甲状腺の機能が低下したらどのような症状が出る?機能低下を引き起こす病気や予防法も解説

「甲状腺の機能が低下するとどうなるのか?」
「最近、体がだるく疲れやすいのは甲状腺の病気のせい?」
「甲状腺の病気にならないためにはどのような点に気を付ければよいのか知りたい」

体の疲れやすさや不調に悩まされている方の中には、甲状腺の病気である可能性を疑っている方もいるかと思います。

甲状腺は体の中の細胞や組織の活動を助けるはたらきがあるため、甲状腺の機能が低下することで、体のあらゆる場所に不調が生じてしまいます。

その影響は、基礎代謝の低下から臓器のはたらきの低下、心のはたらきの停滞など、多岐にわたります。

本記事では、甲状腺の機能が低下した場合に生じる主な症状や甲状腺機能が低下する原因について解説します。

また、治療を行う際の注意点や予防方法についても合わせて解説します。

体の何気ない不調から甲状腺の病気の可能性を考え、検査や受診のきっかけとなれば幸いです。

1.甲状腺のはたらきと機能が低下した場合に生じる主な症状

甲状腺は、体のさまざまな細胞や組織のはたらきを活性化させ、私たちが健康的に日常を送るために欠かせない器官です。

喉仏の下あたりにある小さな器官ですが、甲状腺の中で作られる甲状腺ホルモンと呼ばれる物質が体の細胞や組織にはたらきかけることによって、基礎代謝の維持・調整に関わっています。

甲状腺の機能が低下してしまうと、この甲状腺ホルモンの量が不足することで、体のはたらきが停滞してしまいます。

以下では、甲状腺のはたらきと甲状腺機能が低下した場合に生じる症状について解説します。

(1)甲状腺のはたらき

甲状腺は、濾胞と呼ばれる小さな袋状の組織が集まってできています。

この濾胞の中では、ヨウ素を材料として甲状腺ホルモンと呼ばれる物質が作られ、蓄えられています。

甲状腺ホルモンは血液中に放出されると、血液の流れに乗って体中に運ばれます。

私たちの細胞や組織の活動は、体の中で作られるホルモンという物質によって維持・調整されており、甲状腺ホルモンもそのような物質の1つです。

甲状腺ホルモンは、肝臓で消費されるタンパク質や脂質の量を促進し、新しい細胞が作られるはたらきを活発化させたり、心臓や血管の作用を促進して心拍数を増加させることを助けるはたらきを持っています。

これによって、体のはたらきを活発化させ、基礎代謝を高める機能があります。

基礎代謝とは、呼吸や心臓の動きなど、私たちが普段無意識的に行っている活動のエネルギーのことです。

これらのはたらきが活発化することで、私たちは健康的に日々を過ごすことができます。

なお、体の細胞や組織が正常に機能するためには、ホルモン量が多すぎても少なすぎてもいけません。

通常、体の中のホルモン量は一定に保たれており、甲状腺ホルモンの量の調整に関わるのが脳にある下垂体前葉と呼ばれる器官です。

具体的には、下垂体前葉から甲状腺に向けて放出される甲状腺刺激ホルモン(TSH)という物質のはたらきによって、甲状腺ホルモンの量が調整されています。

つまり、甲状腺は甲状腺ホルモンを作り出す工場のような役割を果たし、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は甲状腺ホルモンの量に指令を出す役割を担っているということができます。

