
糖尿病のチェックは自分でできる?糖尿病のリスクが潜むチェック項目や予防のポイントも解説
「糖尿病かどうかを自分でチェックすることはできる?」
「どのような症状が現れているときに病院で検査を受けるべき?」
「糖尿病になるリスクがある生活習慣やチェック項目が知りたい」
生活習慣や原因の分からない不調に不安を抱えている方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるかと思います。
糖尿病は、体の中で糖をうまく吸収・分解できなくなることで、血液中の糖の濃度(血糖値)が高くなることによって発症します。
糖尿病になる原因にはさまざまなものがあり、その中でも生活習慣との関係性も指摘されています。
また、血糖値が高くなると直ちに発症するわけではなく、それが長い間続くことによって、徐々に体に不調が現れるようになるのです。
本記事では、糖尿病を疑うきっかけとなる具体的な症状などについて解説します。
また、糖尿病を発症してしまうリスクがある生活習慣に関するチェック項目についても合わせて解説しています。
糖尿病は一度発症すると、完治を目指すのが難しい病気ですが、生活習慣の改善や適切な血糖値のコントロールによって、症状の進行や悪化を防ぐことが可能です。
原因の分からない不調や症状がある場合には、糖尿病の可能性があることを疑い、専門の医療機関で必要な検査を受けるのがおすすめです。
本記事の内容を通して、ご自身の生活習慣を見直すきっかけとなれば幸いです。
1.糖尿病の主なセルフチェック項目
糖尿病は、血液中の糖の濃度(血糖値)が高い状態が長い間続くことによって、さまざまな症状や病気を引き起こします。
具体的には、以下のような症状が現れている場合には、糖尿病の疑いがあります。
- 尿の回数が多い
- 異常なほどのどが渇く
- 常に疲労感や倦怠感がある
- 体重が急激に減った
- 手足の先が痺れる
- 足がつりやすい
- 傷の治りが遅くなった
- 目のかすみや視力の低下が見られる
もっとも、血糖値の上昇が見られても直ちに発症するわけではなく、それが長期間続くことで徐々にさまざまな症状を引き起こすことに注意が必要です。
糖は唾液に含まれるアミラーゼという酵素のはたらきでブドウ糖に分解され、血液の中に吸収されます。
これによって血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンという物質が放出されます。
インスリンは体の中の細胞にはたらきかけ、ブドウ糖を細胞の中に吸収させる役割を担っているのです。
インスリンのはたらきによって細胞の中に吸収されたブドウ糖は、細胞や組織の活動のためのエネルギー源として消費されます。
そのため、通常であれば、血糖値は一定の水準に維持・調整されるのです。
糖尿病は、インスリンが体の中で作られなくなることや体の細胞へのインスリンの作用が弱まってしまうことによって発症してしまいます。
これによって、血液中のブドウ糖がうまく吸収・分解されなくなり、血糖値が上昇してしまうのです。
インスリンが作られなくなることによるものを1型糖尿病といい、インスリンのはたらきが弱まることによって発症するものを2型糖尿病といいます。
糖尿病のうち、2型糖尿病の割合が95%以上を占め、特に生活習慣の乱れなどが原因となって発症しやすくなるといわれています。
なお、1型糖尿病では急激に症状が現れるものの、2型糖尿病は初期段階では目立った自覚症状がほとんどないことが特徴です。
そのため、2型糖尿病は本人も知らないうちに症状が進行・悪化することが多いことに注意が必要です。
これらの症状にあてはまるものがあれば、内分泌科や糖尿病専門クリニックなどで精密検査を受けることが望ましいです。
(1)尿の回数が多い
血糖値が高い状態が続くことで現れる症状の1つです。
これは、血糖値が高くなると、血管の中と外で濃度の差が生じてしまうことに原因があります。
血管の中と外で濃度の差ができると、体はこれを調整しようと血管の外の細胞から大量の水分を血管の中に取り入れます。
