甲状腺が腫れる原因はストレスにある?主な病気や予防のポイント

「甲状腺が腫れるのはストレスに原因がある?」
「甲状腺が腫れてしまう病気にはどのようなものがある?」

首の前側の腫れやしこりが気になる方の中には、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。

甲状腺は、喉仏の下あたりにある器官であり、甲状腺ホルモンというホルモンが作られています。

甲状腺ホルモンは、体の代謝(エネルギー消費や熱を作るはたらき)や心臓・血管などのはたらきの維持・調整に関わるホルモンです。

しかし、甲状腺のはたらきに異常が生じると、甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、体にさまざまな不調が現れることがあります。

そして、甲状腺の病気の中には、甲状腺の腫れを伴うものもあります。

甲状腺のはたらきに異常が生じる原因はさまざまであり、どれか1つに特定できるものではありません。

しかし、慢性的なストレスが発症や悪化に関わる可能性が指摘される病気もあります。

本記事では、甲状腺ホルモンのバランスとストレスの関係や甲状腺が腫れてしまう主な病気などについて解説します。

なお、甲状腺の腫れ方による分類や甲状腺の腫れと混同されやすい症状などについては、以下の記事も参考になります。

1.甲状腺の腫れとストレスの関係

ストレスが持続的に加わることで、甲状腺機能に異常が生じ、甲状腺が腫れることがあります。

これは、ストレスによる刺激で体の中でコルチゾールというホルモンが過剰に放出されるからです。

コルチゾールはストレス反応に関するホルモンであり、心拍数の増加や血圧の上昇などを促して体の緊張状態を保つはたらきがあります。

また、肝臓でのエネルギー供給を促し、ブドウ糖を作り出す「糖新生」という活動を活発化させるはたらきも担い、これによって血糖値の上昇も見られます。

しかし、持続的なストレスを受けることで、コルチゾールの放出が過剰になり、上記のような活動が通常よりも高められた状態となってしまいます。

特に血糖値が上昇すると、ウイルスなどの異物に対する反応である免疫機能が抑えられてしまうことがあるのです。

さらに、ストレスが慢性化することで免疫のはたらきに乱れが生じ、甲状腺の組織を刺激・攻撃してしまうことがあります。

こうした変化が自己免疫の異常と関係し、バセドウ病などの自己免疫性甲状腺疾患の発症や経過に影響する可能性が報告されています。

このように、ストレスによるコルチゾールの乱れが甲状腺機能の異常を引き起こすことがあり、ストレスと甲状腺機能の間には関連があるといえます。

なお、持続的なストレスは甲状腺の病気以外にもさまざまな病気や不調を引き起こす可能性があり、その中でも糖尿病との関連も指摘されています。

ストレスが引き起こす病気のメカニズムや症状については、以下の記事もあわせてご覧ください。

2.甲状腺が腫れる主な病気

甲状腺の腫れは、自己免疫異常や炎症、結節(しこり)などさまざまな原因で見られることがあります。

特に首周りが太くなったり、ものが飲み込みにくくなったりした場合には、甲状腺の腫れが関係している可能性があります。

甲状腺に腫れが生じる主な病気には、以下のようなものがあります。

甲状腺が腫れる主な病気

  1. 亜急性甲状腺炎
  2. バセドウ病
  3. 慢性甲状腺炎(橋本病)

それぞれに見られる症状についても解説します。

(1)亜急性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎は、甲状腺に炎症が生じることで引き起こされる病気です。

風邪などのウイルス感染がトリガーとなって生じることが多く、主に発熱や喉の痛み、甲状腺の腫れなどの症状が見られます。

特に甲状腺の一部だけが腫れる結節(しこり)が見られることが多いですが、全体的に腫れることもあります。

なお、甲状腺の右側あるいは左側のみに結節(しこり)が生じている場合には、症状の進行によって反対側に移動する「クリーピング現象」と呼ばれる現象が起こることもある点が特徴です。

また、甲状腺の組織が破壊されることで、蓄えられている甲状腺ホルモンが血液中に過剰に放出されることで動悸や息切れ、倦怠感、手指の震えなどの症状が現れることもあります。