(2)甲状腺の機能が低下した場合に生じる主な症状

甲状腺の機能が低下すると、甲状腺で作られる甲状腺ホルモンの量が不足してしまいます。

これによって血液中に放出される甲状腺ホルモンの量も不足し、体の中の細胞や組織の活動が停滞することで、さまざまな影響が生じます。

具体的には、以下のような症状が現れます。

甲状腺ホルモンがはたらきかける組織や臓器は多岐にわたるため、甲状腺ホルモンの量が不足することで、さまざまな臓器のはたらきが低下することに注意が必要です。

なお、甲状腺ホルモンは自律神経を刺激して体温調整を行うはたらきも担っています。

自律神経は内臓や血液のはたらきなど、私たちの生命活動を維持する上で重要な神経系です。

甲状腺ホルモンが不足することで、自律神経のはたらきが低下し、体温調整がうまくできなくなり、寒さに敏感になるなどの症状も現れます。

また、記憶力の低下や抑うつ状態など、精神活動の停滞も招くことがあります。

そのため、うつ病や更年期障害と間違われるケースも多く、これらの病気の精密検査の結果、甲状腺機能が低下していることが原因だったことが判明する場合も見られます。

なお、甲状腺機能が低下した状態を治療せずに放置していると、貧血や低体温などの症状を伴う場合があります。

また、心血管系の活動の慢性的な停滞によって心不全を引き起こし、昏睡などの症状に至るケースも見られます(粘液水腫性昏睡)。

粘液水腫性昏睡では、重篤な場合、多臓器不全などを引き起こし、死に至ることもあるため、早期の治療が必要になります。

そのため、上記のような症状が見られる場合には、甲状腺機能が低下していることも念頭に置きながら、内分泌科などの専門の診療科を受診することをおすすめします。

2.甲状腺機能の低下をもたらす病気と原因

甲状腺の機能低下をもたらす病気には、甲状腺機能低下症があります。

これは、甲状腺機能の低下が生じる原因の違いによって、以下のように分類されています。

甲状腺機能低下症の分類

  1. 原発性甲状腺機能低下症
  2. 中枢性甲状腺機能低下症

それぞれについて、ご説明します。

(1)原発性甲状腺機能低下症

原発性甲状腺機能低下症は、体の中の細胞や組織に対する甲状腺ホルモンのはたらきが弱まった状態になる病気です。

これは、甲状腺自体の機能が低下することによって生じることが多いです。

甲状腺の機能が低下してしまう要因についてはさまざまなものがあり、以下のような事情によって甲状腺機能の低下を招くことがあります。

甲状腺機能が低下してしまう主な原因

  1. 慢性甲状腺炎(橋本病)
  2. 甲状腺の手術・放射線治療
  3. ヨウ素の欠乏または過剰摂取
  4. 薬剤の服用

順にご説明します。

#1:慢性甲状腺炎(橋本病)

慢性甲状腺炎は橋本病とも呼ばれ、甲状腺に慢性的な炎症を伴う病気です。

炎症とは、細胞が傷ついたことに対する生体の防御反応のことをいい、主にウイルスや細菌感染がトリガーとなります。

もっとも、橋本病は自己免疫のはたらきによって炎症反応が生じることが直接の原因です。

自己免疫とは、ウイルスなどの異物が体の中に侵入した際に、これを排除しようとするはたらきのことをいいます。

具体的には、好中球やリンパ球といった細胞がウイルスなどの異物に反応し、抗体と呼ばれる物質によって異物を排除します。

橋本病では、甲状腺ホルモンを異物と判断してしまい、甲状腺ホルモンに対する自己抗体が作られ、甲状腺を破壊してしまうことで炎症が生じます。

甲状腺の組織が破壊されてしまうことによって、作られる甲状腺ホルモンの量が低下し、甲状腺機能低下症を引き起こしてしまうのです。

橋本病は、甲状腺機能低下症を引き起こす主な原因であり、甲状腺機能低下症を代表する甲状腺の病気であるともいえます。

#2:甲状腺の手術・放射線治療

甲状腺自体の手術や甲状腺付近の組織・器官への放射線治療も甲状腺機能低下症を引き起こす原因の1つです。

甲状腺ホルモンは、甲状腺を形作る濾胞と呼ばれる小さな袋状の組織で作られ、蓄えられています。

手術や放射線によって、濾胞に刺激が加えられると、作り出される甲状腺ホルモン量の低下を招いてしまいます。

特に喉や耳の付近などの悪性腫瘍(がん)の治療の際に放射線治療が行われると、甲状腺機能低下症を招くケースが見られることがあります。

また、甲状腺の場所から離れた肺がんや乳がん、食道がんなどに放射線治療を行った場合でも、数か月~数年後に甲状腺機能低下症を引き起こすケースがあるため、注意が必要です。