しかし、そうすると、血管の中では通常よりも水分が多い状態になってしまうのです。
これによって、余分な水分を体の中に排出しようとして、尿の量や回数が多くなってしまいます。
特に夜間に何度もトイレに行くなどの状態であれば、糖尿病による症状であることが考えられます。
また、症状が進行・悪化してしまうと、尿の中に余分なブドウ糖が含まれるようになってしまいます。
(2)異常なほどのどが渇く
尿の量や回数が増えると、大量の水分が体の外へ排出されてしまいます。
これによって、体の中の細胞や組織は水分が不足した状態となってしまうのです。
そうすると、体は不足している水分を体の外から補おうとして、口やのどが異常に渇くようになります。
そのため、激しい運動などをしていないにも関わらず、大量の水を飲むような場合には、糖尿病の可能性があります。
(3)常に疲労感や倦怠感がある
インスリンがなくなったり、インスリンのはたらきが弱まったりすることで、体はブドウ糖を吸収してエネルギー源にすることができなくなってしまいます。
そのため、体の細胞や組織はエネルギー不足になってしまい、常に疲労感や倦怠感といった症状に悩まされることになるのです。
特に十分な睡眠や休養をとっているにも関わらず、疲れがとれない場合や体が疲れやすくなった場合には糖尿病の可能性もあります。
もっとも、2型糖尿病の場合には血糖値が高い状態が長く続くことで、徐々に疲れやすさや倦怠感などの症状が現れます。
そのため、加齢などによる症状との見分けがつきにくく、糖尿病であるリスクが見逃されてしまうことが多いです。
特に2型糖尿病は中年期以降に発症することが多いとされているため、更年期障害などと混同されてしまうケースもあります。
そのため、体の疲れやすさを感じるようになった場合には、糖尿病の可能性があることを視野に入れて、内分泌科や糖尿病専門クリニックなどを受診されることを推奨します。
(4)体重が急激に減った
インスリンの量が不足したり細胞への作用が弱められたりすると、体はブドウ糖を吸収することができなくなってしまいます。
これによって、体は筋肉に蓄えられていたタンパク質などをエネルギーとして分解・消費するようになります。
そのため、筋肉の量が低下していき、急激に体重が減っていくことがあるのです。
特に減量などをしていないにも関わらず、6か月から1年の間に体重が4.5㎏以上減っているような場合には糖尿病の可能性があります。
もっとも、がんや胃・腸などの病気によっても栄養素の吸収ができなくなり、体重が急激に減少する症状が見られることにも注意が必要です。
そのため、体重の減少のほかに現れている症状にも注意を払う必要があります。
(5)手足の先が痺れる
糖尿病が進行すると、手や足の先が痺れたり痛みを感じたりすることがあるため、注意が必要です。
これは、血糖値が高い状態が続くことで、血液中のブドウ糖が固まりやすくなってしまい、血管を傷つけたり詰まらせたりしてしまうことに原因があります。
私たちの体の中には、血管が張り巡らされており、動脈などの太い血管と体の末端に広がる細い毛細血管があります。
毛細血管は太い血管と比較すると、傷つきやすくなっており、毛細血管が傷ついたり詰まったりすることで、体の末端の細胞や組織に酸素や栄養素を運ぶことが難しくなってしまいます。
これによって、手足の先の細胞や神経に栄養素がうまく行き届かなくなり、神経の伝達に異常が生じて手足の指先に痺れや痛みなどの症状が現れるのです。
これは、糖尿病によって引き起こされる「糖尿病性神経症」と呼ばれる合併症の症状の1つとして知られています。
糖尿病の合併症は、糖尿病を発症してから5年ほど後に発症することが多いといわれています。
その中でも、糖尿病性神経症は比較的初期の段階で現れることが多いです。
また、通常は足の方から先に痺れや痛みなどの症状が現れ、糖尿病の悪化によって手指にも症状が広がるケースがほとんどです。
なお、糖尿病による手足の痺れは、睡眠時などの安静状態の場合や夜間に現れることが多いことも特徴として挙げられます。
