喉が痛い場合は甲状腺の病気?痛みがある甲状腺の病気や注意点も解説

「喉が痛く、発熱があるが、いつもの風邪と少し違う気がする」
「喉の片側だけが痛いなど、普段の風邪と比べると違和感がある」
「どのような症状がある場合に甲状腺の病気の可能性があるのか知りたい」

喉に痛みがある方の中には、上記のような疑問や不安をお持ちの方もいるかと思います。

甲状腺は、喉仏の下あたりにある器官で、この部分に炎症が発生することで痛みが生じることがあります。

そのため、甲状腺の部分に痛みがある場合には、甲状腺の病気である疑いがあります。

甲状腺では、私たちの体の組織や器官の活動を維持・調整するために重要な甲状腺ホルモンが作られています。

甲状腺の病気を放置することで、体への影響が長期間にわたって現れる可能性もあるため、注意が必要です。

もっとも、甲状腺の病気には特有の症状が少なく、ほかの病気の症状と似たものも多くあります。

そのため、風邪などのほかの病気と間違われてしまい、発見が遅れるケースが多く見られます。

本記事では、甲状腺に痛みが見られる場合に考えられる甲状腺の病気や症状、注意点などについて解説します。

また、喉や甲状腺に痛みがあり、医療機関を受診する際に押さえておくべきポイントについても合わせて解説します。

喉に痛みがあり、上記のようなお悩みをお持ちの方が、適切な診療科を受診される際の参考となれば幸いです。

1.甲状腺に痛みがある場合に考えられる主な病気

甲状腺は、喉仏の下あたりにある器官です。

喉の少し下の方に痛みがある場合には、甲状腺の病気が原因である可能性があります。

主に考えられる甲状腺の病気は、以下の通りです。

甲状腺に痛みがある場合に考えられる甲状腺の病気

  1. 亜急性甲状腺炎
  2. 急性化膿性甲状腺炎
  3. のう胞内出血
  4. 慢性甲状腺炎(橋本病)
  5. 甲状腺腫瘍

甲状腺の痛みは、喉や首回りに現れることから、風邪などのほかの病気と間違われてしまうことが多いです。

耳鼻咽喉科などを受診し、治療を続けても症状が改善しない場合には、甲状腺の病気である可能性が高いです。

そのため、症状の経過を見ながら、必要に応じて内分泌科や甲状腺外科などを受診されることを推奨します。

(1)亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症反応が現れることで生じます。

炎症反応とは、細胞が傷つくことに対する体の防御反応のことをいいます。

亜急性甲状腺炎では、甲状腺の細胞が傷つくことによって炎症反応が引き起こされますが、細胞が傷つけられてしまう原因が明らかではないケースもあり、ウイルスの感染によって引き起こされるとの見方もあります。

ウイルスなどの感染によって細胞が傷つけられてしまうと、細胞からプロスタグランジンという物質が放出されます。

この物質には、腫れや痛みを引き起こす成分が含まれているため、これによって痛みの症状が現れるのです。

甲状腺の組織や細胞には、体の中の組織や臓器の活動を活発化させる甲状腺ホルモンが蓄えられているため、細胞が破壊されることで、甲状腺ホルモンが血液中に過剰に放出されてしまいます。

これによって、体の中の細胞や組織の活動が通常よりもはたらきすぎてしまい、甲状腺の痛みのほかに動悸や息切れ、疲労感、甲状腺の腫れなどの症状が見られることが多いです。