#3:ヨウ素の欠乏または過剰摂取

体の中のヨウ素の量が少ない場合や多い場合にも、甲状腺機能低下症のトリガーとなることがあります。

甲状腺ホルモンは、ヨウ素を材料として作られます。

ヨウ素は体の中で作り出すことができず、体の外から取り入れることによって賄われます。

例えば、わかめや昆布などの海藻類にはヨウ素が多く含まれていることが知られています。

そのため、ヨウ素を含む食品の摂取量が不足している場合には、体の中のヨウ素の量も不足し、甲状腺ホルモンを作り出すことができなくなってしまいます。

また、ヨウ素を含む食品を過剰に摂取してしまうと、ヨウ素の吸収作用が却って阻害されてしまい、ヨウ素が欠乏した状態となってしまうのです。

このように、ヨウ素の摂取量が少なすぎても多すぎても甲状腺機能低下症を引き起こしてしまうため、適正な摂取量を意識することが重要です。

#4:薬剤の服用

特定の成分を含む薬品の摂取によって、甲状腺ホルモンの量に影響を与える場合があることにも注意が必要です。

具体的には、ヨウ素を含むうがい薬のほか、やせ薬などの健康食品の過剰な使用によって、甲状腺ホルモンを作り出すはたらきが抑制されることがあります。

例えば、神経の興奮や気分の高まりを抑える抗うつ薬などに含まれる炭酸リチウムは、甲状腺の中に取り込まれて甲状腺ホルモンが作り出されるのを抑制するはたらきがあるため、このような薬を常用している場合にも甲状腺機能低下症を招くケースがあります。

また、不整脈の薬であるアミオダロンにもヨウ素が含まれており、常用している場合には甲状腺ホルモンの量が抑制されてしまい、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。

なお、すでにバセドウ病やプランマー病などの基礎疾患をもつ人がこの薬を服用することで発症する場合もあれば、基礎疾患がなくても発症するケースがあることにも注意が必要です。

基礎疾患がないケースでは、アミオダロンの服用を開始してから2~3年ほど服用を継続している場合に発症することが多いという報告もあります。

(2)中枢性甲状腺機能低下症

中枢性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を放出する脳下垂体(視床下部あるいは下垂体前葉)の機能低下が原因となります。

つまり、原発性甲状腺機能低下症とは異なり、甲状腺自体に機能低下が見られないところに違いがあります。

脳下垂体に異常が発生する原因は多岐にわたり、視床下部や下垂体前葉の腫瘍、頭部外傷、自己免疫によるリンパ球性下垂体炎などがあります。

いずれも脳下垂体に対する物理的な刺激や病気によって引き起こされるものであり、これによって甲状腺刺激ホルモン(TSH)が減少してしまうことで、甲状腺ホルモンの量の調整に不具合が生じてしまうのです。

女性の場合は、出産に伴う大量出血によって下垂体前葉の機能が低下するSheehan症候群によって中枢性甲状腺機能低下症になるケースも見られます。

3.甲状腺機能低下症の治療方法

甲状腺機能低下症では、不足している甲状腺ホルモンを投薬によって補う薬物療法がとられることが一般的です。

甲状腺ホルモン薬には、レボチロキシンとリオチロニンがあります。

甲状腺ホルモンはヨウ素から作られ、ヨウ素分子が4つ結合したサイロキシン(T₄)とヨウ素分子が3つ結合したトリヨードサイロニン(T₃)の2種類があります。

このうち、レボチロキシンはサイロキシン(T₄)製剤、リオチロニンはトリヨードサイロニン(T₃)製剤です。

トリヨードサイロニン(T₃)は甲状腺で作られるものもありますが、その大半はサイロキシン(T₄)を材料として体の中のほかの細胞で作られます。

そのため、甲状腺機能低下症では、サイロキシン(T₄)製剤であるレボチロキシンが用いられることが一般的です。

また、レボチロキシンは服用してから、代謝や排泄などによって血中に存在する濃度が半分に減少するまでの期間(半減期)が約1週間ほどと長く、服用回数を抑制しても効果を期待することができる点にも特徴があります。

