
甲状腺の病気は血液検査から分かる?主な検査項目や診断基準について解説
「甲状腺の病気は血液検査の結果から分かる?」
「どのような項目について検査が実施されるのか知りたい」
原因の分からない動悸や息切れ、疲労感などの症状にお悩みの方の中には、甲状腺の病気の可能性を疑い、このような疑問をお持ちの方もいると思います。
甲状腺は、喉仏の下あたりにある小さな器官で、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンが作られています。
甲状腺ホルモンは、タンパク質や脂質の吸収・分解、自律神経に作用し、全身の機能を維持・調整する役割を担う重要なホルモンです。
通常、甲状腺ホルモンの量は脳にある下垂体と呼ばれる器官から放出される甲状腺刺激ホルモン(TSH)というホルモンによって一定に保たれています。
しかし、甲状腺の病気を発症すると、甲状腺ホルモンの量に異常が生じることが多いです。
なお、甲状腺ホルモンは血液の中に放出されることで全身をめぐっています。
そのため、血液検査によって甲状腺の機能を把握することが可能です。
本記事では、甲状腺の病気が疑われる際に行われる血液検査の項目や診断基準について解説します。
1.甲状腺の病気が疑われる際に実施される血液検査の項目

甲状腺ホルモンは、甲状腺で作られ、蓄えられています。
そして、血液中に放出されることによって、体の中の細胞や組織にはたらきかけ、さまざまな機能の維持・調整に関わります。

このように、甲状腺ホルモンは血液中に存在しているため、血液中の甲状腺ホルモン濃度を測定することで、甲状腺の機能を判断することが可能です。
具体的には、以下のような数値を検査します。
- 甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- サイログロブリン(Tg)
- 抗サイログロブリン抗体(TgAb)
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
- 抗TSH受容体抗体(TRAb)
- 甲状腺刺激抗体(TSAb)
これらの数値のいずれかを組み合わせることによって、甲状腺の病気の診断を行うことが一般的です。
なお、甲状腺の病気は、血液検査だけでなく、現れている症状(自覚症状)に基づいて診断が下されます。
また、病気の種類によっては、血液検査以外にも検査が追加で行われることがあります。
甲状腺の機能に異常が生じた場合に現れやすい症状や血液検査以外の検査方法については、以下の記事も合わせてご覧ください。
(1)甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)
甲状腺ホルモンには、サイロキシン(T₄)とトリヨードサイロニン(T₃)の2種類があります。
それぞれの特徴は、以下のようにまとめることができます。
| 甲状腺ホルモンの種類 | 主な特徴 |
| サイロキシン(T₄) | ・ヨウ素分子が4つ結合している ・100%が甲状腺で作られる ・一部は体の中の細胞でT₃を作り出すための材料となる |
| トリヨードサイロニン(T₃) | ・ヨウ素分子が3つ結合している ・血液中に存在しているもののうち、20%が甲状腺で作られ、80%がT₄を材料として体の細胞で作られる |
血液中の甲状腺ホルモンは、多くが運搬タンパク質(主にTBGなど)と結合した「結合型」と結合していない「遊離型」に分かれます。
実際に細胞へ作用するのは主に遊離型(FT₄とFT₃)であり、甲状腺の機能を評価する際には遊離型を測定することが一般的です。
ただし、重症疾患や薬剤の影響などで結果の解釈に注意が必要な場合があります。
医療機関や測定方法によっても数値の設定には差異が見られるものの、概ね以下のような基準値とされることが多いです。
| 甲状腺ホルモンの種類 | 基準値(正常値) |
| 遊離型サイロキシン(FT₄) | 0.9~1.7ng/dL |
| 遊離型トリヨードサイロニン(FT₃) | 2.3~4.0pg/mL |
どちらかの濃度が正常な範囲を超えて高い場合または低い場合には、甲状腺のはたらきに異常が生じている可能性があるといえます。
(2)甲状腺刺激ホルモン(TSH)
遊離型の甲状腺ホルモン(FT₄とFT₃)と合わせて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度についても検査が行われることが一般的です。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳の下垂体と呼ばれる器官で作られるホルモンで、血液中に放出される甲状腺ホルモンの量を調整する役割を担っています。
甲状腺ホルモンは、体の中の細胞のはたらきを正常に保つ上で重要なものですが、多すぎても少なすぎてもいけません。
そのバランスを維持・調整するのが甲状腺刺激ホルモン(TSH)です。
具体的には、血液中にある甲状腺ホルモンの量が少ない場合には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出され、甲状腺に対して甲状腺ホルモンの放出を促します。
これに対して、血液中の甲状腺ホルモンの量が多い場合には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出量が減り、これによって甲状腺ホルモンの放出も抑えられるのです。

このように、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量と血液中の甲状腺ホルモン濃度との間には、相互関係があります。
なお、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度については、0.5~5.0μlU/mLが基準値とされることが多いです。
しかし、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の基準範囲は測定法や施設によって異なるため、結果の解釈は検査機関の基準値に従って判断されます。