痛みの程度については、ものを飲み込む際に感じるといった軽度のものから、何もしなくても痛みを感じるような重度のものまで、さまざまなものがあります。

また、症状が進行すると、次第に耳などにまで痛みが拡大するケースも見られます。

なお、亜急性甲状腺炎では、通常は左右のどちらか片方のみが腫れることが多いです。

しかし、症状の進行とともに反対側に腫れが広がる「クリーピング現象」と呼ばれる症状が見られることもあります。

これは亜急性甲状腺炎に特有の症状であり、しばしばほかの甲状腺の病気との区別をする際に基準とされることも多いです。

発熱の症状については、微熱であることが多いですが、時には高熱をともなうこともあり、発熱の症状が現れないケースもあります。

喉の痛みや腫れ、発熱といった症状から、風邪と間違われることが多いです。

また、一般的に2~4か月程度で自然治癒することがほとんどであるため、甲状腺の病気であると気づかれにくいことも特徴といえます。

なお、亜急性甲状腺炎は症状が軽度である場合には経過観察を行い、症状が重度の場合にはステロイド薬や非ステロイド薬による薬物療法が行われることが一般的です。

これは、体の中の免疫反応を抑えて、炎症反応を和らげることを目的としています。

免疫反応とは、体の中にウイルスなどの異物が侵入した際に、これを排除しようとするはたらきです。

免疫反応が過剰にはたらきすぎていると、却って炎症が長引くことがあり、短期間であれば免疫反応を抑制することで早期に炎症反応を抑えることにつながります。

また、ステロイド薬には傷ついた細胞を修復するはたらきもあるため、炎症反応を抑えつつ細胞の修復を図ることで、早期に完治することが期待できます。

(2)急性化膿性甲状腺炎

急性化膿性甲状腺炎は、亜急性甲状腺炎と似た症状をもつ甲状腺の病気です。

しかし、発症の原因は亜急性甲状腺炎とは異なり、細菌の感染によるものです。

また、生まれつき喉の奥に管状の穴(下咽頭梨状窩瘻)があることが感染の原因であることも指摘されています。

このほか、以前から存在している甲状腺の腫瘍が原因となって引き起こされる場合もあります。

発熱や甲状腺の痛みなど、亜急性甲状腺炎と似たような症状が現れるため、混同されるケースも見られます。

細菌はウイルスとは異なり、自ら増殖することで、感染を拡大していきます。

そのため、感染の拡大を止めるためには、免疫機能を担う好中球やリンパ球が有する殺菌作用によって細菌を排除していくことが重要です。

しかし、亜急性甲状腺炎と間違われてステロイド薬などが投与されると、免疫機能が抑制され、細菌の増殖を助長し、炎症が悪化してしまう可能性があります。

もっとも、急性化膿性甲状腺炎は12歳以下の小児に多いなどの特徴があるため、耳鼻咽喉科や内分泌科などの適切な診療科を受診することで区別をすることが可能です。

抗菌薬や抗生物質などの投与と化膿部分を切開して膿を出す排膿によって治療が行われます。

また、喉の奥に管状の穴(下咽頭梨状窩瘻)が残った状態であれば、再発するリスクがあるため、この部分を摘出または閉鎖する処置がとられることが多いです。

(3)のう胞内出血

のう胞とは、液体の詰まった袋状の組織です。

内部で出血などが生じると、痛みを伴って甲状腺にしこりができることがあり、喉や甲状腺への物理的な衝撃によって起こることがあります。

亜急性甲状腺炎と比べると、発熱や痛みの程度は軽度であることがほとんどであり、出血も自然と治癒することがほとんどです。

また、出血も自然と吸収され、それに伴って痛みやしこりも収まることがほとんどを占めます。

もっとも、のう胞が大きく腫れたりして気管などのほかの組織や器官を圧迫する場合には、のう胞内に貯まった水分を吸引する外科的処置などがとられる場合もあります。

(4)慢性甲状腺炎(橋本病)

慢性甲状腺炎は橋本病とも呼ばれ、慢性的な炎症反応を伴う甲状腺の病気です。

亜急性甲状腺炎とは異なり、ウイルスなどの感染ではなく、自己免疫反応によって発症します。

そのため、慢性的な炎症反応が生じ、甲状腺全体に腫れが見られ、これによって圧迫されるような痛みを伴う場合があります。

甲状腺から放出される甲状腺ホルモンを異物と判断してしまい、甲状腺ホルモンに対する自己抗体が作られ、これが甲状腺を破壊してしまうことで、甲状腺ホルモン量が低下してしまいます。