(6)足がつりやすい
血糖値が高い状態が続くと、血液の流れが滞ることで、筋肉へも酸素や栄養素がうまく運ばれなくなってしまいます。
そうすると、筋肉は活動に必要な酸素や栄養素を受け取ることができず、正常にはたらかなくなるだけではなく、筋肉に疲労が貯まりやすくなるのです。
これによって、足の筋肉が強張り、足がつりやすくなることにも注意が必要です。
なお、足の筋肉の強張りも糖尿病性神経症の症状の1つで、比較的初期の段階から現れることにも特徴があります。
もっとも、糖尿病性神経症が進行・悪化することで、足のつりやすさや強張りは現れなくなることにも注意が必要です。
そのため、足の痺れや痛みに加えて、足のつりやすさが現れていたものの、痺れや痛みだけが残っている場合には、糖尿病性神経症が悪化している可能性があるのです。
(7)傷の治りが遅くなった
免疫機能の低下によって、傷口がふさがりにくくなる症状も見られることが多いです。
これは、血糖値が高い状態が長く続くことで、血液の中の白血球と呼ばれる細胞の活動が弱められることに原因があると考えられています。
白血球は、細菌やウイルスなどの異物が体の中に侵入してきた場合にこれを攻撃し、排除する役割を担っています。
しかし、血糖値が高い状態が続くと、白血球の中でも好中球と呼ばれる免疫細胞のはたらきが弱まってしまい、細菌などの感染が起こっても、これを排除することができなくなってしまうのです。
また、手足の痺れや痛みが悪化すると、今度は痛みを感じにくくなってしまいます。
そのため、手足に怪我や傷を負っても痛みを感じることがなくなり、傷の治りにくさも相まって、細菌感染に対する抵抗力が弱まり、組織が壊疽するケースもあります。
そのような場合には、患部を切断しなければならない場合もあるため、注意が必要です。
(8)目のかすみや視力の低下が見られる
糖尿病の症状がさらに進行することで、目のかすみや視力が急激に低下してしまうこともあります。
これは、目の奥にある網膜という組織に異常が発生することに原因があります。
網膜には、毛細血管が張り巡らされています。
高血糖の状態が長く続くことで、網膜にある毛細血管が傷ついたり詰まったりし、酸素や栄養素がうまく運ばれなくなるのです。
そうすると、それを補おうとして新しい血管(新生血管)が作り出されるようになります。
しかし、新生血管は毛細血管よりもさらに細いため、傷つきやすく、これが破れてしまうことで出血が生じ、視力の低下が起こってしまうのです。
これは、「糖尿病性網膜症」と呼ばれる糖尿病の合併症の症状であり、糖尿病性神経症と同様に初期の段階で現れることが多いです。
症状が進行すると、網膜がはがれてしまう網膜剥離が起こるほか、硝子体と呼ばれる組織の中に血液が漏れ出してしまうことがあります。
網膜や硝子体が傷つくと失明するリスクもあるため、注意が必要です。
そのため、定期的に眼科を受診して検査を受けるなどして、目の状態をチェックすることも重要です。
2.糖尿病のリスクが潜む主なチェック項目
上記のような症状が見られない場合にも、以下に該当する場合には注意が必要です。
- 血縁者に肥満あるいは糖尿病の人がいる
- 血糖値が高いと言われたことがある
- 運動習慣がほとんどない
- 食事の時間が不規則
- 野菜や海藻類をあまりとらない
- 脂っこいものや甘いものをよくとる
- 飲酒や喫煙の習慣がある
- 睡眠不足
- ストレスをため込みやすい
特に2型糖尿病は肥満に傾くような生活習慣を持っていると、発症のリスクが高まることが知られています。
これらに当てはまる生活習慣などをお持ちの方は、糖尿病を発症するリスクが高いことを理解しておきましょう。
また、リスクを把握した上で生活習慣の改善などを意識することが大切です。
(1)血縁者に肥満あるいは糖尿病の人がいる
2型糖尿病は、1型糖尿病と比較すると、遺伝による影響が強いことが知られています。
そのため、ご自身が肥満に傾く生活習慣を持っている場合はもちろん、血縁者に肥満や糖尿病の方がいる場合にも注意が必要です。