特に遊離型サイロキシン(FT₄)は甲状腺に由来するものであるため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度とセットで測定することで、甲状腺ホルモンの量の維持・調整に問題がないかどうかを評価することができます。
(3)サイログロブリン(Tg)
サイログロブリン(Tg)は、甲状腺の濾胞細胞で作られるタンパク質で、甲状腺ホルモンの合成に関与します。
なお、サイログロブリン(Tg)は甲状腺の炎症や腫大などによっても数値が変動するため、単独で特定の病気を診断する目的には向きません。
一方で、分化型甲状腺がんの治療後には再発評価などの目的で重要な指標となり、下記の抗サイログロブリン抗体(TgAb)の有無も合わせて判断します。
そのため、主に甲状腺の病気の治療中などに甲状腺の機能をチェックする目的で参照されることが多いといえます。
(4)抗サイログロブリン抗体(TgAb)
抗サイログロブリン抗体(TgAb)は、サイログロブリン(Tg)に対する自己抗体です。
通常、抗体は体の中に侵入したウイルスなどの異物(抗原)に対して作られます。
そして、抗体がウイルスなどの抗原を攻撃して排除するはたらきを免疫機能といいます。
これに対して、自己抗体とは、体の中にもともと存在している物質や細胞に対して作られてしまうものです。
そのため、抗サイログロブリン抗体(TgAb)の値が測定された場合には、免疫のはたらきに異常が生じている可能性があります。
(5)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は、甲状腺ペルオキシダーゼという酵素に対する自己抗体です。
甲状腺ペルオキシダーゼは、甲状腺ホルモンを作り出す役割を持っており、これに対する自己抗体が作られることで、甲状腺ホルモンを作るためのはたらきが妨げられてしまいます。
また、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)には細胞を攻撃する性質があるため、これによって甲状腺の細胞が破壊されてしまうこともあるのです。
そのため、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の値が高い場合にも、免疫機能に何らかの異常が生じている可能性があるといえます。
(6)抗TSH受容体抗体(TRAb)
抗TSH受容体抗体(TRAb)は、甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する抗体です。
甲状腺ホルモンは、甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体という器官に甲状腺刺激ホルモン(TSH)が結合することで、血液中に放出されます。
しかし、この受容体に対する抗体が作られると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に代わって受容体に結合してしまうのです。
そのため、甲状腺の機能が過剰に高められることで生じる甲状腺機能亢進症の疑いがある場合に測定されます。
なお、抗TSH受容体抗体(TRAb)は、甲状腺の病気の中でも、バセドウ病の診断の際に参照される数値です。
(7)甲状腺刺激抗体(TSAb)
甲状腺刺激抗体(TSAb)は、上記で述べた抗TSH受容体抗体(TRAb)の中でも、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を刺激する抗体です。
これが受容体に結合してしまうと、甲状腺ホルモンが過剰に放出されてしまい、体の機能が通常よりも高められることになります。
そのため、甲状腺機能亢進症が疑われる場合に測定されることが一般的です。
なお、抗TSH受容体抗体(TRAb)との違いは、測定方法にあります。
甲状腺刺激抗体(TSAb)は、抗TSH受容体抗体(TRAb)が甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を刺激する程度を把握するために参照とされる数値です。
特に甲状腺刺激抗体(TSAb)の数値が高い場合には、バセドウ病であると診断することができます。
また、バセドウ病に特有の症状である眼球の突出への影響の有無や程度を把握する際に参照されることが多いです。
2.血液検査の結果と主な甲状腺の病気

上記のような血液検査の項目から甲状腺の病気の診断が行われることになります。
しかし、甲状腺の病気には、いくつかの分類があります。
血液検査の結果から診断・鑑別ができる甲状腺の病気には、以下のようなものがあります。
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
- 破壊性甲状腺炎
それぞれの病気について、診断の基準を詳しく解説します。
(1)甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺の機能が高められることによって、甲状腺ホルモンが通常よりも多く血液中に放出されてしまう病気です。
これによって全身のはたらきが過剰に高められてしまい、以下のような症状が見られることがあります。
- 動悸や息切れ
- 発汗量の増加
- 意図しない体重の減少
- 脈が早くなる(頻脈)
- 手指の震え
- イライラ、不安感
- 排便回数の増加、下痢 など
なお、甲状腺機能亢進症は、症状が引き起こされる原因によって、以下のような分類があります。
- バセドウ病
- 結節性甲状腺腫(プランマー病)
- 潜在性甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症の治療法や注意点については、以下の記事もご覧ください。
#1:バセドウ病
甲状腺機能亢進症の中でも、バセドウ病は代表的な病気です。