甲状腺ホルモンには、体の中の組織や臓器にはたらきかけ、タンパク質や脂質などの栄養素を吸収・分解して体が正常に機能することを助ける作用があります。

また、心臓の収縮や心拍数の増加、自律神経系のはたらきを促進する役割も担っています。

そのため、甲状腺ホルモンが不足することで、橋本病では主に以下のような症状が見られます。

なお、橋本病は男性よりも女性に多いのが特徴でもあり、基礎代謝の低下による便秘や無月経などの症状が現れることも多いです。

不妊治療のための精密検査を受診したところ、橋本病であることが判明するケースも見られます。

橋本病では、甲状腺ホルモンの量が不足しているため、甲状腺ホルモン薬の投与による薬物療法がとられることが一般的です。

(5)甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、特に悪性腫瘍は甲状腺がんとも呼ばれています。

腫瘍とは、細胞が過剰に増加あるいは大きくなった状態をいいます。

通常であれば、細胞の増殖や成長は一定になるように保たれていますが、そのコントロールが効かなくなることによって生じるのが甲状腺腫瘍です。

橋本病とは異なり、甲状腺の一部にしこりができる場合が多く、そのスピードも比較的緩やかな場合が多いです。

初期は自覚症状が少なく、しこりが大きくなることで気管などのほかの器官を圧迫することで初めて気づく場合もあります。

また、腫瘍が大きくなると、喉に圧迫感や痛み、ものが飲み込みにくくなるといった症状が見られることもあります。

甲状腺にできる腫瘍のうち90%ほどが良性のものですが、甲状腺がんである場合もあり、区別が難しい場合も多いです。

甲状腺がんは、ほかの組織にできるがんとは異なり、進行も比較的緩やかですが、中には悪性度の高いものもあります。

そのため、甲状腺にしこりが見られ、それが短期間で大きくはなっていない場合でも、がんではないと言い切ることができないことに注意が必要です。

特に甲状腺がんの場合には、ほかの組織や臓器に転移する可能性もあるため、甲状腺や喉に違和感がある場合には、内分泌科や甲状腺外科などの専門機関を受診することが重要です。

なお、良性腫瘍の場合には、経過観察による対処療法が行われることが一般的ですが、腫れやしこりが大きい場合や甲状腺がんの場合には摘出手術などの外科的処置が行われることがほとんどです。

2.亜急性甲状腺炎に関する注意点

甲状腺に痛みを伴う病気は、上記で見たようにいくつかありますが、その中でも多いのが亜急性甲状腺炎です。

亜急性甲状腺炎には、以下のような特徴があります。

亜急性甲状腺炎に関する特徴と注意点

  1. 風邪と間違われるケースがある
  2. 痛みが甲状腺全体や耳に広がることがある
  3. 男性よりも女性の方がかかりやすい

順にご説明します。

(1)風邪と間違われるケースがある

亜急性甲状腺炎で現れる代表的な症状は、発熱や喉の腫れ・痛みなどです。

また、甲状腺ホルモンが血液中に過剰に放出されることで、心臓や血管のはたらきが過剰に促進され、動悸や疲労感などの症状も現れます。

炎症反応による症状と甲状腺ホルモンの過剰による症状の双方が、風邪の症状に近いため、しばしば風邪と間違われてしまうケースがあります。

また、甲状腺ホルモンが過剰に放出されたことによる症状は、甲状腺の細胞がどの程度傷つけられているかによっても異なり、比較的軽症であると自覚症状に乏しい場合もあります。

そのため、風邪と自己判断して放置してしまうケースも見られます。

亜急性甲状腺炎は、症状が軽度である場合には治療をしなくても軽快することがあり、長くても数か月で完治する場合がほとんどです。

もっとも、稀に重症化するケースや慢性的な甲状腺機能の低下を招くケースもあるため、自己判断するのではなく、専門医を受診することが重要です。

(2)痛みが甲状腺全体や耳に広がることがある

亜急性甲状腺炎では、甲状腺の右側あるいは左側のどちらか片方のみに痛みや腫れが生じることがほとんどです。

もっとも、症状の進行に伴い、痛みや腫れが反対側に移ったり、耳や鼻などにまで痛みが拡大するケースもあります。

特に腫れが甲状腺の反対側に移ることを「クリーピング現象」といい、亜急性甲状腺炎に特徴的な症状であるため、ほかの甲状腺の病気との区別をする際の基準となることもあります。