なお、両親ともに2型糖尿病である場合には、子どもが糖尿病になる確率は40~50%ほどであることが報告されています。
これは、両親ともに1型糖尿病である場合の子どもの発症確率が3~5%程度であることと比較しても、高い水準であるということができるでしょう。
もっとも、遺伝的要因によってすべてが決まるわけではなく、これに生活習慣の乱れが加わることで発症する場合がほとんどです。
そのため、次に述べていくような生活習慣をお持ちの方は特に注意が必要です。
(2)血糖値が高いと言われたことがある
糖尿病は、血糖値が高い状態が長く続くことによって発症します。
そのため、健康診断などで血糖値が高いと指摘されたことがある方は特に注意が必要です。
すでに述べたように、血糖値が高くなることで、直ちに糖尿病を発症するわけではありませんが、それが長期間にわたって続いているような場合には、糖尿病のリスクも高まります。
定期的な健康診断や血液検査で何度か血糖値が高いと指摘されたことがある場合には、糖尿病の発症リスクが高まってることも考えられるため、内分泌科などを受診することも検討しましょう。
(3)運動習慣がほとんどない
定期的に運動を行うことで、細胞や筋肉にブドウ糖が吸収されやすくなり、エネルギー源として消費されます。
しかし、運動の習慣がない場合には、ブドウ糖がエネルギー源として消費されず、血液中に残された状態となってしまいます。
そのため、血糖値が高い状態が続いてしまい、これが糖尿病の発症リスクを高めてしまうのです。
また、運動不足の状態になると、活動に消費されるはずのエネルギーが脂肪などの形で体の中に蓄えられることになります。
余分な脂肪などが筋肉などに蓄えられることによって、インスリンの作用が弱められてしまうことが知られています。
そのため、インスリンの作用が弱められることで、さらに血糖値の上昇が起こってしまうのです。
(4)食事の時間が不規則
食事の時間が不規則な場合には、規則的に食事をとる場合と比較すると血糖値が上昇しやすいことが報告されています。
特に朝食を抜いたり就寝前の食事などのリズムの乱れは、肥満や動脈硬化を引き起こすリスクを高めることも知られています。
これは、1日のうちで食事を抜いた場合、その後の食事の量に偏りが出て、血糖値が上昇しやすくなることに理由があります。
また、就寝前に食事をとると、エネルギーとして消費されずに体の中に脂肪などの形で蓄えられてしまい、肥満の原因となってしまいます。
先ほども述べたように、肥満は2型糖尿病のリスクを高める要因でもあるため、特に注意が必要です。
また、食事のほかに過剰な間食を控えることも血糖値を上昇させないための工夫の1つとなります。
(5)野菜や海藻類をあまりとらない
野菜や海藻類はミネラルや食物繊維を多く含んでいます。
これらの栄養素は糖の吸収を緩やかにするはたらきがあります。
そのため、これらの食品をあまりとらず、炭水化物に偏った食習慣を持っている場合には、血糖値の上昇が持続的に起こる可能性があるのです。
なお、野菜の中でもじゃがいもやトウモロコシは糖質を多く含んでいるため、食べすぎには注意が必要です。
血糖値を上げないためには、野菜の中でもキャベツやほうれん草、ブロッコリーなどの食物繊維を多く含むものを優先的にとるのが適しています。
また、きのこ類も食物繊維を多く含んでおり、血糖値の上昇を緩やかにするはたらきが期待できるほか、インスリンの材料となる亜鉛を豊富に含んでいるのが特徴です。
このように、普段から摂取している食品の成分などにも注意を払うことが大切です。
(6)脂っこいものや甘いものをよくとる
油や砂糖を多く含むものは高カロリーであり、これらを日常的に多く摂取している場合には肥満のリスクが高まります。
また、肥満になるとインスリンの作用が弱められてしまう「インスリン抵抗性」が高まってしまい、血糖値が高くなっても、これを抑えることができなくなってしまいます。
そのため、血糖値が高い状態が続くことで、糖尿病のリスクが増大してしまうのです。