もっとも、レボチロキシンには吸収を妨げる物質や製品が多いことにも注意が必要です。

例えば、食物繊維や乳製品、カフェインなどの成分は、レボチロキシンが小腸から吸収されるのを抑制してしまうことが知られています。

また、鉄や亜鉛、カルシウムなどを含むサプリメントや薬と併用すると、レボチロキシンの吸収が妨げられるため、これらの薬を服用する際にも注意が必要です。

そのため、治療中のほかの病気や処方されている薬がある場合には、事前に医師に伝えておくことが重要です。

4.甲状腺機能低下症の治療の注意点

上記の通り、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモン薬の投与による薬物療法が行われます。

不足している甲状腺ホルモンを薬によって補うことで、体の中の甲状腺ホルモンを適正量に戻すことが目的です。

もっとも、そのためには甲状腺ホルモン薬がしっかりと体に吸収されることが重要です。

そのため、甲状腺機能低下症の治療を行う際には、以下の点に注意しましょう。

甲状腺機能低下症の治療の注意点

  1. 定期的に血液検査を行う必要がある
  2. 薬の服用時間を一定に保つ
  3. 医師とのコミュニケーションを定期的にとる
  4. 飲み合わせに注意する

それぞれについてご説明します。

(1)定期的に血液検査を行う必要がある

服用した甲状腺ホルモン薬が体の中に吸収されると、血液中に甲状腺ホルモンが放出され、体の中をめぐります。

そのため、血液中の甲状腺ホルモンの量を測定しながら投与する薬の量を調整することが重要です。

具体的には、薬の投与を開始してから数か月の間は特に頻繁に血液検査を行い、数値の測定を行うことになります。

レボチロキシンは少量の服用から開始して、徐々に服用量を増やしていくことが一般的です。

そのため、適正量を把握するためにも、定期的な血液検査が欠かせません。

甲状腺機能低下症では、血液中の甲状腺ホルモン量が低下しているのに対して、甲状腺ホルモンを作り出すことを促進するために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度が高い傾向にあります。

血液中の甲状腺ホルモンの濃度が回復していくにつれて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度も次第に適正量に改善していくことが多いです。

症状が安定してきた場合には、6か月~1年ほどの間隔で検査を行うなど、症状の経過を見ながら柔軟な対応を行うことが必要となることも押さえておきましょう。

(2)薬の服用時間を一定に保つ

甲状腺ホルモン薬の中でもレボチロキシンを服用する場合には、服用時間を一定に保つ必要があることに注意が必要です。

具体的には、レボチロキシンは空腹時に服用することが推奨されており、食事と一緒に服用すると甲状腺ホルモン薬の吸収作用が低下する場合があります。

レボチロキシンは起床時(朝食前30分~1時間前)あるいは就寝時(食後3~4時間)のタイミングで服用することが望ましいとされています。

また、服用する時間は毎日同じ時間にする必要があり、一貫したサイクルで服用を行うことが重要です。

(3)医師とのコミュニケーションを定期的にとる

治療を行っている最中でも、治療に関して不安や疑問がある場合には、医師に相談することが大切です。

特に治療を行う中で症状の変化があった場合には、すぐに医師に相談することが重要といえます。

具体的には、甲状腺ホルモン薬の服用を開始してから、動悸や息切れ、意図しない体重変動、過度の疲労感などの症状が現れた場合には注意が必要です。

甲状腺ホルモン薬は、適正量を服用していれば、副作用もほとんど現れません。

もっとも、服用量が多い場合には、体の中の甲状腺ホルモン量が増加してしまいます。

甲状腺の病気で現れる症状は、ほとんどが自覚症状であるため、本人にしか分からない場合も多いです。

また、虚血性心疾患などの病気をすでに抱えている場合には、投薬治療によって狭心症が誘発されるケースも報告されています。

適切な治療を行うためにも、些細なことと自己判断せずに、医師に相談することが症状の改善や完治につながることを押さえておきましょう。

(4)飲み合わせに注意する

甲状腺ホルモン薬を服用している間は、飲み合わせに注意しましょう。

特に甲状腺ホルモンの吸収を抑制してしまうはたらきがある成分には注意が必要です。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

甲状腺ホルモンの吸収を抑制してしまう主な成分

  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 亜鉛
  • カフェイン

これらのうち、カルシウムやマグネシウムは牛乳などの乳製品に含まれているほか、市販の薬などにも含まれているケースが多いです。

具体的には、腎臓の病気を治療する薬には沈降炭酸カルシウムが含まれていることが多く、小腸での甲状腺ホルモン薬の吸収を妨げるはたらきがあります。

また、胃薬や制酸剤には亜鉛などが含まれていることが多いため、服用の際には注意が必要です。

もっとも、甲状腺ホルモン薬の服用を行っている際に、これらの成分を含む食品の摂取や薬の服用ができなくなるわけではありません。

一般的に、4時間以上の間隔を空けることで、甲状腺ホルモン薬の吸収には影響を与えないことが多いため、適切な間隔を設けることが重要です。

どのような成分が吸収に影響を与えるか判断がつかない場合には、治療中の病気や服用している薬などについて、あらかじめ医師に伝えておくことが大切です。

5.甲状腺機能低下症を予防するためのポイント

甲状腺機能低下症をはじめ、甲状腺の病気は、日頃からポイントを押さえておくことで予防することが可能です。

日常生活では、主に以下の点に注意しましょう。

甲状腺機能低下症を予防するためのポイント

  1. 適切なヨウ素の摂取を心がける
  2. ストレスに注意する
  3. 定期的に健康診断を受ける

また、これらについては、治療を行う際にも意識することで、症状の改善につながる効果も期待できる場合があります。

順にご説明します。

(1)適切なヨウ素の摂取を心がける

すでに述べたように、甲状腺ホルモンはヨウ素を材料として作られます。

体の中に取り込まれたヨウ素のうち、約70%ほどが甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンを作り出す材料として活用されます。