また、顎や胸に痛みが広がる場合もあるため、痛みの移動が見られる前に適切な治療を行うことが重要です。

(3)男性よりも女性の方がかかりやすい

亜急性甲状腺炎は、男性よりも女性の方がかかりやすいといわれています。

これは甲状腺の病気全般にいえることですが、亜急性甲状腺炎は主に30~40代の女性に多く見られます。

男性よりも女性に多く見られる原因についてははっきりしていないことも多いですが、自己免疫のはたらきに原因があるとの指摘もあります。

また、生活習慣や慢性的なストレスなども甲状腺の病気の発症に何らかの影響を与える可能性があるため、食生活やストレス管理も重要です。

なお、男性であっても油断はできず、甲状腺の病気を発症することがあります。

特に亜急性甲状腺炎は1~3月、6~9月など、冬や夏の時期に特定のウイルスによる病気が流行しているときに集団発生することが多いです。

そのため、上記のような時期に風邪に似た症状が見られる場合には、甲状腺の病気であることも視野に入れ、適切な診療科を受診することが大切です。

3.甲状腺に痛みがある場合の検査方法

甲状腺に痛みがある場合には、いくつかの病気の可能性が考えられます。

診察は問診と触診によって行われることが一般的です。

触診とは、腫れや痛みがある部分を直接触って腫れの大きさや様子を調べる診察方法です。

例えば、亜急性甲状腺炎では、腫れやしこりがある部分を手で押すと痛みがある「圧痛」という症状がしばしば見られます。

もっとも、問診と触診のみでは病気の原因を特定できない場合もあるため、甲状腺の病気が疑われる場合には、以下のような検査も合わせて行われることが多いです。

甲状腺の病気が疑われる場合に行われる主な検査

  1. 血液検査
  2. アイソトープ検査(甲状腺シンチグラフィ)
  3. 超音波検査

それぞれの内容について解説します。

(1)血液検査

血液検査では、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を調べます。

特に甲状腺機能が正常にはたらいているかを判断する際には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度と合わせて測定されることが多いです。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺ホルモンが作られる量を調整するはたらきを担います。

脳にある下垂体前葉と呼ばれる部分で作られ、血液中の甲状腺ホルモン濃度が低いと検知した場合には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を放出します。

これによって、甲状腺で甲状腺ホルモンが作られ、血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常に保たれます。

逆に血液中の甲状腺ホルモン濃度が高い場合には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出が抑制され、これによって甲状腺ホルモンの量が減少し、正常になります。

このように、甲状腺ホルモンが作られる量や血液中の濃度には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が大きく関わります。

例えば、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が低いにも関わらず、血液中の甲状腺ホルモン濃度が高い場合には、上記のような調整機能が正常にはたらいていないことを意味するのです。

また、橋本病のように、甲状腺ホルモンの量に自己免疫機能が関わっている場合もあります。

そのため、甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対する自己抗体が作り出されているか否かを血液検査によって調べる場合もあります。

(2)アイソトープ検査(甲状腺シンチグラフィ)

アイソトープ検査は、甲状腺シンチグラフィとも呼ばれ、放射性ヨウ素を用いた検査方法です。

甲状腺ホルモンは甲状腺の濾胞という小さな袋状の組織で作られます。

濾胞の中には甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素が蓄えられています。

濾胞の中のヨウ素は主にわかめや昆布などの海藻類、魚介類などを摂取することで蓄えられますが、甲状腺には放射性ヨウ素も同じように取り込む性質があります。

この性質を利用して、放射性ヨウ素を含むカプセルを飲み、一定時間が経過した後にどの程度の量の放射性ヨウ素が取り込まれているかを測定することで、甲状腺が正常に機能しているかを把握します。

具体的には、血液検査の結果のみでは甲状腺の病気を特定できない場合などに行われます。

例えば、血液検査の結果、血液中の甲状腺ホルモン濃度が高いことが計測できても、その原因が甲状腺ホルモンが過剰に作られていることにあるのか、甲状腺の濾胞が破壊されていることにあるのか、見分けることが必要となることがあります。

そのような場合には、アイソトープ検査を実施することで、甲状腺の様子を調べることが可能です。

検査結果は画像として処理され、放射性ヨウ素が取り込まれた部分が濃く映ります。

検査の結果、甲状腺に取り込まれる放射性ヨウ素の量が極端に少ない場合には、濾胞自体が破壊されていることが原因であると考えることができ、病気の特定に至ることがあります。

もっとも、アイソトープ検査は放射性物質を利用して行うため、妊娠の可能性がある方や授乳中の方は検査を受けることができません。

また、放射性ヨウ素も通常のヨウ素も同じように甲状腺に取り込まれることから、検査結果に影響を及ぼさないために検査前はヨウ素を含む食品や薬の摂取も控える必要があります。