(7)飲酒や喫煙の習慣がある
飲酒や喫煙の習慣がある場合には、2型糖尿病を発症するリスクが高まることが知られています。
お酒に含まれるアルコールは糖質が多く含まれているため、過度な飲酒によって血糖値が上昇してしまいます。
また、アルコールには食欲を増進させるはたらきがあり、高カロリーなおつまみを同時に摂取することで、肥満のリスクが高まることにも注意が必要です。
そのため、適度な量のアルコール摂取や糖質を含まない低カロリーなおつまみなど、血糖値を上げないための工夫も必要となります。
なお、喫煙の習慣については、高血圧や肺がんのリスクを高めることが知られていますが、糖尿病にも影響を与えることに注意が必要です。
これは、タバコに含まれるニコチンが交感神経を刺激して、心拍数を増加させたり血圧を上昇させたりすることに原因があります。
これによって、血糖値も上がってしまい、特に日常的に喫煙の習慣がある人は血糖値が高い状態のままとなってしまうのです。
また、喫煙の習慣はインスリン抵抗性を高めることも知られています。
そのため、飲酒と喫煙の習慣をお持ちの方は、定期的に健康診断を受けることも検討しましょう。
(8)睡眠不足
睡眠はインスリンの感受性を高めるために重要な要素の1つとされています。
そのため、睡眠不足に陥ると、インスリンの作用が弱まってしまい、血糖値の上昇を抑えることができなくなってしまう可能性が高まります。
具体的には、7~8時間程度の睡眠をとっている人が最も糖尿病のリスクが低いことが報告されています。
睡眠時間が5時間以下の場合には、2型糖尿病の発症リスクが約2.5倍まで高まってしまうことも知られています。
そのため、十分な睡眠を確保することが糖尿病のリスクを軽減することにつながります。
もっとも、過度に睡眠をとってしまうと却って糖尿病のリスクが高まってしまうため、注意が必要です。
具体的には、1日に9時間以上睡眠をとっている人は、糖尿病の発症リスクが約1.8倍まで高まってしまうのです。
このように、睡眠時間は短すぎても長すぎても糖尿病のリスクを高めてしまいます。
そのため、適切かつ十分な睡眠習慣を身につけることが大切です。
(9)ストレスをため込みやすい
毎日のようにストレスを感じることで、糖尿病のリスクが高まります。
私たちはストレスを感じると、体の中でアドレナリンやコルチゾールと呼ばれるホルモンが放出されます。
これは心臓や血管にはたらきかけ、心拍数の増加や血圧の上昇を促進する役割を担っているのです。
また、これらのホルモンは体の細胞にエネルギーを供給するはたらきも担っており、肝臓にはたらきかけて糖を放出させます。
ストレスをため込みやすく、日常的にストレスを感じているような場合には、これらのホルモンが絶えず放出されている状態となってしまい、血圧や血糖値が上昇してしまいます。
また、ストレスが原因で生活習慣や食習慣が乱れることによって、過食など肥満に陥る行動をとってしまうリスクも高まります。
さらに、自律神経の乱れから睡眠の質が低下してしまう要因にもなります。
このように、ストレス自体が糖尿病のリスクに関わるだけではなく、ストレスがトリガーとなってほかの糖尿病のリスクを高めることにつながるため、注意が必要です。
3.糖尿病の可能性を判断するための検査項目
上記のような症状が現れている場合や生活習慣がある場合には、糖尿病になっている可能性や糖尿病になってしまうリスクが高いといえます。
もっとも、糖尿病であるかどうかは検査を行わなければ分からないということが多いです。
すでに現れている症状や生活習慣などから、糖尿病の可能性が疑われる場合には、以下のような検査を行い、判断がされます。
- 血液検査
- 尿検査
これらの検査は、健康診断などでも実施される項目が含まれています。
そのため、普段から健康診断を受診し、その結果に注意を払うことで、糖尿病のリスクを把握することが可能です。
ご自身の体調や生活習慣などから糖尿病を発症する不安をお持ちの方は、なるべく早期に内分泌科や糖尿病専門クリニックで精密検査を受けるのがおすすめです。