バセドウ病では、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対して自己抗体が作り出されることにより、受容体が刺激され続けることで、甲状腺ホルモンが過剰に放出されます。
そのため、血液検査を行い、以下のような項目のすべてを満たす場合には、バセドウ病が疑われることになります。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(FT₄、FT₃) | いずれか一方、または双方が基準値より高い |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より低い(0.1μlU/mL以下) |
| 抗TSH受容体抗体(TRAb) 甲状腺刺激抗体(TSAb) |
いずれか一方が陽性 |
なお、血液検査の結果に加えて、甲状腺機能亢進症で現れる症状(動悸や息切れ、体重の減少、手指の震えなど)が見られる場合には、バセドウ病と診断されます。
#2:結節性甲状腺腫(プランマー病)
結節性甲状腺腫(プランマー病)は、甲状腺にできたしこり(良性の腫瘍)が甲状腺ホルモンを放出することによって引き起こされる病気です。
通常、甲状腺にできた腫瘍が甲状腺ホルモンを作り出すことはありませんが、プランマー病では甲状腺ホルモンが作られ、それが血液中に放出されることで症状が現れます。
血液検査との関係では、以下のような結果となった場合には、プランマー病が疑われます。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(FT₄、FT₃) | 双方が基準値より高い |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より低い |
なお、プランマー病では、甲状腺にしこり(結節)が見られるほか、甲状腺ホルモンの量が増加することによる動悸や息切れ、手指の震えなどの症状が見られることがあります。
しかし、甲状腺ホルモンの量が増えることによる全身への影響は、バセドウ病の場合と比較すると軽いことが一般的で、中には目立った自覚症状が現れない症例もあるのです。
また、日本では甲状腺機能亢進症全体の0.3%程度にとどまり、それほど多いわけではありません。
#3:潜在性甲状腺機能亢進症
潜在性甲状腺機能亢進症とは、甲状腺機能亢進症に見られるような症状が現れていないものの、甲状腺ホルモンの値がわずかに上回ってしまう病気です。
通常、自覚症状を伴わず、本人も気づかないことが多く、血液検査を受けて判明することがほとんどといえます。
具体的には、以下のような検査結果となる場合に潜在性甲状腺機能亢進症と診断されることが一般的です。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(FT₄、FT₃) | 双方が基準値範囲内 |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より低い |
主にヨウ素を含む薬剤の長期投与などによるヨウ素の過剰摂取や自己免疫のはたらきが発症に影響を与えているという指摘があります。
また、潜在性甲状腺機能亢進症には、バセドウ病が原因として潜んでいることもあるため、注意が必要です。
この状態を放置することで、甲状腺ホルモンの数値が上昇し、明らかな甲状腺機能亢進症に移行するリスクが高まります。
このほか、心房細動や心不全、骨粗しょう症の発症リスクが高まることも報告されています。
そのため、血液検査によって潜在性甲状腺機能亢進症と診断された場合には、2~3か月後に再検査を行い、経過を見ることが重要です。
(2)甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能などが低下することで、甲状腺ホルモンの量が少なくなってしまう病気です。
そのため、全身のはたらきが停滞してしまい、以下のような症状が見られます。
- 疲労感や倦怠感
- 皮膚の乾燥
- 体重の増加
- 脈が遅くなる(徐脈)
- 記憶力や意欲の低下
- 便秘 など
なお、甲状腺機能低下症は、主に以下のような分類ができます。
- 慢性甲状腺炎(橋本病)
- 中枢性甲状腺機能低下症
- 潜在性甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症を引き起こす原因や治療法、予防のポイントなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。
#1:慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性甲状腺炎(橋本病)は、甲状腺に炎症が生じることで甲状腺ホルモンの量が低下してしまう病気です。
慢性甲状腺炎(橋本病)は、自己免疫反応により甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺機能低下症の原因となることが多い病気です。
主に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb)などが陽性となることがあり、臨床所見や超音波検査所見と合わせて診断されます。
| 検査項目 | 結果 |
| 抗サイログロブリン抗体(TgAb) | 陽性 |
| 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb) | 陽性 |
なお、上記のような自己抗体は、双方が陽性となる場合もあれば、どちらか一方のみが陽性となることもあります。
橋本病が疑われる症例では、抗サイログロブリン抗体(TgAb)が陽性となるのは90%以上であるのに対して、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が陽性となるのは80%程度であるという研究もあります。