しかし、時間の経過とともに甲状腺の組織が修復されると、甲状腺ホルモンの放出量も正常に戻るため、動悸や息切れなどの症状は次第に軽快することがほとんどです。

亜急性甲状腺炎はウイルス感染が影響して引き起こされるほか、遺伝的要因やストレスによる免疫機能の乱れが関わっている可能性も指摘されています。

そのため、持続的なストレスが免疫のはたらきや甲状腺の機能に影響を及ぼし、そのことが亜急性甲状腺炎を引き起こすことも考えられるため、注意が必要です。

(2)バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺の機能が過剰に高められることで引き起こされる病気です。

血液中に甲状腺ホルモンが過剰に放出されることで、以下のような症状が見られます。

甲状腺ホルモンが過剰に血液中に放出される原因として、免疫機能の異常が挙げられます。

通常であれば、甲状腺ホルモンの放出量は甲状腺刺激ホルモン(TSH)というホルモンが関わることで維持・調整されます。

具体的には、血液中の甲状腺ホルモンの量が少ないときには甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出量が増加し、これが甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンがさらに放出されます。

これに対して、甲状腺ホルモンの量が多い場合には甲状腺刺激ホルモン(TSH)の放出量も抑えられ、次第に甲状腺ホルモンの量も正常な範囲に戻ります。

しかし、バセドウ病では甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対する抗体が作られてしまい、この抗体が甲状腺を刺激し続けることで甲状腺ホルモンが過剰に放出されてしまうのです。

また、甲状腺が刺激され続けることで甲状腺全体が腫れることに特徴があり、触るとゴムのように弾力があることも特徴的です。

バセドウ病では、ストレスが発症や再燃、症状の増悪に関わる可能性が指摘されています。

ただし、ストレスだけが原因となるわけではなく、自己免疫の異常が病気の本体です。

そのため、日常生活ではストレスへの対処も大切ですが、症状がある場合には適切な検査と治療を受けることが重要です。

なお、バセドウ病は甲状腺の病気の中でも甲状腺機能亢進症と呼ばれる病気の代表例です。

甲状腺機能亢進症の詳細については、以下の記事もご参照ください。

(3)慢性甲状腺炎(橋本病)

慢性甲状腺炎は、橋本病とも呼ばれる免疫系の病気です。

バセドウ病とは異なり、甲状腺機能が低下する点に特徴があり、甲状腺ホルモンの放出量が低下することで以下のような症状が見られます。

橋本病では、免疫機能の異常によって甲状腺ホルモンを異物と認識してしまい、甲状腺の組織を攻撃することで慢性的に炎症が生じます。

そのため、甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」が見られることがあり、触るとゴツゴツした感触があります。