そのため、ヨウ素の摂取量が少ないと、甲状腺に十分な量のヨウ素がいきわたらず、甲状腺ホルモンがうまく作られなくなってしまいます。

もっとも、ヨウ素を多く含む食品は、わかめや昆布などの海藻類、魚介類などがあり、日本人は海外と比べても十分な量を摂取していることが知られています。

過剰に摂取することで、却って甲状腺ホルモンを作り出すはたらきが妨げられてしまうため、適正量の摂取が重要となります。

なお、ヨウ素は食品からだけでなく、薬などからも取り込まれてしまうことに注意が必要です。

例えば、うがい薬や健康食品、サプリメントなどにもヨウ素が含まれている場合があります。

これらを常用している場合には、知らず知らずのうちにヨウ素の摂取量が過剰になってしまっているケースも考えられます。

そのため、ヨウ素の適正な摂取も含めたバランスのとれた食習慣を心がけることが何よりも重要です。

(2)ストレスに注意する

慢性的なストレスは、甲状腺の機能に影響を及ぼす可能性が高いです。

そのため、意識的にストレス管理に取り組むことで、甲状腺の病気を予防することにつながります。

具体的には、適度な運動や入浴などの習慣を身につけることは、甲状腺機能低下症の予防のために有効であるといえます。

運動や入浴の習慣は、熱産生や酸素消費を高め、基礎代謝を活性化する効果が期待できます。

また、過剰なストレスを抱えることは呼吸を浅くし、生命維持のために必要不可欠な酸素が体の中にいきわたらないことにつながります。

酸素が不足してしまうと、自律神経系のはたらきを弱めてしまうため、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、深呼吸によって酸素を取り込む量を調整することもおすすめです。

私たちが普段無意識的に行っている胸式呼吸では、体に取り込むことができる酸素の量が少ないため、腹式呼吸を行うなどして取り込まれる酸素の量を増やすことが大切です。

また、十分な睡眠量を確保するなど、リラクゼーションを心がけた生活習慣を営むこともおすすめです。

食習慣と合わせて、ストレス管理を行うことは、甲状腺の病気を予防することはもちろん、ほかの病気を予防するためにも有効といえるでしょう。

(3)定期的に健康診断を受ける

定期的に健康診断を受け、体に異変が生じていないかをチェックすることも重要です。

甲状腺機能低下症をはじめ、甲状腺の病気を予防するためには、食習慣や生活習慣を見直すことが重要ですが、確実に効果的な予防法が確立されていないという側面もあります。

そのため、普段から定期的に健康診断を受け、自分の体の状態をチェックすることが予防につながる場合があります。

普段から自分の体の状態を把握しておくことは、病気の早期発見と治療・改善のために有益です。

また、甲状腺の病気は、生活習慣だけでなく、遺伝的要因によっても発症のリスクがあることが知られています。

そのため、両親や兄弟姉妹などの近しい親族が甲状腺の病気を発症したことがある場合には、特に定期的に甲状腺の状態をチェックすることが重要です。

なお、一般的に甲状腺の病気は男性よりも女性の方が多く発症するといわれています。

特に20~50代の女性に多く、現れる症状も甲状腺の病気に特有のものが少なく、ほかの病気と診断されて見逃されてしまうケースも見られます。

甲状腺の病気は早期に発見し、適切な治療を行うことで症状の改善や完治を目指すことが可能です。

少しでも体調に異変が生じた場合には、必要に応じて一般内科や内分泌科などの診療科を受診することが重要です。

まとめ

本記事では、甲状腺の機能が低下してしまう病気や主な症状、治療や予防のためのポイントについて解説しました。

甲状腺の機能が低下することで、基礎代謝の停滞を招き、動悸や息切れ、体重の増加、便秘などのさまざまな症状が現れる可能性があります。

これらの症状は甲状腺ホルモン薬を服用することで次第に改善が見られますが、治療を進める上では飲み合わせなどのいくつか注意点もあります。

甲状腺機能低下症は、適切な治療を行うことによって、症状の改善や完治を図ることが可能です。

また、そのためには日頃から甲状腺機能を意識した予防を行うことが欠かせません。

本記事で解説したような症状が現れた場合には、まずは一般内科や内分泌科などの専門の医療機関を受診されることを推奨します。