そのため、まずは抗サイログロブリン抗体(TgAb)を測定し、その結果が陰性となる場合に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が補充的に測定されることが多いです。
また、橋本病は慢性的な炎症を伴うことが一般的であり、甲状腺に腫れが見られることが多いといえます。
特に甲状腺や喉のあたりに広がるように腫れが見られ、血液検査の結果が上記のような場合には、橋本病と診断されます。
#2:中枢性甲状腺機能低下症
中枢性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量が低下することによって引き起こされる病気です。
これは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出を司る脳の下垂体の機能低下が原因となることがほとんどといえます。
そのため、甲状腺の機能自体には問題がないケースが一般的です。
血液検査の結果が以下のような場合、中枢性甲状腺機能低下症の可能性があります。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(主にFT₄) | 基準値より低い |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より低い~基準値範囲内 |
下垂体の機能が低下する要因としては、下垂体に腫瘍ができることや頭部の外傷などが挙げられます。
橋本病の場合と比較すると、甲状腺ホルモンの低下による疲労感や体重の増加などの症状は軽いケースがあります。
また、下垂体の腫瘍によって引き起こされている場合には、頭痛や視力の低下などの症状が見られることもある点に注意が必要です。
#3:潜在性甲状腺機能低下症
潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺機能低下症に見られるような自覚症状がないものの、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値が基準値よりも高い状態をいいます。
血液検査が以下のような結果となった場合には、潜在性甲状腺機能低下症が疑われます。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(FT₄、FT₃) | 双方が基準値範囲内 |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より高い |
健康な人の4~10%程度に発症するとされており、特に女性に多いといわれています。
また、高齢者になるほど発症の頻度が高まり、高齢女性に限ると20%程度に認められるという報告もあります。
潜在性甲状腺機能低下症の60~80%程度の症例が橋本病によって引き起こされているという研究もあります。
もっとも、自覚症状が見られないことも多く、人間ドッグなどで血液検査を受けたときに初めて判明するケースも少なくありません。
目立った症状が現れていない場合には、特別な治療を必要としませんが、甲状腺ホルモンの量が低下していくと、脂質異常症や動脈硬化などの病気のリスクが高まるとされています。
また、長期間放置することによって、早産や流産のリスクが高まることも報告されているため、注意が必要です。
そのため、潜在性甲状腺機能低下症と診断された場合には、1~3か月後に再度血液検査を実施し、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定し、経過観察を行うことが重要といえます。
(3)破壊性甲状腺炎
破壊性甲状腺炎は、甲状腺ホルモンが蓄えられている濾胞と呼ばれる細胞が傷つくことで、甲状腺ホルモンが血液中に過剰に放出されてしまう病気です。
主に以下の2つの分類ができます。
- 亜急性甲状腺炎
- 無痛性甲状腺炎
なお、いずれの場合であっても、血液検査が以下のような結果となる場合には、破壊性甲状腺炎が疑われます。
| 検査項目 | 結果 |
| 甲状腺ホルモン(主にFT₄) | 基準値より高い |
| 甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 基準値より低い(0.1μlU/mL以下) |
| 抗TSH受容体抗体(TRAb) | 陰性 |
亜急性甲状腺炎では、発熱や喉の圧痛(圧迫した場合に痛みが生じること)が見られることが多く、甲状腺ホルモンが過剰に放出されることによる動悸や息切れなども現れます。
これに対して、無痛性甲状腺炎では発熱や喉の痛みを伴わないことが多く、動悸や息切れ、手指の震えなどの症状が現れることが多いです。
いずれの場合でも、甲状腺の濾胞が修復されることによって甲状腺ホルモンの量も次第に正常になるため、数か月程度で自然治癒することがほとんどです。
もっとも、無痛性甲状腺炎の場合には、亜急性甲状腺炎と比較すると再発する頻度も高く、甲状腺機能が永続的に低下してしまう症例が10~20%程度あるとされています。
そのため、甲状腺機能の定期的な検査と生活習慣の改善に取り組むことが大切です。
まとめ
本記事では、甲状腺の病気が疑われる場合に実施される血液検査の項目や甲状腺の病気の診断基準について解説しました。
甲状腺ホルモンの放出量は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)との関連があるため、この2つの項目をセットで測定することで、甲状腺の機能を把握することが可能です。
甲状腺ホルモンは、栄養素の吸収・分解や心臓などの臓器のはたらきを維持・調整する役割があるため、甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで、全身に不調が現れることがあります。
原因の分からない動悸や息切れ、不安感や意欲の低下などが見られる場合には、甲状腺の病気であることも疑い、本記事で解説したような項目について検査を受けることをおすすめします。