もっとも、症例によっては腫れが目立たないこともあり、すべての場合に腫れが見られるわけではありません。

なお、橋本病も免疫のはたらきが乱れることで発症することがあるため、ストレスも原因の1つとされています。

橋本病で見られることが多い症状の詳細やメカニズムについては、以下の記事も参考になります。

3.甲状腺の腫れが見られる場合の対処法

甲状腺や首周りが腫れる場合には、甲状腺機能に異常が生じている可能性があります。

また、甲状腺の腫れ以外にも、動悸や息切れ、意図しない体重の増加や減少が見られる場合には、以下の流れで対応を行うことが大切です。

甲状腺の腫れが見られる場合の対処法

  1. 内分泌科などの専門の医療機関を受診する
  2. 精密検査を受ける
  3. 医師の指示に従って治療を行う

順にご説明します。

(1)内分泌科などの専門の医療機関を受診する

甲状腺の一部または全部が腫れている場合には、上記のような病気に原因がある可能性が考えられます。

そのため、なるべく早期に内分泌科などを受診するようにしましょう。

内分泌科は、ホルモンのバランスに関する病気の診断と治療を専門とする診療科です。

甲状腺の病気では、甲状腺機能の異常に伴い、甲状腺ホルモンのバランスが崩れてしまうことがあります。

甲状腺の腫れや動悸・息切れなどの症状を改善させるためには、崩れた甲状腺ホルモンバランスを正常に戻す必要があるため、早期に専門の医療機関を受診することが大切です。

また、甲状腺の腫れ以外にも何らかの症状が現れている場合には、その症状の内容や続いている期間などについてもあわせて伝えることが重要です。

例えば、動悸や息切れ、意図しない体重の減少が数か月にわたって続いている場合には、バセドウ病である可能性もあります。

このように、自覚症状を正しく伝えることで、病気の特定に至ることもあります。

(2)精密検査を受ける

甲状腺の病気では、現れている症状に関する問診のほか、血液中の甲状腺ホルモンの濃度などを測定することで、診断・治療が進められます。

また、甲状腺の病気の種類によっては、超音波検査などが行われることもあり、専門の医療機関を受診しなければ受けられない検査もあります。

内分泌科では、甲状腺の病気の特定・診断に必要な精密検査を受けることができるため、一般内科などのほかの診療科を受診するよりも早期に病気の特定に至りやすいです。

なお、甲状腺の病気の診断を行う際に参照される血液検査の項目にはさまざまなものがあり、複数の項目を横断的に評価することが求められます。

甲状腺の病気が疑われる場合に実施される血液検査の項目や病気の診断基準については、以下の記事もあわせてご覧ください。

(3)医師の指示に従って治療を行う

必要な精密検査を受け、病気の特定に至った場合には、主治医が決定した診療方針に従って治療を開始します。

甲状腺の病気では、その種類や現れている症状に応じて、どのような治療が行われるかが異なります。

例えば、亜急性甲状腺炎では、症状が軽度である場合には経過観察にとどまることがあり、自然と軽快すれば特に治療を要しない症例もあります。

しかし、発熱や喉の痛みなどの症状が強く現れている場合には、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)を用いた薬物療法がとられることもあります。

また、バセドウ病では過剰に放出された甲状腺ホルモンのはたらきを抑えるために抗甲状腺薬による治療が行われることが一般的です。

これに対して、橋本病では不足している甲状腺ホルモンを甲状腺ホルモン薬によって補う治療法がとられるケースが多いです。

このように、病気の種類や症状によって治療の方法や薬の選択は異なり、主治医が医学的な知見に基づいて決定します。

なお、喫煙はバセドウ病に特有の症状である眼球の突出を悪化させる可能性があることが指摘されており、治療中には禁煙することが推奨されます。

また、薬の吸収にも影響を及ぼすことがあるため、治療中には飲酒などの習慣にも注意を払う必要があります。

そのため、主治医の指示に従って、薬の服用や生活習慣の改善などを進めることが症状を改善させるためにも重要です。

抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬の種類や服用の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。

4.ストレスによる甲状腺の病気を予防するためのポイント

甲状腺の腫れは、ストレスが加わり続けることで生じたり、ストレスによって悪化したりすることがあります。

そのため、甲状腺の腫れや甲状腺の病気を予防するためには、ストレスの管理を行うことが大切です。

ストレスを貯めこまないためには、普段の生活を見直し、改善させることが不可欠といえます。

具体的には、以下のような点を意識しましょう。

ストレスによる甲状腺の病気を予防するためのポイント

  1. リラクゼーションを意識した趣味の時間を作る
  2. 栄養バランスのとれた食事を心がける
  3. 規則正しい生活習慣を身につける
  4. 適度な量と頻度で運動に取り組む

順にご説明します。

(1)リラクゼーションを意識した趣味の時間を作る

持続的なストレスを受けることによって甲状腺のはたらきに異常が生じることがあるため、まずはストレスを解消することを意識しましょう。

もっとも、ストレスを解消するために過度な飲酒や喫煙、過食をしてしまうと、高血圧や肥満、糖尿病などを引き起こす可能性が高まることに注意が必要です。

そのため、ストレスを感じている状態が続いている場合には、リラクゼーションを意識した方法でストレス解消を行うことがおすすめです。

特に持続的なストレスを受けることで、自律神経の中でも交感神経が優位となり、このことがコルチゾールの放出を促してしまいます。

半身浴やヨガなどのリラクゼーション効果がある活動に取り組むことで、副交感神経を優位にし、コルチゾールの放出を抑える効果が期待できます。

これによって、乱れたホルモンバランスを整え、甲状腺のはたらきに異常を来してしまうことを防ぐことにつながります。

また、読書や音楽鑑賞など、自身の興味や関心にあわせた趣味の時間を作ることも効果的といえるでしょう。

(2)栄養バランスのとれた食事を心がける

食事の栄養素のバランスが崩れるとストレスを感じやすくなり、そのことが甲状腺のはたらきに悪影響を与える可能性もあります。

そのため、普段の食事を見直し、栄養素のバランスを整えることも大切です。

特にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル、タンパク質、ビタミンなどが不足しやすいため、これらの栄養素を意識的に取り入れるようにしましょう。