(3)超音波検査

超音波検査では、超音波を使って甲状腺の腫れやしこりの大きさなどを調べます。

甲状腺に超音波をあて、跳ね返ってきた反射波を電気信号に置き換え、画像として表示することで、甲状腺の状態を把握することが可能です。

X線を用いるレントゲン検査と比べると、放射線による影響がなく、痛みも生じないため、体への負担が少ない検査であるといえます。

また、腫れやしこりの大きさ・形だけでなく、それが炎症反応によるものか、それとも腫瘍によるものかを見分けることができます。

例えば、亜急性甲状腺炎の場合には、痛みを伴う箇所と一致した部分に低エコー領域が認められることが多く、これによってほかの甲状腺の病気とほぼ見分けることが可能です。

特に甲状腺や喉に痛みがある場合には、腫れやしこりも見られるケースが多いです。

血液検査と合わせて超音波検査を行うことで、腫れやしこりの状態を観察することができ、甲状腺の病気の特定につながることがあります。

4.甲状腺の痛みで医療機関を受診する際のポイント

甲状腺に痛みがある場合には、亜急性甲状腺炎や甲状腺がんなどの病気である可能性があります。

これらの病気は、適切な検査や治療を行うことで、症状が改善あるいは完治することも少なくありません。

そのため、甲状腺に痛みなどの異変を感じたら、風邪などと自己判断せずに医療機関を受診し、必要な検査や治療を受けることが何よりも重要です。

具体的には、以下のポイントを押さえておきましょう。

甲状腺の痛みで医療機関を受診する際の主なポイント

  1. 耳鼻咽喉科あるいは内分泌科を受診する
  2. 喫煙や飲酒などの生活習慣について伝える
  3. 家族の病歴を把握しておく

順にご説明します。

(1)耳鼻咽喉科あるいは内分泌科を受診する

甲状腺や喉に痛みがある場合には、まずは耳鼻咽喉科などの専門の診療科を受診することがおすすめです。

甲状腺は喉仏の下あたりにありますが、深い位置にあり、一般的に腫れやしこりが大きくなければ触知できないといわれることがあります。

また、甲状腺の腫れが初期から見られることは稀で、発熱と痛みのみが現れることがほとんどであるため、まずは風邪の可能性を視野に入れて耳鼻咽喉科を受診するのが最適なことが多いです。

もっとも、治療をはじめてから甲状腺に腫れやしこりが現れた場合、体重の変化などの症状が現れた場合には注意が必要です。

意図しない体重の増加や減少は、甲状腺ホルモン量の増減による代謝異常に原因がある可能性が高まります。

そのため、症状に異変が現れた段階で速やかに内分泌科などの専門の診療科を受診することをおすすめします。

特にしこりが大きくなってきた場合には、甲状腺がんの可能性が考えられる場合もあります。

判断に迷う際には、まずは内分泌科を受診し、必要に応じて自覚症状を医師に伝えることが大切です。

(2)喫煙や飲酒などの生活習慣について伝える

医療機関を受診する際には、喫煙や飲酒などの習慣についても医師に伝えておくことが重要です。

甲状腺がんに関わらず、一般的に喫煙の習慣はがんに影響を及ぼすことが指摘されています。

喫煙の習慣がある場合には、甲状腺にしこりが見られるケースにおいて、甲状腺がんの可能性も視野に入れて検査を行うこともできます。

甲状腺がんは、ほかの臓器にできるがんと比べると進行が緩やかである場合がほとんどで、早期発見に至ることで適切な治療を行うことが可能となるのです。

また、甲状腺の病気は食生活や慢性的なストレスなど、生活習慣による影響があることも指摘されています。

食生活に関しては、ヨウ素を多く含む食品や薬を常用しているかどうかについても伝えるようにしましょう。

甲状腺ホルモンはヨウ素を材料として作られることから、ヨウ素の摂取量が不足すると、体の中で作られる甲状腺ホルモンの量が低下する場合があります。

また、過剰に摂取することで、甲状腺ホルモンが作られるはたらきを妨げてしまい、却って甲状腺ホルモンが不足してしまうことになってしまいます。

そのため、適切なヨウ素の摂取ができているかどうかも重要です。

なお、ヨウ素は食品だけでなく、医薬品や健康食品にも含まれている場合があります。

医療機関を受診する際には、このような医薬品や健康食品を常用しているか否かについても伝えるようにしましょう。

(3)家族の病歴を把握しておく

甲状腺の病気は、遺伝的要因によっても発症するといわれています。

そのため、家族に甲状腺の病気になったことがある方がいるかどうかも確認しておくことが重要です。

近しい家族や親族に甲状腺の病歴がある方がいることは、直ちに甲状腺の病気であることを示すものではありませんが、診断の際に参考とされることもあります。

まとめ

本記事では、喉や首回りに痛みがある場合に考えられる甲状腺の病気や甲状腺の痛みで医療機関を受診する際のポイントなどについて解説しました。

喉の下あたりには甲状腺があるため、その部分に痛みがある場合には甲状腺の病気である可能性があります。

また、甲状腺に痛みがあるものの多くは亜急性甲状腺炎ですが、それ以外の病気の可能性も考えられます。

甲状腺の病気には特有の症状が少なく、風邪などのほかの病気と間違われて発見が遅れることもあるため、なるべく早期に専門の医療機関を受診する必要があります。

また、甲状腺の病気は生活習慣や遺伝など、複数の要因が関わって発症することがあるため、医療機関を受診する際にはこれらについても医師に伝えるようにしましょう。