病気や症状

甲状腺で作られる甲状腺ホルモンは、心臓や血管、肝臓や腸などの臓器、精神活動など、体の中のさまざまな活動に影響を与えます。

例えば、甲状腺機能亢進症では心臓や血管の活動が促進され、心拍数の増加などに伴って動悸や息切れ、高血圧などの症状が現れます。

また、甲状腺機能低下症では体の活動が停滞することにより、抑うつ状態や記憶力の低下など、精神や認知機能にも支障をきたすことがあります。

このように、甲状腺の病気になると現れる症状が多岐にわたるため、以下のような病気と間違われる場合があります。

甲状腺の病気と間違われやすい病気

  • 高血圧
  • 心臓病
  • 更年期障害
  • うつ病
  • 認知症
  • 甲状腺以外のがん など

甲状腺の病気には、特有の症状が少なく、ほかの病気の症状と混同されることも多いです。

そのため、上記のような病気であると診断を受け、治療を行っても効果がなく、再び検査や医療機関に受診したときに初めて甲状腺の病気であると判明することも少なくありません。

甲状腺の病気は、適切な検査を受けることができれば、早期発見も難しくなく、適切な治療を行うことで日常生活を送ることができるものです。

しかし、ほかの病気と診断されて、甲状腺の病気であることの発見が遅れてしまうと、適切なタイミングで検査や治療を行うことが難しくなってしまいます。

そのため、上記のような病気と診断され、治療を続ける中で症状が改善しないと感じた場合には、甲状腺の病気である可能性も視野に入れて内分泌科などの医療機関を受診することが望ましいです。

まとめ

本記事では、甲状腺の病気が疑われる場合に行われる検査方法や内容について解説しました。

甲状腺の病気の可能性がある場合には、血液検査と超音波検査が行われることが一般的ですが、症状などによってはほかの検査が補充的に行われることがあります。

また、甲状腺の病気と一口に言っても、その原因や症状はさまざまです。

中にはほかの病気と似たような症状もあり、内分泌科や甲状腺外科などの専門の医療機関を受診しなければ甲状腺の病気と診断されないケースもあります。

本記事で紹介したような症状に悩まれている方は、甲状腺の病気である可能性も視野に入れて、適切な検査を受けるようにしましょう。