また、甲状腺ホルモンはヨード(ヨウ素)を材料として作られます。

ヨウ素の摂取量が極端に少ない場合には、甲状腺ホルモンが作られず、甲状腺機能が低下してしまう可能性があります。

もっとも、ヨウ素は昆布やわかめなどの海藻類に豊富に含まれており、日本では食事を通じて十分な量が摂取できている場合がほとんどです。

そして、ヨウ素を含む食品や食材を過剰に摂取することで、却って甲状腺ホルモンの合成を妨げることがあるため、ヨウ素の適量摂取を心がけることも大切です。

特に甲状腺の病気の中でも慢性甲状腺炎(橋本病)は、ストレスによる免疫の異常のほか、ヨウ素の過剰摂取なども加わることで発症リスクが高まることが知られています。

通常の食事では大きな問題にならないものの、ヨウ素を含むサプリメントやうがい薬などを常用している場合には、気づかないうちにヨウ素が過多になっていることもあることに注意しましょう。

(3)規則正しい生活習慣を身につける

持続的なストレスは睡眠不足や食習慣の乱れなどを引き起こすこともあります。

そして、このことが甲状腺のはたらきに異常を来す原因となることもあるため、規則正しい生活習慣を心がけましょう。

具体的には、毎日決まった時間に起床し、食事を3回欠かすことなくとることが重要です。

また、1日の睡眠時間は7時間程度を確保することが大切です。

そのためには、就寝の3時間前までに食事や入浴を済ませるなど、日々の生活習慣を整えることも意識しましょう。

特にストレスを持続的に感じている場合には、睡眠の質が低下したり十分な睡眠時間がとれなくなったりします。

睡眠の質は免疫機能にも影響を与え、ストレスに対する抵抗力にも関係します。

十分な睡眠をとることは、心身ともに回復させるためにも重要といえます。

(4)適度な量と頻度で運動に取り組む

食事や睡眠の習慣を見直すと同時に適度な運動に取り組むこともストレスの管理のためには効果的です。

特に軽いウォーキングやジョギング、ストレッチなどはエンドルフィンという物質の放出を促し、ストレスによる気分の低下などを改善する効果が期待できます。

また、運動は基礎代謝を高め、甲状腺のはたらきをサポートすることにもつながります。

運動不足の状態が続くことで、基礎代謝が低下し、甲状腺機能にも影響を与えるほか、筋肉量の低下や肥満を引き起こすリスクも高まります。

そうすると、高血圧や動脈硬化などの病気の発症リスクも高まるため、注意が必要です。

もっとも、激しい運動をいきなり始めてしまうと、怪我などの原因になってしまいます。

運動習慣が身についていない場合には、まずは散歩や柔軟体操など、取り組みやすいものから始めることがおすすめです。

また、短期的ではなく長期的に運動に取り組むことで基礎代謝を高めるほか、エネルギー消費を安定させることにつながります。

持続的な運動習慣を身につけるためにも、継続できそうな強度の運動を無理なく続けられる頻度で行うことが重要といえます。

まとめ

本記事では、ストレスと甲状腺の腫れとの関係やストレスが関係する甲状腺の病気などについて解説しました。

甲状腺の病気が引き起こされるメカニズムは完全には解明されていませんが、ストレスによる免疫機能の異常や生活習慣の乱れなど、さまざまなものが考えられます。

また、ストレスによって体のホルモンバランスが崩れることで甲状腺ホルモンのバランスも乱れ、このことが甲状腺の炎症や腫れを引き起こす可能性があります。

甲状腺に腫れや結節(しこり)があるほか、動悸や意図しない体重の増減、発汗量の増加やむくみなどの症状が数か月にわたって続いている場合には、甲状腺の病気の疑いがあります。

原因の分からない不調が見られる場合には、内分泌科などの専門の医療機関を受診し、精密検査を受けることがおすすめです。