(1)血液検査
糖尿病は、血糖値が高い状態が長く続くことで発症する病気です。
そのため、血液検査を行い、血糖値の測定をすることでほぼ糖尿病であるかどうかの判断をすることができます。
糖尿病であるかどうかを判断する際に特に参照される項目は、以下の3つです。
- 空腹時血糖値
- 食後血糖値
- HbA1c
順にご説明します。
#1:空腹時血糖値
食事をとっていない状態の血糖値を測定します。
具体的には、最後に食事をとってから10時間以上が経過している時点での血糖値です。
基準値とそれに基づく判定は、以下に基づいて下されます。
判定 | 空腹時血糖値の範囲 | |
正常型 | 正常 | 100㎎/dL未満 |
正常高値 | 100~109㎎/dL | |
境界型 | 110~125㎎/dL | |
糖尿病型 | 126㎎/dL以上 |
なお、「境界型」と呼ばれる分類は、「糖尿病の疑いが否定できない」ものをいい、糖尿病予備群ともいわれます。
この値が測定された場合には、次に述べる食後血糖値やHbA1cの値を合わせて測定し、糖尿病であるかどうかの判断が下されることになります。
#2:食後血糖値
食事をとってから2時間後の血糖値を測定します。
検査の際には、75gのブドウ糖を含んだ水を飲み、2時間後の血糖値を測定するブドウ糖負荷試験が行われることがあります。
判定基準は、以下の通りです。
判定 | 食後血糖値の範囲 | |
正常型 | 140㎎/dL未満 | |
境界型 | 140~199㎎/dL | |
糖尿病型 | 200㎎/dL以上 |
なお、空腹時血糖値が正常値の範囲であったとしても、食後血糖値が高い場合には注意が必要です。
血液中にブドウ糖が吸収されると、通常であればインスリンが放出されるため、血糖値は徐々に低くなっていきます。
しかし、食後血糖値が高い場合には、インスリンがうまくはたらいていない可能性があるのです。
そのため、空腹時血糖値か食後血糖値のどちらかが基準値を超えている場合には、糖尿病の診断が下されることが多いです。
#3:HbA1c
血液中に含まれるHbA1c(グリコヘモグロビン)というタンパク質の濃度を測定する検査です。
HbA1c(グリコヘモグロビン)は、血液の成分の1つであるヘモグロビンにブドウ糖が結合したものを指します。
基準値については、以下の通りです。
判定 | HbA1cの範囲 | |
正常型 | 正常 | 5.6%未満 |
正常高値 | 5.6~5.9% | |
境界型 | 6.0~6.4% | |
糖尿病型 | 6.5%以上 |
ブドウ糖が一度ヘモグロビンに結合すると、ヘモグロビンの平均的な寿命である120日を過ぎない限りは分離しません。
そのため、HbA1c(グリコヘモグロビン)の濃度が高い場合には、持続的に血糖値が高い状態を意味するのです。
このように、空腹時血糖値や食後血糖値とは異なり、検査を行った日の過去2~3か月間の血糖値の評価ができるところに特徴があります。
(2)尿検査
尿検査では、主に尿に糖が含まれている(尿糖)かどうかを調べます。
通常であれば、血液中のブドウ糖は腎臓の尿細管で再吸収され、尿に糖が流出することはほとんどありません。
具体的には、腎臓の中にある糸球体という器官でブドウ糖がろ過され、近位尿細管という器官で再吸収が行われるからです。
しかし、近位尿細管で再吸収されるブドウ糖の量には上限があるため、血糖値が上昇した状態では、近位尿細管での再吸収量の上限を上回ってしまいます。
そのため、上限を上回った分だけブドウ糖が尿の中に流出してしまうのです。
一般的に、血糖値が160~180mg/dLになると、尿糖が見られることが多く、尿糖の検査が陽性になると糖尿病の可能性が強く疑われます。
このほか、タンパク尿であるかどうかを調べる尿タンパク検査や尿中アルブミン検査が行われることもあります。
4.糖尿病を予防するためのポイント
糖尿病のうち、2型糖尿病は遺伝的な要因のほかに生活習慣に関する要因が加わることによって発症します。
そのため、生活習慣の見直しや改善を図ることで、2型糖尿病の予防をすることは十分に可能です。
具体的には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 食習慣を見直す
- 適度な運動習慣を身につける
- 禁煙・禁酒する
なお、これらのポイントは、すでに糖尿病の治療を開始されている方が症状の進行や悪化を防ぐためにも効果的です。
また、一時的ではなく継続的に取り組むことが何よりも重要なことも把握しておきましょう。
(1)食習慣を見直す
糖尿病を予防するためには、血糖値の上昇を抑えることが何よりも重要です。
そのため、血糖値の上昇や肥満の原因となるような炭水化物(糖質)や脂質のとりすぎには注意しましょう。
これらの栄養素を含む食品をとるときには、食物繊維やミネラルなどを多く含む野菜や海藻類、きのこ類などと合わせて摂取するのがおすすめです。
また、食事のタイミングも意識しましょう。
具体的には、1日に3食バランスよくとることが重要です。
このほか、少なくとも1食20分程度の時間をかけてゆっくり食べることや就寝の3時間前までに食事を済ませることなども大切です。
なお、食事の際には血糖値を上昇させないような食べ方を意識しましょう。
具体的には、食物繊維を多く含む野菜などを最初に食べ、次に肉や魚などのタンパク質をとり、炭水化物(糖質)を最後にとることで、血糖値が上がりにくくなります。
このように、栄養素のバランスだけでなく、サイクルや食事のとり方など、食習慣を全般的に見直すことが血糖値のコントロールと糖尿病の予防に大きな効果をもたらします。
(2)適度な運動習慣を身につける
運動習慣を身につけることで、体の中のブドウ糖がエネルギー源として変換・消費されます。
これによって、血糖値の上昇を抑えることにつながるのです。
例えば、軽いジョギングやウォーキングなどの有酸素運動がブドウ糖の消費に効果的であることが知られています。
また、筋肉をつけることで、血液中の余分なブドウ糖を筋肉に蓄えることができ、血糖値を抑えることにもつながります。
具体的には、スクワットや筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を行うことも血糖値を上昇させないために効果的です。
さらに、筋肉をつけることはインスリンの作用を高めることにもつながります。
そのため、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせることでこれらの効果を最大限に引き出すことも可能です。
また、一時的に行うのではなく、無理のない範囲で持続させることが最も大切です。
(3)禁煙・禁酒する
先ほども述べたように、飲酒と喫煙の習慣は糖尿病の発症リスクを高めることが知られています。
特にアルコールは糖質を含み、食欲を増進させるはたらきもあるため、知らず知らずのうちに過剰に糖質や脂質などの栄養を摂取してしまう場合があります。
なお、糖質を含まない蒸留酒(ウイスキーや焼酎)は血糖値が上がりにくいお酒ですが、アルコールの分解の際に肝臓に負担をかけてしまいます。
そのため、あまり多く飲みすぎないように注意が必要です。
また、喫煙の習慣は糖尿病だけでなく、ほかの病気のリスクも高めてしまいます。
これらの習慣をお持ちの方は、禁煙や禁酒をすることによって、糖尿病はもちろん、ほかの病気の予防にもつながることを押さえておきましょう。
まとめ
本記事では、糖尿病の可能性がある症状のチェック項目や糖尿病のリスクがある生活習慣などについて解説しました。
糖尿病は、血糖値が高い状態が長期間にわたって続くことで発症します。
そのため、血糖値の上昇を抑えることができれば、予防をすることが十分に可能です。
また、血糖値の適切なコントロールは糖尿病の症状の進行・悪化を防ぐためにも効果的です。
本記事で紹介したような症状が現れている方や生活習慣に不安がある方は、なるべく早期に内分泌科や糖尿病専門クリニックを受診されることをおすすめします。